本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月27日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事の画像は、ISW制作地図及びGoogle Maps画像を使用した。
アウジーウカ情勢
日本語訳:
10月27日、ロシア軍はアウジーウカ付近での攻勢作戦を続けたが、裏づけの取れた前進はなかった。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍が20回を超えるロシア軍の攻撃を撃退したと報じた。その場所は、ステポヴェ(アウジーウカ北方3km)付近、アウジーウカ、シェヴェルネ(アウジーウカ西方5km*)付近、トネンケ(アウジーウカ西方6km*)付近、ペルヴォマイシケ(アウジーウカ南西11km)付近であるとのことだ。10月26日と27日、複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がオピトネ(アウジーウカ南方4km)から北へと進み、T0505高速道路(スパルタク〜アウジーウカ)付近のアウジーウカ南西1.5kmの陣地を制圧したと主張した。だが、ISWはこの主張を裏付ける映像資料を確認していない。10月26日と27日、複数のロシア軍事ブロガーは、アウジーウカ南側外周部にある料理店「ツァールスカ・オホタ」付近のウクライナ側陣地を、ロシア軍が迂回して進んだと主張した。また、10月26日と27日、複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がアウジーウカ・コークス工場に接近し、アウジーウカ北方のアウジーウカ石炭屑集積場の陣地の支配権をさらに強固なものにしたと主張した。加えて、ロシア軍がアウジーウカ北方の鉄道線付近とステポヴェ方向で前進し続けたということも、複数のロシア軍事ブロガーが10月26日と27日に主張した。しかし、ISWはこれらの主張を裏付ける映像資料を確認していない。10月27日、ウクライナ人軍事ウォッチャーの一人は、ロシア軍がアウジーウカ石炭屑集積場を占領してしまい、アウジーウカ北方の鉄道線付近のどこかで前進したと述べた。この軍事ウォッチャーは、ロシア軍がヴォディヤネ〜トネンケ(アウジーウカ南西7kmじゃら西方5km)方面で何らかの戦果をあげているところだと述べている。また、ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がヴォディヤネからペルヴォマイシケ外周部へと進んだと、10月26日に主張した。上述のウクライナ人軍事ウォッチャーの主張によると、ロシア第8諸兵科連合軍(南部軍管区)司令部はアウジーウカ地区での戦術変更を進めており、現在、アウジーウカの南北両翼に配置されている戦術部隊に対して、交互に攻撃を行うように指示しているとのことだ。ロシア軍は現在、アウジーウカの北方と南方で定期的に攻撃を行っているが、10月10日の大規模攻勢開始以降、北側翼では占領地をある程度広げただけであり、南側面ではほんのわずかに占領地を広げたに過ぎない。
〔*注:原文はトネンケとシェヴェルネの位置を取り違えていると思われるため、訳文ではそれぞれの距離を入れ換えてある〕
ウクライナ人軍事ウォッチャーのコスティヤンティン・マショヴェツは、アウジーウカ包囲作戦に加わっている10月27日時点でのロシア軍部隊編制に関する新たな情報を提供した。マショヴェツによると、アウジーウカ南方翼を担当しているのが、ドネツク人民共和国(DNR)軍第1軍団(南部軍管区第8諸兵科連合軍)隷下部隊で、アウジーウカ市のすぐ南側の戦線地域を任されているのが、DNR第1軍団、第6自動車化狙撃師団(西部軍管区第3軍団)、第20自動車化狙撃師団(第8諸兵科連合軍)のそれぞれに属する部隊であるとのことだ。また、第115自動車化狙撃旅団及び第110自動車化狙撃旅団(ともにDNR第1軍団)、第1140領土防衛自動車化狙撃連隊、第109動員予備役自動車化狙撃連隊、第227自動車化狙撃大隊(おそらくDNR第1軍団隷下)のそれぞれに属する部隊が、アウジーウカ北方翼で行動中であると、マショヴェツは指摘した。以上に加えて、ロシア軍統帥部は第21自動車化狙撃旅団(中央軍管区第2諸兵科連合軍)隷下部隊をアウジーウカ南方翼用の作戦予備として配置しており、第21自動車化狙撃旅団隷下部隊、2個自動車化狙撃連隊、第20自動車化狙撃師団の1個連隊にアウジーウカ北方翼での作戦予備としての役割を与えて配置していることも、マショヴェツは言及している。
西側とロシア側双方の情報筋は、アウジーウカ周辺においてロシア軍が甚大な損失を被り、深刻な士気の問題に直面していることを引き続き伝えている。米国国家安全保障会議戦略広報調整官ジョン・カービーは10月26日の発表において、アウジーウカ周辺での最近の攻勢作戦で、ロシア軍が数千人の死傷者を出しており、少なくとも125両の装甲車両を失ったと語った。ロシア軍がアウジーウカ方面で命令に従わなかった者を処刑しており、また、この地域でウクライナ軍の砲撃によって後退したら、その部隊全員を銃殺するとロシア軍指揮官が脅していることを米国は確認していると、カービーは述べている。ロシア側情報筋は、アウジーウカ周辺のロシア軍の士気が信じられないほど低いと指摘しており、ロシア軍事ブロガーのあるアカウントは、アウジーウカ方面で再開した攻勢作戦開始時のロシア側失敗の決定的な要因は、士気にあると主張した。