プロ意識
ここは、キャッシュ・オン・デリバリーのコーヒーショップ。僕はカウンターから一部、厨房を見渡せる席に座っている。
僕の前に並んだ女性が注文したケーキ。カウンターの女性スタッフはトンクが上手く使えなくてケーキのクリームをグチャグチャにした。でも、彼女が気にしていたのは脂っぽくなってしまった自分の指の方。注文主からは見えないところで起こった出来事だったからか、注文主も何も言わず店内はいたってフツウの空気でした。隣のケーキでやり直し。そのプロセスが客側からは丸見え。
カウンターの女性にプロ意識はない。そもそも「プロ意識」を知らないかもしれない。店側も、そんなことを彼女に求めてはいないし、教育する気もあない。
でも、お客さんだって何も言わないから、何も起こらない。隣の無傷なケーキが出てきたなから、私には関係ないのである。なんか言ったら面倒臭そうだし。
「バイトだから(仕方がない)」で通るようになっちゃったのは僕らが若い頃くらいからだろうか。でも、あの頃は一生バイトで食っていくなんてことが考えられない時代で、「バイトだから」は「学生だから」とほぼ同義語、若いしアマチュアだから大目に見ようねっていうニュアンスがあった。
あの「気分」だけ、残っちゃったんだろう。
でもね、イマドキは「バイトだから」を長く続けちゃうと、結局、時間の切り売りしかできなくなっちゃって、買い叩かれて終わり。
だからって「それじゃぁダメだよ」って教えてくれる親もいないし、学校もないのがスタンダードです。でも、AIがはびこり、労働市場がさらに国際化していく「これから」。
彼女たちはやっぱり大変なんだと思う。
「フツウ」が「無難」な時代はとっくに終わっていて、「フツウ」こそ「受難」な時代だ。そんな人が職場にいたら、煙たがられそうなプロフェッショナルこそが、働く人間のスタンダードになっちゃうような時代だ。