本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年9月26日付ウクライナ情勢評価報告の一部を引用し、日本語に翻訳したものである。なお、ここで使用した地図画像は、報告書原文のものを使用した。また、記事サムネイル画像はウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿のものを使用した。
日本語訳:
9月26日、ウクライナ軍がザポリージャ州西部で攻勢作戦を続けるなか、ヴェルボヴェの戦術的状況は依然としてはっきりとしないままである。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はメリトポリ方面(ザポリージャ州西部方面)で攻勢作戦を続け、バフムート方面で攻勢的な行動を続けたとのことだ。クレムリン寄りの軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍がノヴォプロコピウカ(オリヒウ南方13km)の北端に到達したと主張した。ロシア空挺軍(VDV)に関係があるとされる情報筋の一つが、ヴェルボヴェ(オリヒウ南東18km)の半分は9月24日現在、ウクライナ軍支配下にあると主張したが、ロシア側情報筋はその主張に直接的な関心を示さないままだ。ウクライナ軍がこのような前進をしたという証拠情報を、ISWは現状、確認できておらず、この主張を表明した情報筋はフォロワーがかなり少ない。そうであっても、VDVとつながりのあるほかの情報筋が、この主張に反応していないことは注目するに値する。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア軍第58諸兵科連合軍(58 CAA)に「親衛」の称号を授与した。ロシア軍58 CAA(南部軍管区)は、現在も続く、ウクライナ南部でのウクライナ軍反攻作戦に対する守備任務を、ずっと担当している部隊である。
日本語訳:
ロシア軍第58諸兵科連合軍第42自動車化狙撃に属する、おそらく戦力低下した部隊が、ノヴォプロコピウカで頻繁に反撃を行っている。このことは、この地区での反撃任務を担っていた、ほかの部隊よりは精鋭といえるロシア空挺軍(VDV)部隊を、ウクライナ軍が損耗させてしまった可能性を示唆している。第42自動車化狙撃師団第70・71親衛自動車化狙撃連隊隷下部隊はこの1週間、ノヴォプロコピウカ付近での限定的な反撃に加わることがますます増えている。ロシア軍事ブロガーの一人は、第42自動車化狙撃師団隷下部隊が9月25日にウクライナ軍をノヴォプロコピウカ付近の陣地から押し出したと主張した。8月中旬から月末にかけて、ロシア軍がヴェルボヴェ〜ソロドカ・バルカ(オリヒウ南方20km)間の防衛網の背後に退く以前から、第42自動車化狙撃師団の第70・71・291自動車化歩兵連隊のそれぞれに属する部隊は、オリヒウ地区のロシア軍最前方防御陣地でウクライナ軍と交戦し、反撃することを日々、行っていた。この地区で広がったウクライナ軍の開口部に対して反撃を実施するため、ロシア軍は8月上旬から中旬に、比較的精鋭な第7・76VDV師団隷下部隊をオリヒウ方面へと横滑り的に再配置した。これによって、第42自動車化狙撃師団隷下部隊は、戦闘からの小休止期間を得ることができた可能性がある。第70自動車化狙撃連隊隷下部隊は部隊ローテーションを行った可能性があり、ISWが戦線上のこの地区で確認できた部隊ローテーションの数少ない例の一つである。そして、その結果、この部隊は完全ではないが戦力再建を行うことができた可能性がある。
ノヴォプロコピウカ周辺での反撃に第70・71自動車化狙撃連隊が加わっていることは、ウクライナ軍が第7・76VDV師団隷下部隊の戦闘能力をかなり大きく低下させた可能性を示唆しており、また、これらVDV部隊がオリヒウ方面のウクライナ軍開口部全域でのあらゆる反撃を行えなくなっている可能性も示唆している。ロシア軍統帥部は、VDV部隊がオリヒウ方面のウクライナ軍突出部東西両側面での防御任務を優先できるように、第70・71自動車化狙撃連隊をノヴォプロコピウカでの防御任務と反撃任務に投入したのかもしれない。また、第70・71自動車化狙撃連隊隷下部隊は、ノヴォプロコピウカよりも、さらに北にある陣地から後退して以降、この集落付近の陣地を守っており、ウクライナ軍がノヴォプロコピウカ外周部まで到達した結果、これらの部隊が現在ここでウクライナ軍と交戦しているという可能性もある。ざっと1カ月ほど休息をとり、その期間に戦力回復したとしても、第70・71自動車化狙撃連隊が、反攻初期の防衛任務の際に被った大きな戦力低下を埋め合わせられた可能性は低い。第801海軍歩兵旅団も同様に、反抗初期に最前方防御陣地を保持すべく防御任務に当たっていた。そして、最近伝えられた情報によると、ウクライナ軍反攻作戦の結果、この部隊は戦闘不能に陥ったようだ。ロシア軍統帥部がノヴォプロコピウカ付近でのウクライナ軍進撃に対する反撃のために、第70・71自動車化狙撃連隊隷下部隊を頻繁に投入する場合、すでに戦力が低下しているこれら部隊が戦闘不能になるリスクを、ロシア軍統帥部は抱えることになる。
日本語訳:
伝えられた情報によると、第42自動車化狙撃師団隷下部隊は、後方のトクマクまで下がって展開しているとのことだ。このことは、ロシア軍統帥部がウクライナ南部の後方に設けた多層防衛網に十分な兵員を配置できていないことを、これまで同様に示している。9月25日と26日のロシア側情報筋の主張によると、第71自動車化狙撃連隊第3大隊に属する部隊が、ロシア占領下トクマク市内で第70自動車化狙撃連隊の憲兵との争いごとに巻き込まれたとのことだ。トクマク市内に第70・71自動車化狙撃連隊隷下部隊が存在しているということは、ロシア軍統帥部が現在の前線からトクマクに至るまでの、複数線からなる防衛線の至る所に、この両連隊の部隊を配置していることを示唆している。だが、ロシア軍は、ザポリージャ州西部に投入した両連隊の戦力の大半を、前線のすぐ近くに配置し続けているようでもある。第70・71自動車化狙撃連隊をトクマクほどの後方に配置しているということは、前方陣地を防衛しているロシア軍部隊と同じ親部隊・編制に属する部隊が、おそらくもっと少人数の規模で、それより後方の陣地も守っていることを示唆している。未確認のロシア軍部隊が後方の防御陣地を守っている可能性はあるが、前線陣地の守備に投入されているロシア軍兵力を考えると、その可能性は低いと思われる。