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組織ワーク

横浜市の東戸塚にある「フォートンヒルズ」は約6.2ヘクタールに総戸数888戸という、かなり大型の集合住宅。
森との共生をテーマに、民間のデベロッパーである藤和不動産が開発したが、建築や空間、ランドスケープなどのハードだけでなく、居住者が入居した後のライフデザインやコミュニティ・デザインにも、真剣に留意したレアな物件。「藤和不動産50年の歴史を見ても、また、不動産業界全体を見回しても、従来の『マンション販売宣伝戦略』の常識を完全に打ち破る、まさに画期的な試みであった」(小田豊二:2007年)と評されている。そして、実際に、築年数5年時に行われた調査でも最初の販売価格より10%ほどは高く売れていたという、そういう意味でもレアな物件である。

一方、JRの戸塚駅周辺の再開発…

1997年事業計画決定した横浜市戸塚駅西口再開発の総事業費は約1313億円。そのうち約853億を補助金などでまかない、残りの約460億円を保留床でねん出するという計画。もちろん横浜市役所は「責任を持ってキーテナントを連れてくる」と約束していたが、打診した16社の内、14社から断られ、賃貸なら入ってもいいという2社も、大きく採算割れする安い家賃が、その条件だった。
横浜市役所は、すでに先行買収で約200億円つぎ込んでいた。でも、出した結論は「期限を示さずに事業スケジュールを延期する」というもの。そうすれば、永遠に「失敗だった」という結論は出ないから、責任者が明確になるということもないというわけだ。

(どちらかというと、こちらの方が「組織ワーク」っぽい)

藤和不動産と横浜市役所。この結果の違い…僕は単純に「民間と行政」の違いというより、誰が責任者かも明確にならない匿名性の強い集団指導体制(=組織ワーク)の判断と、少数の意見が通る状態にあった民間事業の違いだと思っている。

それ故に、民間の事業でも集団指導体制が濃くなって、背景に匿名性の強い集団指導体制の色彩が強くなると事業は失敗に向かい、止めたほうがいいのに「止められない」という状態になる。
お役所は、ほぼ例外なく「匿名性の強い集団指導体制」だが、小さくとも、行政予算利権に安居している世襲の地域企業などでは「匿名性の強い集団指導体制」の色彩を強くする。

横浜市役所の本庁舎に入りきらなくなった各部署、かなりの部分は関内地区の民間ビルの中に分宿していたのに、それをデカい新庁舎をつくり、各部署を全部、格納する。で、そのあとの関内地区空きビル量産対策については、ほぼ無策。

(これ。財閥系企業のビジネスのための地ならしなんだとも。勝手に出ていってくれるなら、補償の必要がないから)

横浜市民は、この期に及んで、大枚をはたいて、関内などの旧都心をさらに空洞化させるという…そして財閥系企業などに高層ビル建設をプレゼントする。まぁ、切ない感じ。でも、これが「組織ワーク」に、丸投げしている感じ。

さらに

2020年までの5年間で東京23区だけで51件の高層ビルが完成。オフィスの面積は285万平方メートル(東京ドーム61個分)も増える見通し。横浜駅西口の再開発はとんでもないことになるし、東神奈川地先の高層住宅3棟の開発も同様だろう。そして、現在進行形の再開発事業はアベノミクスが止まった「これから」とんでもないことになる。きっとね。

それなのに瀬谷の米軍施設が広大に帰ってくるとなると、まだ花博みたいなイベントやるんだとか言ってるし、それを契機に税金でインフラ整備して地盤を整備して、また財閥系の企業がビジネスをする。

これも、組織ワークに丸投げしている感じが産み出すもの。

ああ、質的にも量的にもヨコハマの将来は分厚い暗雲に覆われていると思うけれど、お役所も地域経済な民間企業も「匿名性の強い集団指導体制=組織ワーク」。「これから」については推して知るべし。つまり、何度も言うけどヨコハマは「焼け跡」からの再出発。もう衝撃波なしには「現状」を止めることみできないので、悲惨な再出発は必須。

やっぱりね。お役所も一味な再開発のために無くなる「立石の呑んべ横丁」で、無くす側の立場にある区役所の職員が、ほろ酔いでNHKのインタビューにニコニコ応えているのは異常だと思うんだ。

だって、あの「呑んべ横丁」が、カオナシの、つるんとした高層建物になっちゃうんだ。それを知ってて、今ある「呑んべ横丁」を体験し、体感し楽しめるんだから。

でもね。組織の一部となって賃金労働する人には、何ら違和感がないことだろう。そうでなければ組織では働けない。

組織というのは、こういう人たちが集まっているところ。

責任の所在はわからなくなるし、「組織」は「コックリさんの十円玉」になる。前の大戦末期の、この国の軍隊がそうだった。

そして今また、それを繰り返そうとしている。

あの頃の上官による鉄拳制裁が繰り返される状況が、今も現場に横行している。行き詰まっているのだろう。そのストレスが上から下へ。ビッグモーターだけではないだろう。しかも経営陣は、あの頃の軍令部がそうだったように、内向きで視野狭窄に陥っていることにも無自覚で、だから、こうなっても街路樹に除草剤を、記者会見で「環境整備」と宣う。

この国というより「組織ワーク」が限界に達している。かつての軍隊が無くななったように、近く、無くなって然るべきだ。