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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1715 ET 31.07.2023 “ベラルーシ・ロシアでのワグネルの動向”

以下は、ISW(戦争研究所)の2023年7月31日付ウクライナ情勢報告の一部(添付した文書画像箇所)を、日本語に訳したものになります。


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%2C%20July%2031%2C%202023%20PDF.pdf

ベラルーシ軍の主な訓練パートナーとして、ワグネル・グループがロシア軍に取って代わろうとしている可能性がある。ベラルーシ国防省は7月30日、ワグネル所属要員が複数のベラルーシ軍機械化旅団隷下部隊(詳細は不明)に中隊規模の訓練を行ったと発表した。訓練内容には降車歩兵の戦術機動が含まれ、敵UAV(無人航空機)からの戦力隠蔽、中隊・小隊・分隊間の協同行動に訓練の焦点が当てられていた。この訓練はまた、戦車と砲兵の支援を受けた、ベラルーシ軍歩兵の諸兵科連合攻撃の遂行に重点を置いていたとも伝えられている。ベラルーシ軍の中隊規模訓練におけるワグネルの新たな役割は注目に値する。ベラルーシ軍はこの種の訓練をロシア軍教官の指導で実施することがほとんどで、複数の旅団が加わる演習に関しては、ロシア軍計画立案者におおむね頼っており、ISWはこのような訓練・演習へのワグネルの参加をこれまで確認したことはなかった。ワグネル要員がベラルーシ軍空挺旅団の訓練に加わっていることをISWはすでに確認しているが、ベラルーシ軍空挺旅団はこれまでずっとロシア軍第76空挺師団(ロシア空挺軍[VDV])と訓練を行っていた。これらのことから、ロシア・ベラルーシ両部隊間の伝統的な関係において、ワグネル・グループがロシア軍に取って代わろうとしている可能性があるとISWは予測している。

ワグネル・グループ資金提供者エフゲニー・プリゴジンの失敗した反乱後、ロシア国防省は人数は不明だがワグネル人員の吸収を上手く行えた可能性が高い。その一方でプリゴジンが残ったワグネル傭兵を8月5日までにベラルーシに集まるよう命じたことも伝えられている。プリゴジンは7月30日、「不幸にも少数(のワグネル要員)がワグネル・グループからの移籍に同意し」、ほかの何らかのロシア治安・安全保障当局(ロシア国防省を指していると思われる)に参加したことを明らかにした。プリゴジンは前ワグネル要員の働きぶりに謝意を示し、自分もワグネル司令官評議会もワグネル要員が別のロシア「治安・安全保障組織」に参加することを禁じていないと述べ、ワグネルの戦力再建が必要となるときが、今後、仮にも来る際、ワグネルに再び参加できるように、離れるワグネル要員は「連絡を絶やさない」でほしいという希望を表明した。プリゴジンはまた、ワグネル・グループはどのようにベラルーシ軍の訓練とアフリカでの活動を続けていくつもりなのかに関する既知の話を繰り返した。ウクライナ国民抵抗センターの7月30日の指摘によると、プリゴジンは現在休暇・休養中の全ワグネル要員に対して、遅くとも8月5日までにベラルーシ野営地に到着しておくよう命じたとのことだ。その理由は、8月5日に彼個人が主催する何らかのイベントへの出席のためだという。7月30日現在、ほとんどのワグネル戦闘要員は「休暇」中だとプリゴジンは述べた。

プリゴジンはロシア国内での募兵停止を発表し、ワグネル・グループにはさらなる人員募集は不必要で、十分な予備人員を確保していると主張した。プリゴジンは7月30日、ワグネルには十分な数の人員がおり、さらに戦闘要員が必要になるまでは、新たな募兵活動を行う予定はないと述べた。テレグラムのワグネル募兵ページの一つは7月30日、ワグネルには十分な予備人員がいるため、ロシア国内の地方募兵センターを無期限に休止すると発表した。なお、ワグネルが募兵を中断した正確な理由は不明だ。ワグネル・グループは2023年7月上旬時点において、依然としてロシア全土から戦闘要員を集めていたことが伝えられている。クレムリンは少し前からワグネル・グループのロシア国内での募兵を禁じている可能性があり、プリゴジンは、募兵活動を自らの意志で中断したと主張することによって、ただ単に自身の面目を保とうとしているだけなのかもしれない。ワグネル・グループの現戦力もしくは予備要員の充実度に関して、ISW独自での確認はできていない。

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