街暮らしなコレクター
ご主人は郵便局に勤め、奥様は図書館司書。ニューヨークの1LDKのアパートの暮らす…そして、この2人の収入に収まる作品を、30年以上に渡って買い続け、それを世界屈指のコレクションに育て上げた…
「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」は、そういうご夫婦を主人公にしたドキュメンター映画。
しかも、このご夫婦、数点売れば大富豪になれるかもというコレクションを1点も売らずにナショナル・ミュージアムに寄贈、今も1LDKのアパートに年金暮らしという、大都市の「おふたりさま」の模範にしたい美しい貧乏。ただただリスペクト。
僕は、このご夫婦を最初にドキュメンタリーにされたのが、日本人であったということがとても誇らしかったし、佐々木 芽生監督(製作も)に心から感謝した。
監督は、このご夫婦の存在をたくさんの人に知って欲しいと4年半の時間を費やされて映画をつくられ、日本で先行上映、当時5万人以上を動員して、しかも製作資金を調達したのはアメリカの某クラウドファンディング(日本での上演資金もこの方法で調達されたようだ)。何もかもが「これから」な感じで製作された。そういう意味では「今はまだマイノリティ」な創り手たちに希望の灯りをともしてもくれた作品でもある。
いずれにせよ、理屈で観るより、このかわいらしい老夫婦の暮らしぶりにちょっと微笑んでみるべきなんだろう。
ああ、等身大だ。あたたかい。これからの街暮らしのお手本だ。