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追いつかれて引き分けたけどポジティブな理由 J3 第15節 鹿児島ユナイテッド対カターレ富山

鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは。仙太郎です。

この試合の最大の注目点は暫定監督だった大島ヘッドコーチに変わり、上野展裕氏が新監督として契約したことです(ちなみみ大島HCは引き続きチームに残っていただけます)。中野監督は滋賀県出身。サンフレッチェ広島のコーチやレノファ山口FCの監督などを経て、2019年からJFLのヴィアティン三重の監督をされていました。今年の6月に成績不振を理由に契約を解除されていて、7月に鹿児島と契約しました。

正直、この試合の数日前に発表されて、当然トレーニングも数日しかしていないので、期待はしていませんでした。そんなに簡単に変わるなら指導者は苦労しないですからね。ところがこの予想はいい意味で大きく覆されました。

上野監督は全員攻撃全員守備を標榜されていて、それは現代サッカーでは当然の戦術で、これができなければトップレベルではサッカーになりません。問題はこの全員攻撃全員守備をどう選手たちにやらせるかというのが大きな問題になります。

特に過去にも何回か指摘したように、鹿児島のようにボールを持って主導権を持って攻撃するチームの場合、試合の勝ち負けは守備(特に攻撃から守備への変換点であるネガティブトランジションの対応)にかかっています(そして実際、この日もそうなりました)。

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この日の先発メンバーは先週と同じメンバーです。これは就任して数日しかたっていない監督としては当然の判断だと思います。新監督としては、自分の考えるベストメンバーがわからないのであれば、以前のメンバー中心で戦いながら、選手を選考していくのは当然です。

そして試合開始。開始早々、以前との変化を感じました。特にビルドアップの局面では明らかに変化が見られました。GKからショートパスをつないで相手ゴールまで迫るところは以前と同じですが、その方法に変化がありました。

ビルドアップの局面でワンタッチ、ツータッチと少ないタッチ数でボールを回す場面が多く、富山は前からプレスを掛けに来るのですが、鹿児島が少ないタッチ数でボールを動かすのでプレスが掛からないことが多く見られました。これは明らかに上野新監督のトレーニングの効果だと思います。以前はここまでシンプルなパス回しではなかったですから。

これはとても良かったと思います。特に前半は完全に試合をコントロールできていました。ただ鹿児島の問題はいつも後半なんですよね。そしてその嫌な予想は的中しました。

富山も前半は縦にロングボールばかりで、それを鹿児島が跳ね返していたので、前半終了間際に左サイドを侵入された時以外はほとんどピンチもありませんでした。このままいけば楽勝だなムード満々の前半だったのですが、後半に流れがガラッと変わります。そのきっかけは鹿児島が作ってしまいました。前半の富山は前からプレスを掛けても、後ろが押し上げなかったので、ライン間で鹿児島の選手が自由にボールを受けて、前進できていました。ところが後半から富山は後ろの選手も押し上げて、鹿児島の縦パスにプレッシャーを駆け出しました。こうして前半は通っていた縦パスを奪われてカウンターを受ける回数が増えてきます。

そして最初の失点はウェズレイ選手がグランダーの縦パスをインタセプトされてからでした。ボールを奪われ左サイドからセンタリングされたんですけど、ウェズレイ選手はボールホルダーに対応したので、ゴール前は田辺選手が一人で、相手はニアとファーに一人づついて、2対1なのでこれを田辺選手ひとりで守るのは無理ゲーですよね。こうして同点に追いつかれます。本来なら逆サイドのSBである衛藤選手が戻るべきなのですが、鹿児島はビルドアップ時に両SBが高い位置を取るので、CBからの縦パスを奪われると、ゴール前にCBがふたりしかいない状態になり、このように決定的なピンチを迎えてしまうことが多くなります。

しかし同点に追いつかれた鹿児島が80分に追加点をあげます。このときは左サイドのフリーキックから右サイドにボールを動かします。そこで五領選手がボール受けるも、相手選手からの厳しいチェックを受けますが、それを防ぎながら振り向きざまに縦パスを入れます。このパスが良かった。そしてそれを受けた途中交代の薗田選手が右サイドを長い距離のフリーランニングで掛け上げっていた野嶽選手の前のスペースにワンタッチでパスしまし、一気に相手ゴール前に迫ります。野嶽選手がシュートしたボールが相手選手に当たり、ゴール前にこぼれ、それがポストプレーの後にゴール前に詰めていた薗田選手がシュート。相手選手に当たりゴールポストの内側にこぼれたところを詰めた菅沼選手が押し込んで、勝ち越します。

このプレーは本当に素晴らしかったですね。右SBの野嶽選手が五領選手に縦パスを入れると、野嶽選手はパスをした後に、長い距離を走り前のスペースに走り込みます。この日はナイトゲームとはいえ暑いコンディションですから、このフリーランニングは本当にいいプレーでした。そして3選手が連動した素晴らしいプレーでした。ほんと美しいゴールだったと言えます。

ただし本当であれば80分に勝ち越せば、このまま勝ちきらないといけません。ところがです、このわずか三分後に追いつかれてしまいます。同点に追いつかれたのは、仕方ない部分もあります。ゴール自体はスーパーゴールで、イブラ様クラスのすごいシュートで、右足のアウトサイドで、ほとんど角度のないところからの失点ですから、これは防げないですよね。それよりもセンタリングをあげられた選手にプレスを掛けられなかったのが、残念でした。正直鹿児島の選手は最後疲れていました。

それでも引き分けられてよかったといういうべきかもしれません。後半87分に決定的なピンチを迎えます。これも縦パスをインタセプトされてからのピンチでした。最後は大西選手がビッグセーブを見せてくれたので、助かりました。ちなみにこのこぼれ球を拾ったのは菅沼選手です。彼の運動量の凄さがわかります。実際この時には鹿児島選手はかなりバテていて、戻りも遅かったです。菅沼選手がボールを拾ったら同時にラインを押し上げてパスコースも作らなければなりませんが、何人かの選手は膝に手を当てて休んでいましたからね。

鹿児島にも試合終了間際に何度もチャンスを作りますが決められません。最後にもチャンスが有りました。FKのこぼれ球を拾った山谷選手がドリブルで相手ゴールまで持ち込みます。そして左足でシュートしますが、ボールは枠を外れました。この時、鹿児島は3対2と数的有利な状況で、しかも右サイドからは衛藤選手が最後に力を振り絞って全速力で駆け上がって完全にフリーでした。この時、この衛藤選手にパスが通れば決定的チャンスだったのですが、山谷選手には後ろから来る衛藤選手が見えていなかったのかもしれません。

というわけで新監督の初陣は引き分けに終わりました。ただ結果は引き分けですが、初戦の評価としては、とてもポジティブだと思います。普通、監督代わってすぐに変化は感じられないものですが、この日は先程述べたようにビルドアップの局面で改善が見られました。以前ならビルドアップの際に、プレスを掛けられてボールを失って失点することもありましたが、この日はそれはあまり見られませんでした(その分縦パスを奪われていましたけど)。

そして鹿児島で好きなのは得点するとベンチのメンバーも含めて喜びを分かち合うところです。こういうチームは強いんです。サッカーは社会的なスポーツですから、技術戦術メンタルフィジカルレベルが同じチーム同士なら、チームが一丸となっているチームがかつ確率は高くなります。プロの世界ですから、試合に出られない選手は多かれ少なかれ不満があると思うんです。ただ試合中はその不満を見せずに、プレーしている選手と一緒に喜ぶ。これは見ていて、とても嬉しいですね。

この後は、1ヶ月半のオリンピックブレークに入ります。これは鹿児島にとっては大きいと思います。新監督が就任して、毎週リーグ戦をこなしながら、戦術を浸透させていくのはかなり難しい作業です。ところがここで1ヶ月以上かけて、新しい戦術のトレーニングができるのですから、幸運です。1ヶ月半後の試合で、今の鹿児島がどう変化しているのかは、とても興味深いですし、楽しみです。それでは皆さん、1.5ヶ月後にまたお会いしましょう。

「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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