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【ツイート和訳】ウクライナの選択肢(@Tatarigami_UA氏)

※以下は、ウクライナ軍予備役将校の@Tatarigami_UA氏のTwitter投稿(日本時間13:14, 2023.07.21)を日本語に訳したものになります。

この投稿は極めて重要な問題に関する議論であって、私はウクライナの大義を支持する人々全員に読んでほしいと考えている。3月13日に私は詳細に課題を論じた投稿を公開し、その時点における将来の反攻について、より控えめな展望を示し、代替戦略を提案した。私以外のアナリストにも、私と同様に長期的なアプローチの重視を推奨する人もいる。

戦争の猛威が振るうなか、両陣営とも徐々に攻撃能力を低下させている。作戦的機動戦向けに装備を整えて、陸軍を大規模に作戦行動させることは、時間経過とともにますます難しくなっている。この戦争をモニターしている人々の多くは、装備にばかり目が行きがちだが、装備を操作する人間の存在を忘れている。現在の状況をみると、今後あり得る展開が幾つか浮かび上がってくる。

凍結した戦争というシナリオ

戦争を凍結させるという考えに魅力を感じる人々もいるが、それは文書にただ署名すれば問題が解決するという幻想をこの考えが示しているようにみえることによるのだろう。だが、このような見解は単純過ぎており、複数の理由に起因する困難さをはらんでいる。

  • 憲法によって、大統領も議会もウクライナ領土を割譲できない。領土変更にはすべてのウクライナ人による国民投票が必要となるが、ウクライナの管理のもとで、とりわけドンバスやクリミアのような占領地域において、投票を実施するのは現実的にいって不可能だ。ウクライナ国民が賛成投票する可能性は限りなく低い。

  • 停戦交渉と安全保障上の担保に関する過去の経験が、戦争凍結はあてにならないことを示している。ウクライナは過去、ロシアに欺かれ、ブダペスト覚書やミンスク合意といった取り決めが存在したにも拘らず、ウクライナは領土を失っている。国連軍の存在は紛争防止に役立たないことがはっきりしており、その証拠はマリやコンゴ、その他の国々を見れば分かる。

  • 具体的な安全保障上の担保がない、もしくはNATO加盟への明確な道筋がないことは、休戦協定または和平協定をロシアが真摯に尊重することへの疑いを高める。もっと幅広く受け入れられる土壌と安全保障上の保証がなければ、この種の合意が社会に許容される可能性は低い。

  • このシナリオを受け入れた場合、不活発な戦争が終わりなく続く、何千キロにも及ぶ不規則に延びた戦線があらわれることになるだろう。2011年以降のシリアで私たちが目撃しているように、この類の紛争は何年も続き、不安定な社会と貧困を進行させ、難民危機をエスカレートさせる。ロシアはこの状況を梃子にして、ウクライナをもっと不安定にさせて、ロシアの政治目的を追求し続けることが可能になるだろう。

では、二つ目のシナリオを見てみよう。

ウクライナの勝利とロシア国内の体制崩壊

このシナリオの目標は、継続的なロシアの軍事的敗北が続くことで、ロシア国内の体制崩壊を導くことにある。ワグネル・グループの乱のような最近の出来事から示唆されるのは、プーチン体制は過去に評価判断されていたよりも、崩壊しやすいのかもしれないということだ。

長期的な目標を達成するために、以下の戦略とアプローチが採用されるべきだと私は考えている。

  • 単一のゲーム・チェンジャー的兵器という考えに固執するよりも、私たち全員が、生産、経済、兵器供与、兵站、経験の交換、長期的な安全保障政策を応用発展させていくことに注力すべきだ。その目的は、勝利と新たな戦後の在り方を確たるものにすることにある。

  • 前線での砲弾需要を満たすために、複数の国々で砲弾生産を増やさなければならない。バフムートでは砲弾の欠乏が出さずに済んだ死傷者を生み出したわけだが、このような事例がはっきりと示しているのは、砲弾よりも人命を優先することの必要性だ。

  • 世界規模に広がる訓練プログラムが本質的に重要で、そのプログラムは下士官兵以上に拡張される。衛生兵、パイロット、上級将校への訓練プログラムの拡張・改善に重点が置かれるべきである。

  • 私たちは経験を交換するプログラムを育んでいくべきで、その目的は戦闘から得られた有意義な知見を、ウクライナのパートナーと共有するところにある。さらに、支援協力国はその国がもつ専門的なスキルや知識を与えることができ、特に西側製装備の保守整備、運用、兵站に関して、それがいえる。

  • 私たちを支援する協力国は、もっと多く対空用装備の支援をすべきだ。それはロシアの航空優勢に挑むためだけではなく、民間インフラを保護するためでもある。防護への投資は、破壊の後処理よりもコストパフォーマンスがよい。

  • ロシアのオリガルヒとエリートに、もっと厳しい制裁を通して圧力をかけよう。ペーパーカンパニーを使って、欧州に送金し、事業を続けるという手法で、制裁を回避する可能性のある特定の個人に関する問題に取り組もう。

  • ウクライナ軍の能力を支えて、それを向上させるために、私たちは工兵用装備と地雷除去装備をさらに調達しなければならない。さらに、私たちは解放された領土の効率的な地雷除去のためによりいっそう協同していく必要があり、そうすることで、国民の安全のために地雷と不発弾の除去を進めていく。

  • 私たちの支援国に変化を求めることは、ウクライナ自身の進展と足並みをそろえていかねばならない。支援国の長期的な関与に関する協定には、ウクライナにおける反腐敗法の採択、欧州型法体系へのスムースな移行のためにウクライナの法体系を欧州標準にそろえていくという条件が含まれる。

  • 前に進んでいくための重要なステップには、西側の退役将軍と専門家の雇用が含まれ、それにより、現在の指揮構造の強化と後日の再建ができる。このような人々がもたらす価値ある知見は、ウクライナ軍のやり方に潜むソヴィエト式システムの残滓を取り除くことに役立てられる。

  • 航空均衡を得るためには、数十機のジェット戦闘機だけでは不十分だろう。もっと多くの機体と、それに加えてメンテナンス要員の訓練プログラムが最優先事項だ。機体の操縦とチームとして効果的な協同行動をとることをパイロットに教えることは重要であるが、私たちはそれ以上に向かって進んでいかなければならない。NATO標準兵器の包括的な訓練プログラムは、これらの装備を最も好ましい形で活用できるようにするために必須といえる。この戦略的アプローチは、望ましい航空均衡という目標を達成する一助となるだろう。

心惹かれる選択肢はなく、シンプルな選択肢も簡単な選択肢もない。様々な今までとは別のことや、潜在的に想定され得る出来事が起こることがあるかもしれないが、このようなことを議論するのは無意味である。なぜなら、私たちの取り組みは、あり得ない出来事を期待するのではなく、あり得ることの枠組のなかで行動することを軸に据えるべきだからだ。

このコミュニティで対話を始めることは、正しい結果に向かって仕事を進めるために極めて重要なことだ。私はあらゆる人々に対して、“いいね”やシェアすることでの積極的な参加を促し、そして、この対話のなかにもっと多くのオーディエンスを引き込んでいる。皆さんの建設的な提案や意見は、私たちが一丸となってポジティブな変化に向かって努力していく際の、大きな助けになる。

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