さりげなく求められていることに気付く - おもてなしパン
次の日曜日は、長男の結婚式。
東京で一人暮らしをしている娘、奥様のお兄様、つまり義兄が我が家を訪れて前泊することになっている。
「せっかくやから、パン作ってあげたら?」
珍しい。
奥様から、パンを作れ、と言われたことは初めてかもしれない。
おもてなしに手作りパン。
いや身内におもてなしもないか。
どんなパンがいいだろう、以前ある集まりで食べてもらって評判が良かった練乳仕込みのバターロールなんてどうだろう。
「バターロール、普通でおもしろないな」
パンの種類で、おもしろいおもしろくないとは??
「フランスパンとかは?」
フランスパンはおもしろいのか?
まあ逆らっていいことは何もないので、素直に受け取っておく。
バターロールよりフランスパンの方が難易度は高いんだけどね。
フランスパンもいろいろあるけれど、シンプルにバゲットとか?
「う〜ん、バゲットはおもしろないな」
バゲットはおもしろくないの??
「チーズとかベーコン入れてお食事パンにしよ」
いや、作るのはオレ!
ということで、土曜日に作るパンはベーコン、チーズ入りハード系パンに決まった。急いでレシピを探さないと。
毎週のようにパンを作っていると、
「またパン作ってんの?」
と普段は興味のなさそうな反応を示す奥様であるが、昨日に限っては、自分から「パン作ったら?」と言い出した。客人のおもてなしに出してもいいレベルだと認めてくれたと受け取っていいのだろうか。
奥様にしてみればちょっとした思いつきなのかもしれないけれど、「求められる」ということは、人間にとってはうれしいことなんだ。そんなことを感じた瞬間だった。目をキラキラさせてアピールされなくても、ふとした言葉や行動に「求められている」と感じられるものがあると、それだけで十分なのだ。
自分は感情表現が下手だから、そんなことは気にしなくてもいいのだ。あなたが必要、そういう思いを持って言葉を紡げば、その思いは必ず伝わる。
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