Russian Offensive Campaign Assessment, August 25, 2024, ISW ⬇️
クルスク州戦況:ロシア軍の反撃と同軍の戦力配置転換状況
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
8月25日もウクライナ軍がクルスク州地域で攻撃を続けたことが報告されるなか、ロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がここ最近、クルスク州で以前喪失した地点を奪還したと主張した。8月25日にロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がコマロフカ[Komarovka]で失った地点を取り戻したと主張し、ロシア軍がこの地域でウクライナ軍の小規模な攻撃を撃退しているとも主張した。ロシア軍事ブロガーのいくつかのアカウントは8月25日に、ロシア軍がオリゴフカ[Olgovka]とクレミャノエ[Kremyanoye](ともにコレネヴォ[Korenevo]の東方)を再占領したと主張し、ロシア軍がクレミャノエの西方で前進中だとも主張した。その一方で、ほかのロシア軍事ブロガーには、ウクライナ軍が依然としてクレミャノエを支配下に置いていると主張した者もいる。一部のロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がマラヤ・ロクニャ[Malaya Loknya](スジャ[Sudzha]の北方)でロシア軍第18自動車化狙撃師団(レニングラード軍管区[LMD]、第11軍団[AC]所属)隷下部隊を包囲したと主張したうえで、ロシア軍第810海軍歩兵旅団(黒海艦隊[BSF]所属)か第1427自動車化狙撃連隊(地域部隊)のいずれかに属する部隊がウクライナ軍包囲網を突破し、第18自動車化狙撃師団の将兵の後退を可能にしたと主張した。マラヤ・ロクニャ集落内部で戦闘は続いており、この集落での戦闘はウクライナ軍がこの地域でさらにクルスク州内奥へと作戦を進めていくことを阻むものではないと、ロシア軍事ブロガーは主張している。ウクライナ軍がクルスク州内における同軍主張の最大進出範囲内の地域すべてを統制できていない可能性が高いなか、ロシア軍がクルスク州内のウクライナ側突出部の一部領域内で作戦行動を続けている可能性は高い。チェチェン共和国首長ラムザン・カディロフもまた、8月25日に同じような主張をしており、彼によると、ロシア国防省指揮下に入っているアフマト-チェチェン連隊所属ロシア軍第14自動車化狙撃大隊の隷下部隊は、ウラノク[Ulanok](スジャから南東方向)付近での戦闘から、51人の徴集兵[*注:徴兵によって入隊した兵員]を脱出させることに成功したとのことだ。ロシア軍事ブロガーは、ルスコエ・ポレチノエ[Russkoye Porechnoye]付近、チェルカスコエ・ポレチノエ[Cherkasskoye Porechnoye]付近、マルティノフカ[Marynivka]付近(すべてスジャから北東方向)でウクライナ軍の攻撃が続いたと主張した。8月24日にロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がスパリノエ[Spalnoye](スジャから南東方向)を奪還し、ここの掃討を行ったと主張した。この主張は、以前のことになるが、ロシア軍がこの集落を取り戻したという8月23日以降になされた同様の主張に続くものだ。また、ロシア国防省は、ロシア軍が8月25日にボルキ[Borki]とスパリノエの両方面でウクライナ軍の攻撃を撃退したと主張した。ロシアの反政権派メディアの報道によると、ロシア軍第217空挺(VDV)連隊(第98VDV師団隷下)に配置された徴集兵が、イヴァノヴォ市(同連隊及び同師団の駐屯地がある場所)からクルスク州に送られたとのことだ。
ロシア軍がウクライナ領内戦線の比較的優先度の低い地区から戦力を引き抜いて、クルスク州の前線に送り続けている可能性は高い。ロシア軍第810海軍歩兵旅団、第155海軍歩兵旅団(東部軍管区[EMD]、太平洋艦隊所属)、第11空挺(VDV)旅団、第56VDV連隊(第7VDV師団隷下)、第51VDV連隊(第106VDV師団隷下)の各指揮官は、ウクライナと国境を接しているロシア領(クルスク州を指しているものを思われる)での戦闘任務に関する説明報告を、8月24日にロシア大統領ウラジーミル・プーチンに対して行った。同じ日の早い時間に、プーチンはロシア連邦軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフ上級大将と参謀本部作戦総局長セルゲイ・ルドスコイ大将と会い、ウクライナ軍のクルスク州進攻へのロシア側の対応に関して話し合った。ISWは、第810海軍歩兵旅団・第155海軍歩兵旅団・第11VDV旅団に属する部隊がクルスク州で戦闘をしていることを確認できており、また、ロシア軍統帥部が最近、第56VDV連隊隷下部隊をザポリッジャ州西部ロボティネ[Robotyne]からクルスク州内に送り込んだことを示す情報も確認している。ISWは、第51VDV連隊隷下部隊がクルスク州で戦闘しているという報告を、今のところ確認していないが、最近になってクルスク州に再配置された部隊の指揮官とともに、第51VDV連隊指揮官がプーチンに説明報告を行ったという事実は、第51VDV連隊隷下部隊もまたクルスク州に送り込まれている可能性が高いことを示唆している。第51VDV連隊はここ最近の数カ月間、第106VDV師団隷下のほかの部隊とともに、シヴェルシク[Siversk]方面で戦闘を続けていた。ロシアは第810及び第155海軍歩兵旅団に属する部隊をハルキウ州北部戦線から引き抜いて再配置した模様で、第11VDV旅団隷下部隊を、広くとらえたチャシウ・ヤール[Chasiv Yar]地域から引き抜いて、再配置した可能性が高い。ロシア軍統帥部は、ドネツィク州ポクロウシク[Pokrovsk]占領という最優先作戦努力地点から戦力を引き抜いて再配置することを求める作戦上の圧力に抵抗しており、今後、優先度の比較的低い攻勢作戦を進めている戦域上の各所から、クルスク州防衛の目的で戦力を引き抜き続けていく可能性が高い。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[16]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文の日本語訳箇所(英文)
戦争研究所 ウクライナ戦況インタラクティブ地図