【抄訳】戦争研究所「ロシアによる攻勢戦役評価」2024.08.22 - ウクライナ軍クルスク進攻の状況＆ロシア軍ポクロウシク方面攻勢の情勢分析
Russian Offensive Campaign Assessment, August 22, 2024 , ISW ⬇️
ウクライナ軍クルスク進攻の状況
◆ 戦争研究所（ISW）報告書の一部日本語訳
米国東部時間2024年８月22日15:00時点
（戦争研究所）
８月22日にウクライナ軍は、自軍がクルスク州に形成した突出部の各所でわずかに前進し、その間、ロシア軍はウクライナ軍の前進を食い止める取り組みを続けた。８月21日に公開された動画のなかの撮影地点特定可能な画像によって、ウクライナ軍がコマロフカ［Komarovka］（コレネヴォ［Korenevo］の南方、スジャ［Sudzha］の東方）に進入したことが分かる。一方でロシア側情報筋は、ロシア軍がこの地域でウクライナ軍の攻撃を撃退したと主張した。ロシア軍事ブロガーは、コレネヴォから北東方向の地点で作戦行動中のウクライナ軍がセミョノフカ［Semyonovka］を制圧し、レフシンカ［Levshinka］区画内南部に進入したと主張し、また、ウクライナ軍がマルティノフカ［Marynivka］（スジャから北東方向）区画内北部のなかでわずかだが前進したとも主張した。上述とは別の８月22日に公開された動画のなかの撮影地点特定可能な画像に、ウクライナ軍がルスカヤ・コノペリカ［Russkaya Konopelka］区画内南部でわずかに前進したことが示されている。ロシア軍事ブロガーの主張によると、「アルバト」「ピャトナシュカ」「サルマト」の各大隊を含むロシア軍「ドンバス・ディカヤ師団［Dikaya Division of Donbas］」隷下部隊が、ネチャエフ［Nechayev］（スジャの北方）を奪還したとのことだ。また、クルスク州のグルシュコヴォ［Glushkovo］、コレネヴォ、スジャ、ベロヴォ［Belovo］地区の各所でウクライナ軍がロシア軍との交戦を続けたと、ロシア軍事ブロガーは主張した。また、ロシア側情報筋は、８月21日の晩にウクライナ軍がブリャンスク州ザブラマ［Zabrama］付近で威力偵察任務を遂行したが、ロシア国境警備隊とチェチェン「アフマト」スペツナズ部隊要員を含むロシア側戦力がこの攻撃を撃退したと主張した。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注［24］～［29］に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文の日本語訳箇所（英文）
Ukrainian forces marginally advanced throughout their salient in Kursk Oblast amid continued Russian efforts to stop these advances on August 22. Geolocated footage published on August 21 indicates that Ukrainian forces advanced into eastern Komarovka (south of Korenevo and east of Sudzha), although Russian sources claimed that Russian forces repelled Ukrainian attacks in the area. Russian milbloggers claimed that Ukrainian forces operating northeast of Korenevo seized Semyonovka and advanced into southern Levshinka and that Ukrainian forces marginally advanced within northern Martynovka (northeast of Sudzha). Additional geolocated footage published on August 22 that Ukrainian forces marginally advanced within southern Russkaya Konopelka (east of Sudzha). Russian milbloggers claimed that elements of the Russian "Dikaya Division of Donbas" including the "Arbat," "Pyatnashka," and "Sarmat" battalions re-took Nechayev (north of Sudzha). Russian milbloggers claimed that Ukrainian forces continued to engage with Russian forces throughout Glushkovo, Korenevo, Sudzha, and Belovo raions in Kursk Oblast. Russian sources also claimed that Ukrainian forces conducted a reconnaissance-in-force operation near Zabrama, Bryansk Oblast on the evening of August 21 but that Russian forces — including Russian border guards and Chechen "Akhmat" Spetsnaz personnel - repelled the attack.
ロシア軍ポクロウシク方面攻勢の情勢分析
◆ 戦争研究所（ISW）報告書の一部日本語訳
米国東部時間2024年８月22日15:00時点
（戦争研究所）
ポクロウシク［Pokrovsk］方面における最近のロシア軍の前進は、ポクロウシクから南東方向に位置する限られた数の拠点からウクライナ軍が撤退することを促す結果になった模様だ。一方でロシア軍は、この地域のウクライナ軍を戦術規模で包囲するという、明々白々だった目標の達成に失敗してしまった可能性が高い。８月22日に公開された動画のなかの撮影地点特定可能な画像によって、ロシア軍が最近、プティチェ［Ptyche］を制圧したことと、この集落の南方でさらに前進したことが分かる。また、このことは、ロシア軍がこの地域において、カルロウシケ［Karlovs'ke］貯水池東岸のウクライナ側残存支配地域をすでに制圧したというロシア側の主張を裏付けるものだと、ISWは判断している。T-0511（オチェレティネ［Ocheretyne］～フロディウカ［Hrodivka］）高速道路から南と南西の方向におけるロシア軍の最近の前進によって、ポクロウシクから東と南東の方向に形成されていたロシア側突出部はなくなり、平らな戦線ができた一方で、ロシア軍はウクライナ軍を戦術規模で包囲する状況をつくることができなくなった。ロシア軍は、フロディウカ～ノヴォフロディウカ［Novohrodivka］～セリドヴェ［Selydobe］線の東側でウクライナ軍を包囲する目的で、ヤスノブロディウカ［Yasnobrodivka］とカルリウカ［Karlivka］から進発して、カルロウシケ貯水池の西方へと前進する意図をもっていた可能性が高いが、T-0511高速道路の南側地点からノヴォフロディウカとセリドヴェの方向に向かう前進と連携して、ウクライナ軍包囲という戦果をあげることに失敗した。とはいえ、ここ最近の数週間でロシア軍はE-50（ドネツィク市～ポクロウシク）高速道路に向かって前進する際に、ウクライナ軍を包囲した。そして、戦術規模で包囲されるという脅威が、ウクライナ軍に撤退を促す結果になった可能性は高い。ポクロウシク方面で作戦行動を行っているウクライナ軍旅団の報道官は８月22日に、ロシア軍の前進がウクライナ軍に撤退の実施を促していることを認めたうえで、撤退の目的は、戦線を平らにすることと、ウクライナ軍兵員の生命を保持することにあると述べた。また、ポクロウシク方面に新たに送られてきたウクライナ軍新兵が、配置地点から撤退してしまった場合もあったことを、８月22日公開のAP通信記事のなかで、ポクロウシク方面で任務に就いている何名かのウクライナ軍指揮官が語った。ただし、ポクロウシク方面において混乱したウクライナ軍の撤退があったという報告が広がっていることをISWは確認しておらず、この地域でロシア軍が戦術的戦果を迅速にあげられなかったことは、ウクライナ軍がここ最近の数週間に包囲された地点から何とか後退することに成功したことを示唆している。また、ポクロウシクから南東方向に位置する展開拠点に配置されたウクライナ軍将兵を、最近の数週間でロシア軍が包囲殲滅したという報告の広がりもISWは確認しておらず、この地域で想定された戦術規模の包囲に関する、以前はみられたロシア軍事ブロガー間の議論は、現状、沈静化している。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注［30］～［34］に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文の日本語訳箇所（英文）
Recent Russian advances in the Pokrovsk direction appear to have prompted Ukrainian withdrawals from limited positions southeast of Pokrovsk, and Russian forces have likely failed to achieve their apparent objective of tactically encircling Ukrainian forces in the area. Geolocated footage published on August 22 indicates that Russian forces recently seized Ptyche (southeast of Pokrovsk) and advanced further south of the settlement, and ISW assesses that this confirms Russian claims that Russian forces had previously seized the remainder of the east bank of the Karlivske Reservoir in the area. Recent Russian advances south and southwest of the T-0511 (Ocheretyne-Hrodivka) highway have leveled the Russian salient east and southeast of Pokrovsk instead of setting conditions for the tactical encirclement of Ukrainian forces, however. Russian forces likely aimed to advance westward of the Karlivske Reservoir from Yasnobrodivka and Karlivka in order to encircle Ukrainian forces east of the Hrodivka-Novohrodivka-Selydove line but failed to make such gains in concert with their advances in the direction of Novohrodivka and Selydove from the south of the T-0511 highway. Russian forces enveloped Ukrainian forces as they advanced towards the E-50 (Donetsk City-Pokrovsk) highway in recent weeks, however, and the threat of tactical encirclement likely prompted Ukrainian withdrawals. The spokesperson for a Ukrainian brigade operating in the Pokrovsk direction acknowledged on August 22 that Russian advances have encouraged Ukrainian forces to conduct withdrawals to level the front and preserve the lives of Ukrainian personnel. Several Ukrainian commanders operating in the Pokrovsk direction told the Associated Press in an article published on August 22 that newly generated Ukrainian recruits in the Pokrovsk direction have retreated from positions in some instances. ISW has not observed widespread reporting of chaotic Ukrainian withdrawals in the Pokrovsk direction, and the lack of rapid Russian tactical gains in the area suggests that Ukrainian forces managed to withdraw from enveloped positions in recent weeks. ISW has also not observed widespread reporting of Russian forces encircling and destroying Ukrainian personnel at positions southeast of Pokrovsk in recent weeks, and previous conversations among Russian milbloggers about an envisioned tactical encirclement in the area have subsided.
戦争研究所 ウクライナ戦況インタラクティブ地図
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