本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年1月14日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
[*記事サムネイル画像:ペレスレーギンのテレグラム投稿]
ロシアの文芸批評家セルゲイ・ペレスレーギン、ロシア軍冬季大攻勢の発動を予想
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
ロシア側情報筋の主張によると、今後の数週間内に、ウクライナ東部及び南部の地表が凍結し次第、新たな攻勢を発動するための準備を、ロシア軍が進めているとのことだ。1月12日、ロシアの文芸批評家で歴史改変SF研究者であるセルゲイ・ペレスレーギンは、ロシア軍は1月12日から2月2日の間のいずれかのタイミングで、ウクライナでの大規模攻勢の遂行を始めるだろうと主張した。彼の主張によると、その時期は地面が凍結したのちであり、また、可能性が高いのは、ウクライナ軍がアウジーウカとヘルソン州東岸(左岸)での陣地防衛戦によって「憔悴」してしまったあとであるとのことだ。そして、ロシア軍は2024年にウクライナ軍攻勢が再び始まることを懸念するよりも、自らの攻勢が悪いタイミングで行われること、もしくは、2023年反転攻勢でのウクライナ側の誤りと同じことをしてしまうことを懸念すべきと、ペレスレーギンは主張した。ペレスレーギンはまた、自身が予期しているような大規模攻勢を遂行するのに必要なマンパワーが、ロシアには十分にないのではないか、という懸念も示した。
ある有名なロシア軍事ブロガーは1月14日付の主張のなかで、前線のロシア軍兵員数はロシア軍が局地的な戦術レベルの部隊行動を実施することを可能にしているが、作戦レベルで意味をもつ大きな「突破」を支えるだけのものである可能性は低いという見解を示した。この軍事ブロガーの意見によると、氷点下の天候は戦線全域にわたってロシア・ウクライナ双方の地上行動、砲兵、ドローン兵器に大きな影響を与えており、ヘルソン方面において特にそういえるとのことだ。1月12日にロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、氷点下の気象条件が、ザポリージャ州西部ヴェルボヴェの北方におけるロシア軍の地上任務遂行と同軍の前進を妨げていると主張した。ウクライナ軍南部作戦管区は、氷点下の気象環境によって、ウクライナ南部でロシア軍は航空活動を行えなくなっていると報告した。その一方で、ロスコスモス(ロシアの宇宙局)の元トップで極右派の人物であるドミトリー・ロゴージンは1月14日に、ザポリージャ州西部の前線は「蜂の巣のようにブンブンうるさくなっている」と主張し、その理由として、作戦投入されているウクライナ軍ドローンの数の多さをあげている。ロゴージンの主張によると、ウクライナ軍はザポリージャ州西部に存在する脆弱な目標一つひとつに、それぞれ半ダースのドローンを差し向けて攻撃しており、ウクライナ軍の集中的なドローン投入によって、ロシア軍の兵員ローテーションは齟齬をきたしているとのことだ。ISWは以前の分析において、ウクライナでの氷点下の気温は現在、前線における任務遂行を制約しているが、今後の数週間内に地面が凍結していくにつれ、機械化部隊による機動戦にとって、より好ましい地形環境をつくりだすことになる可能性が高いという評価を示した。冬季の気候及び地表状況に関係なく、主導権を取り戻し、それを確保する目的で、ロシア軍がウクライナ東部全域で局地的な攻勢作戦を続けようとしていく、もしくは強化しようとしていく可能性は高いと、ISWは引き続きみている。だが一方で、ロシア軍が作戦レベルで意味をもつ大きな突破を成し遂げることはできないだろうとも、ISWは判断している。