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喜べない快勝 J3 第11節 A沼津対鹿児島ユナイテッド

2−0で快勝と言いたいところですが、手放しで喜べる内容ではなかったですね。では振り返ってみましょう。


先週の試合で酒本選手が一発退場になったことで、今週は出場停止です。監督が変わって2試合連続で先発した酒本選手の不在を誰が埋めるのかが注目点でした。酒本選手の代わりに先発したのは三宅選手でしたが、その三宅選手が右サイドに入り、右サイドの五領選手がトップ下に入る形です。五領選手はサイドでも中でもプレーできる選手なので、これは順当な選択だったかもしれません。

水曜日に天皇杯を福岡と戦ったので、先発メンバーの入れ替えをも考えられたのですが、一番の驚きはGKの大西選手が先発に復帰したことですね。これまでリーグ戦では2試合連続で白坂選手が先発でした。そしてのその2試合とも点は取られていましたが、白坂選手はいいプレーを見せていたので、ここでGKが交代したのは驚きました。普通先発GKは簡単には変えないですからね。

右SBには野嶽選手が入り、それ以外は先週と同じ先発メンバーでした。

試合の展開としては、沼津は前からプレスを掛けて来る回数は少なかったと思います。鹿児島と対戦するチームは鹿児島のビルドアップを前からプレスを掛けてボールを奪おうとするのですが、沼津はミドルプレスを掛ける時間帯が多かったと思います。ですので鹿児島は割と最終ラインで自由にボールをポゼッションできていました。そして両SBも幅が取れていていつもよりは楽にボールが前進できていました。しかも沼津のSBが前に出てきて守備をしないので、両WGの三宅選手と米澤選手が下がって自由にボール受けることがで来ていました。さらに沼津はどちらかというとマンツーマン気味で守備をしていたので、幅をとっている鹿児島の選手にマークにつくと中のパスコースが空き、ライン間のスペースでボールを受けることができ、効率的に攻撃ができていました。

そんな中、前半35分に鹿児島の先制点が生まれます。サイドに開いたSB衛藤選手がCB田辺選手からのボールを受けツータッチで、ライン間にいた中原選手に斜めのパスを入れます。その中原選手がまたツータッチで開いた相手CBとSBの間にスルーパスを通します。米澤選手がそのパスを裏に抜けて、ファーストタッチでゴール前にドリブルを開始。このファーストタッチの方向も最高でした。相手SBがサイドに居る米澤選手にマークをしていたので、相手CBとSB間にスペースができていて、そこを中原選手が狙ったんですね。裏に抜け出した米澤選手はそのままゴール前までドリブルで運び、GKの右を巻いてシュートして、ゴールしました。米澤選手らしい見事なゴールでしたね。これで米澤選手は今シーズン 5ゴール目になりました。やはり米澤選手が前を向いてボールを持つと何かが起こります。

後半の76分には左サイドでシンプルなパス回しから五領選手が裏に抜け出し、センタリング。それをファーから詰めていた、途中交代出場の山谷選手がヘディングシュートを決めて追加点を得ます。山谷選手がゴール前に入ってくるタイミングは完璧で、待っている状態で腕を振ってヘディングシュートを決めました。これで鹿児島はかなり楽な試合展開になりました。

この両ゴールとも、サイドでのシンプルなパス回しから裏に抜けてチャンスを作っていました。サッカーは複雑な競技なので、このシンプルにプレーするというのが意外に難しいんです。この試合でもできている時とできていない時があるのですが、この日は2得点とも完全に崩したかたちで得点できました。鹿児島のいいところが出ていましたね。

スコア的には2−0で勝ったので、快勝と言いたいところなのですが、内容はそうとも言えないです。特に相手沼津のGK野村選手は良かったですね。サイズも有りまし、ポジショニングも良かったと思います。確かに米澤選手には決められましたが、それ以外の米澤選手のシュートを左手一本で防いだりと彼がいなければもう1、2点取れていたのではないかと思うほどでした。

また沼津の右サイドの染谷選手のスピードにはやられました。マッチアップしていた衛藤選手も1対1の対応に苦慮しており少なくとも前半だけで3本は突破されてセンタリングを上げられていました。10番の渡邉選手も前を向いてボールをもたせるとスルーパスを出せるので後半は厄介な存在でした。

前半29分にも左サイドからも突破されセンタリングから決定的なチャンスを取られましたが、これは相手のシュートミスに助けられました。ここで先制点を決められていたら、試合がどうなったかはわかりません。

ただ沼津を見ていると得点が5とリーグ最少で複数得点が一度もないという数字通りで、チャンスは作っても決めきれない場面が随所にありました。鹿児島がパスミスや沼津の前プレスからボールを失った場面でも判断ミスが多く、鹿児島にとってはあまり脅威にはなっていませんでした。大西選手も大活躍というわけではなかったです。だから今回鹿児島が勝ったとはいえ、正直相手のミスに助けられた部分は大きかったと思います。

酒本選手に代わって先発した三宅選手ですが、技術だけ見れば鹿児島でも一番ではないでしょうか。特にボールを持つとドリブルで仕掛けていくメンタリティ、ミドルシュートを積極的に狙えますし、枠に飛ばす技術も一級品ですね。ただ守備では前に行ってはいけないときにプレスに言って、ボールの前進を許したり、マークの選手を離してしまうなど課題も多かったと思います。攻撃のときも判断の部分に少し難があります。そこのオフザボールの部分を改善できれば、すごい選手になると思います。

それ以上に今回に気なったのは、パパス監督が目指してきたポジショナルプレーが少し薄まってきたかなと感じました。例えばCFWの萱沼選手はポストプレーもできるし、下がってきてゲームメイクもできるし、自分で決めることもできる万能型なのですが、この日は少し動き過ぎでサイドにも顔を出したり、下がりすぎたり、もう少し真ん中で相手ゴールに近い位置でプレーしてほしかったと思います。そうしないとボールを失ったときに、相手CBにプレスがかけられないですし、ポジティブトランジションのときに、前にターゲットがいないとカウンターが難しくなります。実際この日の鹿児島はうまくカウンター攻撃をできていなかったと思います。またCFWがサイドに流れてくると一番スペースを与えたい米澤選手や三宅選手のスペースが消えてしまうので、良くないんですよね。そのせいで米澤選手が中にポジションを取る場面もありましたが、そこでは米澤選手が活きる場所ではないですよね。

というわけで勝ったはいいけど手放しで喜べない内容でした。特に最後に書いたポジショナルプレーが薄まってきているのは気になります。日本人選手は動きすぎる傾向があって、それがいいところもあるのですが、ポジショナルプレーは基本的なポジションを守るところから始まるので、そこを守るのが日本人選手には難しいんでしょうね。また開幕戦から言い続けていますが、ポジショナルプレーは簡単に身につくものではありません。当然、GKからショートパスでビルドアップすれば相手は当然前からプレスを掛けてボールを奪おうとします。実際、これまでの鹿児島はそれで苦戦してきました。

昨年までの鹿児島は、選手が動きすぎて必要なスペースに必要な選手がいないとか、守備すべき選手がそのポジションにいないとかありました。それでも見事な攻撃ができているのが鹿児島の魅力なんですが、それがうまくいけば勝てるんですが、そうでないと連敗したりして、成績が安定しないこともありました。それを解決するためにパパス監督を選んで、ポジショナルプレーを目指したわけなんですが、道半ばで退任しました。

後任の暫定監督である大島氏は、これまで見るとそれほどポジショナルプレーにこだわっている様子はありません。本当は練習も見ていないので、断言はできないのですが、酒本選手を先発させたり、菅沼選手がポジションを変えることを許容しているように見えるからです。

私は苦しくてもパパス監督路線を進んでほしいとは思うのですが、監督が変われば戦術も変わるし、選手も変わります。同じようにはいかないことを理解しますが、このまま昨年と同じで選手ありきの戦術になってしまうと、昨年同様調子の波がでてきてJ2昇格は難しくなるのではと危惧しています。

では次の対戦は19日土曜日ホームで準位がひとつ上の八戸と直接対戦です。これに勝てば準位をひとつ上げられます。

「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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