本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月22日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、ISW制作地図とGoogle Earth画像である。ただし、一部、加工してある。また、本記事サムネイル画像は、ウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿写真を使用した。
停滞するロシア軍のアウジーウカ攻勢
日本語訳:
ロシア軍は、アウジーウカ戦線での機械化部隊による正面攻撃に絡む困難な問題を抱え続け、10月19〜20日に再開した進撃が失敗に終わったにも関わらず、この戦線に追加戦力を注ぎ込んでいる。ロシア軍事ブロガーのなかには、アウジーウカ戦線における重要な変化は10月22日にはなかったと主張する者もいた。ロシア軍は、甚大な損失を被る結果に終わった大規模進撃が失敗したことを受けて、もう一度作戦休止に入っている可能性が高い。ある有名なロシア軍事ブロガーは、ウクライナ軍がピスキー(ドネツィク市[*原文ママ、おそらくアウジーウカ]南西8km)方向で「予想外に」反撃に出て、この地区の陣地からロシア軍が押し出されたと主張した。別の軍事ブロガーは、ピスキーとオピトネ(アウジーウカ南方4km)の両付近でのウクライナ軍反撃という主張は誤りだと述べた。アウジーウカ方面で任務についているとされる、さらに別のロシア側情報筋は、戦線上のどこかにある自分がいる地区で、ウクライナ軍の反撃はなかったと主張した。10月21日公開の動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ロシア軍が最近、ペルヴォマイシケ南東でわずかに前進できたことが分かる。あるロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍はアウジーウカ石炭屑集積場地区の完全な掃討ができておらず、この地区は現在、双方が相争う「グレーゾーン」になっているとのことだ。
クレムリン寄りのある軍事ブロガーは、10月22日時点におけるロシア軍アウジーウカ方面攻勢作戦に、「配置上の停滞」を招いているかもしれない困難さに関する見解を示した。この軍事ブロガーの主張によると、双方が多くの兵力を有し、強固な防御措置がなされている地区での静的な戦線において、機動戦を実施するのは難しいとのことだ。このブロガーは、ウクライナ軍のドローンとほかの精密誘導兵器が装甲車両をますます脆弱にしており、地上攻撃をますます難しくしていると指摘した。このブロガーはまた、ロシア軍がアウジーウカ周辺のウクライナ側地雷原の克服に苦慮し続けており、ウクライナ側兵站網を完全に破壊することができず、結果として、ウクライナ軍統帥部は緊急的地区に兵力をすみやかに移送できているとも指摘した。複数のロシア側情報筋は過去に、ウクライナ軍の強化防御陣地はアウジーウカ周辺でのロシア軍進撃にとって相当大きな難題を押し付けると主張していた。このような難題は、2023年6月から続くウクライナ軍反攻の最初の数週間にウクライナ軍が同国南部で直面した難題と極めて類似している。だが、2023年6月の初期失敗を受けてウクライナ軍がそうしたように、何らかの形で適応するだけの能力と柔軟性を、ロシア軍が持ち合わせているかどうかは、現状、はっきりとしていない。
ウクライナ側情報筋は、ロシア軍が深刻な損失にも関わらず、攻勢遂行を支えるためにアウジーウカ方面へと兵力を移動させ続けていると述べた。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐の発言によると、ロシア軍は兵力損失を埋め合わせるために、自国領内から直接、アウジーウカ方面に兵員を送り込んでいるとのことだ。ウクライナ人軍事ウォッチャーのコスティヤンティン・マショヴェツは、ロシア軍統帥部が最近、動員兵で構成されたロシア軍数個連隊をアウジーウカ方面に移しており、このことから、ロシアがこの方面での作戦を放棄するつもりがない可能性が高いことが分かると述べた。マショヴェツの指摘によると、ロシア軍はまた、第57自動車化狙撃連隊(西部軍管区第3軍団第6自動車化狙撃師団)に属する部隊を、スパルタク〜ヤコウリウカ〜ミネラリネ〜カシタノヴェ地区へと移送したとのことだ。