本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月1日付ウクライナ情勢評価報告の一部を日本語に翻訳したものである。なお、記事中の地図は、すべてISW制作のものである。記事サムネイル画像は、オレクサンドル・トロンコ氏のX投稿添付のものを使用した。
日本語訳:
ロシア軍はロボティネ地区で戦術規模の反撃を実行している。これは、ザポリージャ州西部で続くウクライナ軍反攻作戦に対する弾力防御の一環である。ロボティネ南方の情勢は流動的であり、戦術的重要性をもつ野戦強化陣地のなかには、何度か支配側が移り変わっているものもある。9月30日投稿の撮影地点特定可能な動画に、T0408ロボティネ〜トクマク間道路付近にあり、ロボティネ南西約1kmに位置する塹壕網の一つに入ろうと試みたロシア軍兵員をウクライナ軍が打撃する様子が映っている。9月13日投稿の撮影地点特定可能な動画には、ウクライナ軍がこの塹壕のいくつかの区画を占拠した様子が映っており、それゆえ、9月13日から30日の間にロシア軍の反撃が行われて、この塹壕は失われた模様だ。ISWはこの場所を反攻によるウクライナ軍確保地域からロシア軍進出地域へと改めて登録した。
あるウクライナ兵士がこの場所の動画を分析し、前述のロシア軍支配下の塹壕は、ロボティネとノヴォプロコピウカの間に位置し、塹壕・火点・掩蔽壕からなる相互につながった防御網内にある強化防御拠点の一つであると指摘した。このウクライナ兵士は、この塹壕群がトンネルのような地下構造物で互いに結びつけられていることを指摘したうえで、ロシア軍が優先的にこれら拠点の防衛を進めており、ここはロボティネとノヴォプロコピウカの中間地帯で戦術的な重要性をもっていると指摘した。10月1日投稿の撮影地点特定可能な動画に、ここに3つ並んでいる塹壕の中央部の真南にあり、この防御網内の最東端の塹壕から西に約1kmの地点にいたウクライナ軍車両1両を、ロシア軍が打撃する様子が映し出されている。このことが示しているのは、ウクライナ軍が最東端の塹壕を支配していることと、同軍が残る2つの塹壕及びそれにつながる掩蔽壕と火点を再び占拠しようとしていることの二つだ。民間衛星画像は、ロシア軍が上述の車両を9月25日から28日の間に破壊したことを示している。このことから、ロシア軍が9月末に反撃を実施し、この塹壕網付近の自軍陣地を再び強固なものにしたことが分かる。3つの塹壕の西側と中央に、ロシア軍が継続的に存在しているという報告から、ロシア軍がロボティネ南方での限定的な戦術規模の反撃に成功していることが推察でき、また、この地区の戦術レベルの情勢は、複雑かつ変化が激しい状況であることが推察できる。