本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月23日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、ISW制作のものである。ただし、一部、加工してある。また、本記事サムネイル画像は、エストニア公共放送のウェブ記事から転載した。画像の人物は、エストニア国防軍情報センター長キヴィセルグ大佐である。
ロシア軍の砲弾確保状況
日本語訳:
ロシアの国内砲弾生産をみると、北朝鮮からの弾薬輸入で補完されることもあり、ロシア軍が2024年のウクライナにおいて十分な回数の砲撃を持続できる可能性は高い。ただし、その砲撃回数は、2022年の間よりも相対的に少ないものになるだろう。10月20日、エストニア国防軍情報センター長のアンツ・キヴィセルグ大佐は、ロシア軍が今でも約400万発の砲弾を残しており、その数は、ロシア軍がさらに1年間、「低烈度の」紛争に使用できるだけのものだと述べた。キヴィセルグ大佐は、北朝鮮が最大1,000個の弾薬コンテナをロシアに送っているという報告が存在すると述べ、各コンテナには300〜500発の砲弾が入っていることも加えた。キヴィセルグ大佐の試算によると、上述の数から、北朝鮮は30万発から50万発の砲弾をロシアに送っている可能性があり、その数量は、一日あたり約1万発という現在の砲弾消費を最大1カ月間続けることを可能にする数量だとのことだ。10月23日、ウクライナの軍事アナリストであるペトロ・チェルニク大佐は、ロシア軍が現在、一日あたり1万発から1万5千発の間で砲撃を行っており、2022年夏の一日あたり4万5千発から8万発の砲撃回数と比べると著しく低いと報告した。だが、西側からの情報と衛星画像が裏付けているのは、ロシア・北朝鮮双方の政府関係者が9月にさらなる軍事技術協力を公式に始めて以降、その中身のほとんどが砲弾である可能性の高い北朝鮮からの輸送が劇的に増加しているという事態である。これについては、ISWもすでに報告している。また、北朝鮮は輸送をさらに増加させる可能性が高い。ロシアの砲弾製造能力と継続する北朝鮮の砲弾輸出に関する西側の試算に基づくと、今後の見通しがつく範囲の将来において、ロシアがおおむね十分な回数の砲撃を継続できる可能性は高い。ロシア軍砲撃回数の全体的な減少が、大規模攻勢作戦を行うために必要なロシア軍の能力を損なっている可能性はあるけれども、ロシア軍の防衛遂行能力が経時的にむしばまれていくほど広範な砲弾欠乏に、ロシア軍が直面する可能性は低い。また、ロシア軍砲撃回数の減少が、そのままウクライナ軍の有利につながることもないだろう。ロシア軍よりも効果的な火力量をウクライナが持続できるようにするために、ウクライナ支援諸国及び国際機関がどの程度、同国を支えていくことができるかどうかが、2024年のロシア・ウクライナ双方の能力を決める主要因になるだろう。
前線の動向:ウクライナ戦況地図(1500 ET 23.10.2023)の抄訳
日本語訳(*番号は記事末地図中のものと対応):
10月23日にロシア側情報筋の一つは、ロシア軍がマキイウカから600mの地点にいると主張した。(ルハンシク方面)
10月22日投稿の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ウクライナ軍がクリシチーウカ付近において、鉄道線の北側で前進したことが分かる。(バフムート方面)
10月23日投稿の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ロシア軍がクラスノホリウカ南西で前進したことが分かる。(アウジーウカ方面)
10月22日投稿の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、10月21日時点でロシア軍がプリユトネ北方で前進していたことが分かる。(ドネツィク・ザポリージャ州境方面)
10月23日投稿の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ウクライナ軍がピドステプネ北方で前進したことが分かる。(ヘルソン方面)