本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月6日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、日本語に翻訳したものである。また、翻訳以外に附記として、引用箇所以外の一部記述の要約も示した。なお、この記事中の地図は、ISW制作のものを使用している。
ウクライナ軍反攻の進展状況
日本語訳:
10月6日、ウクライナ軍はバフムート周辺で反攻作戦を続けた。同軍はまた、ザポリージャ州西部で前進することができた。複数のウクライナ軍関係者が、バフムート南方のアンドリーウカ(バフムート南東[*注:原文ママ]8km)付近におけるウクライナ軍攻勢行動の継続的な成功に言及した。また、10月5日に投稿された撮影地点の特定可能な動画に、ロボティネ南東約6kmに位置する、ロボティネ〜ヴェルボヴェ間の樹木線に向かって、ウクライナ軍が前進している様子が映っている。ウクライナ軍東部部隊集団報道官イリヤ・イェウラシュ大尉は、ウクライナ軍が秋から冬の季節を通して攻勢作戦を行う準備を進めていることを指摘した。秋冬になると、補給需要は増すだろうし、雨天と霧という気象条件は、ドローン、戦術航空機、陸軍航空隊の投入を難しくするであろうが、ウクライナ軍は冬の間も戦い続けることになると、イェウラシュは強調して伝えた。イェウラシュ発言は、ISWの以前からの評価分析内容を裏付けている。つまり、2022年冬季にそうであったように、ウクライナ軍の補給状況が整っており、かつ同軍が戦うことを選択するならば、天候はウクライナ軍にとってもロシア軍にとっても攻勢作戦を実施することへの妨げにはならないだろうということだ。それに加えて、ウクライナ軍攻勢のペースは、西側諸国がウクライナに小火器・弾薬・非殺傷性支援物資を適切に供与できるかどうかで、今後、主に決まり、単に冬の気象条件もしくは特定の兵器システムの存在によって決まるものではない。
クプヤンシク方面でのロシア軍の攻撃
日本語訳:
ロシア軍が10月6日にクプヤンシク付近で攻勢の取り組みを再開したことが伝えられているが、戦線のこの地区に展開しているとされるロシア軍は、戦闘能力不足である可能性が高い。ウクライナ軍当局者はここ数週間、クプヤンシク付近でのロシア軍の活動が減退していることを伝えていたが、10月6日にウクライナ軍東部部隊集団報道官イリヤ・イェウラシュ大尉は、クプヤンシク〜リマン方面でロシア軍が戦闘行動を再開したと述べた。複数のロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はシンキウカ(クプヤンシク北東8km)付近で攻勢進撃を開始し、N26(シェウチェンコヴェ〜クプヤンシク)高速道路を激しく砲撃しているとのことだ。ある一人の軍事ブロガーは、現在消去済みの投稿において、再開したクプヤンシクへのロシア軍攻勢進撃を、「大規模」と特徴づけた。ウクライナ国防省情報総局(GUR)の局長キリロ・ブダーノウ中将が以前伝えた内容によると、ロシア軍は新たに編成した第25諸兵科連合軍(25 CAA)所属部隊を、第41諸兵科連合軍(41 CAA)所属部隊に置きかえる形でクプヤンシク方面に配置したとのことだ。クプヤンシク方面で再開したロシア軍攻勢作戦には、おそらく25 CAA所属部隊も含まれていると思われるが、この作戦はウクライナ側の注意を南部戦線上にあるほかの地区から引き離すことを意図している可能性が高い。だが、25 CAAは当初配置予定時期の2023年12月よりも前に急いで投入されたため、人員充足状況がかなり悪い、もしくは訓練が不十分である可能性が高く、その両方である可能性も高いという評価を、ISWは以前示した。また、クプヤンシク地区に、戦力がかなり低下した西部軍管区(WMD)部隊が存在していることを、ISWは既に確認している。特にそうなのが、クプヤンシク地区に配置された第1親衛戦車師団隷下部隊と第6諸兵科連合軍所属の部隊である。新設の第25諸兵科連合軍と戦力が低下したWMD部隊の混成集団がこれから、この地区で有意味な攻勢作戦を持続できると、ISWは現時点において判断していない。
附記
以下は、2023年10月6日付ISW報告内容の一部の要約である。