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まち/まち暮らし

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まちが好きだなと思う。「まち」こそが居心地だ。
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システムが主役

個人店が生き残っているのは、ごく一部。全国津々浦々、どこへ行っても全国区なフランチャイズ・チェーンやコンビニばっかり。それも地方へ行けば行くほど選択肢が少なくなる感じ。三浦展さんの「ファスト風土」という警告もはるかに昔のこと。今た忘却の彼方。 今もこのファスト風土は確実に増殖していっている。 ドトールやスタバなどのカフェ、マックやモスバーガーみたいなバーガーショップ。吉野家、松屋などの牛丼チェーン。ローソンやセブンイレブンみたいなコンビニ。「ファスト風土」の主役たちは「シ

孤独なファミリーレストラン

かつて大箱のロードサイド・レストランは「ファミリーレストラン」と呼ばれた。でも、そういう感じが残っているのは、郊外の一部「幸福な住宅街」にある店舗だけかもしれない。それも毎日というわけではなく、土日の中間だけかな。今は「一人客」の方が目立つ。 朝も「おひとりさま」予備軍のご高齢「おふたりさま」か、やっぱり「一人客」ばかりで、おしゃべりのない空間にクラシック音楽などのBGMが空虚に流れているだけだ。 若者がいても、ほとんど勉強している。二人で来ていても、お互いスマホをいじっ

そんなに易しい状況にはない

考えてみれば当然のことなんだけど 今、元気がない、これからも、さらに元気がなくなっていきそうだという「まち」を持ち上げようとするなら、よほどアグレッシブで、創造力に富んだ人を呼べなきゃダメなんだろうなと思っている。 だから「地域おこし協力隊」といった選択肢が明確になってから、その選択肢を選ぶ(応募する)ような人で、現状の地域を持ちあげようというのは、よほどの「至難」だと思う。 できたとしても「地域」に持続的にエコーするものではないイベントや店舗の経営までで、超高齢化、若者の流

かつての喫茶店時間

再び 永井宏さんの著作「カフェ・ジェネレーションTokyo」(河出書房新社/1999年)からに引用。 線路ぎわはそんな常連客にとっては都合のいい場所で、いつも顔見知りが誰かしらいるので時間も潰せたし、みんなでああだこうだと様々な夢を語ることもできた。みんな湘南育ちだから、そのイメージや結束力は固く、湘南から何かを発信していきたいという願望がいつも気持ちの中にあった。それはたいてい海に関連していて、砂浜のゴミをみんなで拾い集めるようなイベントを開催しようとか、ドラム缶にメッセ

あの頃の自由が丘

永井宏さんの著作「カフェ・ジェネレーションTokyo」(河出書房新社/1999年)には、1970年代中頃、「ロック喫茶」といわれていたお店を中心に、永井さんの「喫茶店時間」が綴られている。学生時代から雑誌記者として就職した頃の話が中心だ。 「ロック喫茶」とはいっても、この本に登場するのは「デス・メタル」な感じの店ではない、もっとやわらかい「ウエストコースト・ロック」や、人によっては「フォークソング」にカウントしそうな「シンガー&ソングライター」の楽曲が流れる、つまり「陽の光

サイトシーイングな観光客のためのイベントや事業を重ねても、旅人にとって居心地の良い場所をメイキングしていくことはできない。むしろ逆だったりする。

facilitation

ファシリテーション(facilitation)とは、一言でいうと「会議やミーティングを円滑に進める技法」のことだそうだ。だからファシリテーターは、実際に「会議やミーティングを円滑に進める人」のこと。 そうか。 会議やミーティングを主宰する人にとって「円滑に進める」は必須のテーマだから、会議やミーティングが始まった頃から永遠のテーマだろう。 で。 僕が「ファシリテーション」「ファシリテーター」という言葉を、初めて耳にしたのが大学院の講義だったから、今から10年ほども前の

「まち」というご馳走について

一人の大学生がシャッター通り商店街に、当地の商店会と組んでカフェをオープンしたというから、行ってみたんだけど… そこにはチェーン店のスケール・メリットがない、単店舗のスタバかドトールといったようなキャッシュ・オン・デリバリーなカフェがあるだけだった。 お店と来客の間には「注文」以外の会話なし。細部調整は気にしないマシンで淹れた悲しい珈琲とプラモデルを組み立てるようにつくられたホットドッグ。数回、行ってみたけど、その都度スタッフさんは異なる人だから常連になるのは不可能な店。

まちづくりといえばイベント…か

今の僕は、仮に、そのイベントが成功しても、それで日常のまちを活性化するのは困難だと思っている。 イベントの原義は「(新聞ダネになるような)大事件」。だから広告代理店が人工的に行うものなどは、当初「擬似イベント」といわれた。 つまりね。 イベントは「目立つ非日常」をメイキングしていくもので「日常の賑わい」をつくっていくものではない。日常を丹精しようとするものでもない。やっぱり「描き割り」で即成して、長くて数日で「バラシ」にかけられる「非日常」なんだ。だから、あんまり派手に

乱雑さの美学

ジェイン・ジェイコブズさん(1916〜2006年)は、アメリカのノンフィクション作家でジャーナリスト。郊外都市開発などを論じ、また都心の荒廃を告発した運動家でもあった人。彼女が最初に注目を集めたのはケネディ大統領がいた1960年代初頭のアメリカ。 彼女は「魚市場の隣に美術館があるような都市が好き」といい、「異なるいくつかの目的で異なる時間帯にさまざまな人が利用すること」を「都市が発展するための条件」の第一にあげている。 (そういえば、「沈黙の春」のレイチェル・カーソンさんと

まちは多様性

もう「みんな」に疲れ切っちゃったというのもある。 「教室」に居場所が見出せなかったから「まち」を目指したんで もともと「無理」をしていたというのもある。 ジェイン・ジェイコブズさんを知ってから、より「まち」の多様性を重視するようになったからともいえる。 ジェイン・ジェイコブズさん ↓ 40年ほど「まちづくり」に関わってはきたが、今は、賛同を得るにしろ、たったひとりの発意やイメージが、面的な街区や「まち」を染め上げていいのだろうかと疑問に思ってる。 (だから、まちづくり

本屋さん

ある大型書店で会員になって、今月1万円以上の買い物をすると来月は「ゴールド会員」。でも、今月の買い物増額が9999円なら翌月も「一般会員」。 この「1円」の差って何なんだろう。 常連になることが不可能な「組織」の店舗。今、レジを打ってるスタッフさんも「本」が好きな人なのか。それとも、ひたすら「賃金」が目的で、そこにいるのか、わからない。もちろん軽口を叩くこともできない。 店員さんにとっての僕は、レジに表示される「ゴールド会員」か「一般会員」かの種別だけ。それ以上でもそれ

孤独をどうする

友だち、家族と一緒なら「空間」さえ提供されればなんとかなる。 お店に求められるのは「手頃な料金」と「使い勝手」だ。 問題は、都市を彷徨う「孤独」だ。 2020年の国勢調査における「50歳時未婚率(生涯未婚率)」は、男性で28.3%、女性で17.8%。だけど正規雇用の人に限った場合、女性の未婚率は、24.8%になる。 これを「そうですか」と放置しておくのか。 喫茶店やスナックのような「受け皿」も絶滅危惧種だし、日本の役所(お役人)は、こういうことへの対応が苦手なのに。

小さなスナック

L字のカウンターだけの店だから扉を開けた途端、常連が揃ってこちらを一瞥…という店もある。 その「圧」は生半じゃない。 ここはお店なんだけど。 でも居心地はいいからそうなるんだろうな。スタバじゃこうはならない。ありえない。チェーン店の居酒屋でもそう。システム上、ありえない。 そう。 あたたかい「ゆりかご」のようなコミュニティほど、外から見れば、高い壁に覆われているものだ。 それも見えない「壁」。 だから厄介だ。 内側にいる人は気が付かない。ただ新参者だけが感じる 「