「SUNI」DOTSCHY REINHARDT
あの MJQのアルバム「DJANGO」ではなく、彼女の名前がドッチー・ラインハルト。ロマ民族、ジプシーの血をひくヴォーカリストだ。
1930年代のパリやベルリンの街角音楽。当時の欧州の都市、そこに集まった様々な人種、民族、それぞれの人々が持っていた音楽が見事にミクスチャーされた音楽。そして、ジプシーやあるいはロマと呼ばれた流浪の民の息吹が見え隠れする音楽…僕がイメージする「ジャンゴ・ラインハルト先生の音楽」とは、つまり、とっても街場な音楽。
(CDショップではJAZZに分類されていたりしますが、コルトレーンとかマイルスからJAZZをイメージされる方には「こりゃJAZZじゃない」などといわれてしまいそうな感じのもの)
80年代末、やっぱりパリを中心に、アフリカ系の民族音楽からたくさんのスターが生まれたことがあった。「イエケイエケ」のモリカンテや、ユッスー・ンデュールさんなんかがそう。彼らの音楽は、当時、アフリカ諸国から出稼ぎに来ていた人たち向けに放送されていた「それぞれの母国語放送のラジオ」から流れていた楽曲が、スノッブなパリ市民の目にとまり、そしてファッション・ショーなどのBGMなどに使用されるようになったところからメジャーになっていった。たぶん、ジャンゴな音楽も、そうやって1930年代のパリやベルリンで生み出されていったもの。
この「SUNI(夢)」というアルバムを出したドッチー・ラインハルトさんという女性。同じラインハルトでも、かのジャンゴ先生との血縁の方ということではない。でも、ジャンゴ先生とは同じ民族の血が流れているのは事実。。
(ちなみに、このアルバムには、ジャンゴ先生のほんとうのお孫さんが参加していらっしゃいます)
彼女は、ドイツはバーデン・ヴュルテンブルク州 ラーフェンスブルク郡のご出身。2003年以降はベルリンに出て、07年、彼女が30歳のとき、ファースト・アルバムを発売。そして、この「SUNI」はセカンドになる。
それにしても、80年も前の音楽スタイルを、こうも自然に、しなやかにと思う。たぶん途切れていたものを復刻したんじゃ、こうはいかなかったと思いますし、返って違和感があったろう。
きっと戦争がこようが、ビートルズが流行ろうが、それそれということで、連綿と街場で繋げられてきた歴史というものがあるにだと思う。欧州ポップスの懐の深さを感じる。
もちろん、彼女、ドッチー・ラインハルトさんも凄い。首までスタンダードに漬かりながら、でも,彼女は彼女であるという魅力を体現するのは、なまなかなことではないから。
とまぁ、理屈はさておき。いいアルバムです。
「SUNI」DOTSCHY REINHARDT/「夢」ドッチー・ラインハルト
レーベル : オーマガトキ カタログNO. : OMCX-1222