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【SNS投稿和訳】エミール・カステヘルミ氏のウクライナ戦況分析:ロシア領クルスク方面(日本時間2024年8月8日04:10投稿)

フィンランドの軍事史家でOSINTアナリストであるエミール・カステヘルミ氏が、ウクライナ軍によるロシア領クルスク州への進入に関して、Xで連続投稿しています。

以下は、これらの投稿の日本語訳になります。なお、記事中の画像は、カステヘルミ氏の投稿に添付されているものを使用しています。


日本語訳

クルスク州で継続中のウクライナ軍攻勢だが、初動は成功している。

2日間に満たない期間で、ウクライナは突破に成功し、少なくとも12キロメートル分、ロシア領内に進撃し、ロシア軍陣地線を2線通過した。

ロシア軍は混乱状態に陥っている模様だ。

なぜこのようなことができたのか?

  1. ロシア軍情報部もしくはロシア軍指導部の過失

  2. 不十分なロシア側国境戦力

  3. トレツィク[Toretsk]とポクロウシク[Pokrovsk]の両方面においてロシア軍を食い止める目的で東部を強化する代わりに、クルスクに大規模な戦力を投入するというウクライナ側の決心

何が実際の目標なのかは現状、不明である。ウクライナはロシア軍の重点を、ほかの地域からクルスクに振り向けさせようと試みているのかもしれない。また、この作戦の目的が領土奪取とその領土の長期間にわたる占領にあるとみる場合、ウクライナが将来の和平交渉でより有利な立場を得ようとしている可能性も考えられる。

クルスク作戦はまた、長期的に続く影響をもっている。なぜなら、この作戦の結果、ロシアがさらに多くの兵力を国境地帯に投入せざるを得なくなる可能性は高くなるからだ。ロシアが想定していたものが、国境付近の村落に対する小規模な攻撃だけであって、複数の旅団からの部隊による、もっと大規模かつ広域な攻勢ではなかった可能性は極めて高い。

規模以外の面で注目すべき点として、現在のクルスク攻勢が、過去の攻勢と異なり、ロシア人義勇兵部隊によって遂行されていないということがある。ロシア義勇軍団もしくは自由ロシア軍団がこの攻勢に加わっていることを示す証拠情報を、現に私たちはいまだに確認できていない。

北東方面国境地帯においてウクライナは主導権を握ろうとしていることを踏まえると、今次攻勢に継続する作戦が存在する可能性がある。混乱を生じさせ、ロシアがクルスクで対応せざるを得なくなったのち、もしウクライナに利用可能な戦力が残っていれば、ウクライナはどこか別の地点でも攻撃を試みる可能性がある。

マイナス面も存在する。ロシアは領土を失っている。けれども、ウクライナのマンパワー問題が依然として残っており、ほかの地域で、とりわけドネツィク州において、追加部隊が切実に求められているという時期に、この作戦は限られたウクライナ軍予備戦力を消耗させることにもなる。

また、現在の状況の展開によって、ロシア軍がドネツィク州での作戦を停止せざるを得なくなる可能性があるという見解を、私は疑わしく思っている。ウクライナの進撃を抑え込む目的の予備戦力で、ドネツィク以外の地域から引き出せる戦力を、ロシアは十分にもっているはずだ。

戦略的状況を変えるためには、ウクライナはこの突破をさらに拡大させていかねばならない。ウクライナ軍は大きな都市を脅かすに至っておらず、現時点で主に制圧しているのは、野外地と小さな村落や町である。そうであるとはいえ、現在の状況だけでも、ロシアにとって政治的に鬱陶しいものになっている。

なお、この地域のロシア軍陣地が、対戦車壕及び対戦車障害物、防御拠点で構成されていることを指摘しておかねばならない。ここの塹壕線やそれ以外の歩兵戦闘用陣地は、重層的になっていない。以下の地図に示されているのは、この地域で最も主要な陣地群である。

この連続投稿の冒頭の地図は、情勢の中間的な評価に基づくものだ。ウクライナ軍が、少なくとも一部の地区において、もっとロシア領内後方へと進んでいる可能性は高い。だが、裏付けられた情報は極めて限られており、入手した情報の大部分がロシア側からのものである。現時点でウクライナ側のOPSEC[作戦保全措置]は厳格な状態だ。

私たちブラック・バード・チームは情勢のモニターと評価を続けていきます。さらに情報が入り次第、またあらためて投稿します。

以下リンクは、私たち制作のインタラクティブ地図です。

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