展評と感想「faction」

アートハウスおやべ(富山県小矢部市)にて2022/12/17-2023/01/17の日程で行われた展示会「faction」についてつらつらと。


「faction」は、アートハウスおやべが主催する「アートの実験空間」シリーズの一環として行われた、富山大学芸術文化学部複合領域メディア表現研究室による展示である。

分類するならばメディアアートということになろうと思うが、もう少しひろく、「芸術展」として語ろうと思う。


先にざっくりとした印象を言うと、「若干新鮮ではあったが、完成度に欠けていた」というのが正直なところだ。

照明を絞った展示会場には様々な見慣れぬ装置が置かれ、それぞれが非日常的なあり方で動作していた。ロボットアームやミキサー、モニターなどがホワイトキューブに並ぶ無機質な空間は、この地方都市においては珍しい展示であろう。この施設に、あるいは地域に毛色の変わったものを示すという意味では一定の成果なのではないか。

しかしこの空間は、一つの展示として見るには若干まとまりに欠けていたように思われる。

無機質で機械的という意味ではあるていど共通していたが、テーマ的にも手法的にも、それぞれの作品がてんでばらばらで弱め合う結果になっていたようだ。スピーカーを用いた作品が、他の作品の音で鑑賞に支障をきたしていたのには閉口した。
これはどちらかと言えば「学習発表会」の形であるように見える。せめて、アート展ではなく「成果発表」としてならよかったのではないか。

また、それぞれの作品についても、技術的・コンセプト的未熟さが感じられた。音がよく聞こえない、ただ置いてあるだけ、ただ動くだけと思しきものも多数あったし、過去の作品の類似品のようなものも散見された。佐藤弘隆・アシダマドカの作品は新たな可能性を感じるものであったが、やはり説得力が弱いように見えた。ただ何らかの信号によって動作するというのではなく、例えば作品自身がフィードバックを行うとか、インタラクティブな要素をもつとか、あるいはもっと知性をゆさぶるような概念を提示してくれるものを期待できるはずだ。

少なくとも、両氏の個展等でみた以前の作品は、もっと私を駆り立てワクワクさせるようなものであった。


2022/01/19 Aki Kikuti

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