本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年1月17日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
[*記事サムネイル画像:ウクライナ・プラウダ紙記事写真より]
ロシア軍「作戦予備戦力」に関するウクライナ軍情報部の評価
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
ウクライナの情報関係当局者の一人が伝えた話によると、ロシア軍はウクライナにおいて一方面だけでなく、同時に複数の方面で攻勢計画を遂行するのに必要な作戦予備戦力を、保有できていないとのことだ。1月17日にウクライナ国防省情報総局(GUR)の副局長ヴァディム・スキビツィキー少将は、同時に複数の方面で大規模攻勢作戦を実施するのに十分な規模の予備戦力を、ロシア軍がもっていないことを伝えた。スキビツィキーは、ロシア軍が戦略次元での、または作戦次元での大規模攻勢作戦を、「強力な」予備戦力なしで実行することはできないと述べ、ロシアにこのような予備戦力がないことをほのめかした。スキビツィキーはロシアで動員措置が継続的に行われていることを指摘しているが、この指摘は、ロシアが現在進めている非公然動員キャンペーンを指している可能性が高い。なお、この動員キャンペーンは、志願者からの募兵、受刑者及びロシアに来た移住労働者の強制的な動員にひどく依存している。現在進行中のロシアの非公然動員が、ロシアが攻勢遂行を激化させる場合に必要となる兵員増加分を提供できているのか、もしくは、その場合に提供することができるのかは不明である。
スキビツィキーが1月15日に伝えた話では、ロシアは月あたり約3万人の兵を集めており、この兵員を損失の埋め合わせと予備連隊の編成に用いているとのことで、ロシアが「強力な戦略予備戦力」を形成するには、「動員」を実施する必要が生じるだろうということだ(スキビツィキーがいう「動員」は、2022年9月にロシアが実施した「部分動員」の新たな実施、もしくは、大規模な総動員を指しているものと思われる)。スキビツィキーの発言が示唆しているのは、ロシア軍はウクライナで作戦レベルの部隊ローテーションを実施するのに十分なマンパワーを生み出すことができているが、ロシア軍が複数方面で同時に攻勢を遂行するのに必要な作戦予備戦力を、そうなった場合に、すばやく新たにつくり出すことができるペースで、マンパワーを生み出せるとは限らない可能性があるということだ。