【抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1625 ET 14.10.2023 “事前に把握されていたロシア軍アウジーウカ攻勢”
本記事は、戦争研究所（ISW）の2023年10月14日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、すべてISW制作のものである（インタラクティヴ・マップの画像も含む）。また、地図のなかには加工したものもある。
US and Ukrainian officials reported on October 12 and 13 that they anticipated the Russian offensive operations around Avdiivka and expressed confidence in Ukrainian defenses. US National Security Council Spokesperson John Kirby reported on October 13 that the new Russian offensive operations near Lyman and Avdiivka “did not come as a surprise.” Kirby stated that the US is confident that Ukrainian forces will repel these Russian attacks. Kirby also reported that Russian forces appear to be using human wave tactics, wherein the Russian military uses masses of poorly trained and equipped Russian soldiers to attempt to advance - the same practice Russian forces used during their failed winter offensive in winter 2023. ISW has additionally observed Russian forces using higher than usual numbers of armored vehicles in ongoing operations. Ukrainian Main Military Intelligence Directorate (GUR) Representative Andriy Yusov similarly reported on October 12 that Ukrainian forces knew about and prepared for the Russian attack near Avdiivka and that Russian forces did not form sufficient reserves to attack along the entire frontline, but only in certain sectors. Several Russian milbloggers claimed that Ukrainian mines are slowing Russian advances near Avdiivka, indicating Ukrainian prior preparations for the attack.
日本語訳：
10月12日と13日に米国及びウクライナの政府当局者は、両国ともにアウジーウカ周辺でのロシア軍攻勢作戦を予期していたことを伝えたうえで、ウクライナ軍が防衛できると確信している旨を発表した。米国の国家安全保障会議戦略広報調整官ジョン・カービーの10月13日付報告によると、リマン付近とアウジーウカ付近における新たなロシア軍攻勢作戦は、「奇襲にはならなかった」とのことだ。また、ウクライナ軍がこれらのロシア軍の攻撃を撃退するであろうことを米国は確信していると、カービーは表明した。カービーはさらに、ロシア軍が人海戦術を用いているようだと述べ、その戦術のなかで、ロシア軍は前進を目指して、訓練・装備ともに不十分な兵士を大量に用いていると報告した。なお、この手法は、2023年冬の失敗に終わった攻勢の際にロシア軍が用いたものだ。それに加えていえば、ロシア軍が現下の攻勢において普段よりも多くの装甲車両を投じていることを、ISWは確認している。ウクライナ国防省情報総局（GUR）を代表するアンドリー・ユソウは10月12日に同じような報告をし、ウクライナ軍がアウジーウカ付近のロシア軍攻撃を把握していたことと、それに備えていたことを報告した。また、ロシア軍は戦線全体で攻撃を行うのに十分な予備戦力をつくれておらず、特定の地区で攻撃できるに過ぎないとも、ユソウは述べている。一部のロシア軍事ブロガーの主張によると、ロシア軍の進撃はウクライナ軍の地雷によって遅滞しているとのことで、この主張もウクライナ軍が攻撃に対する事前準備をしていたことを示唆している。
The Russian information space remains divided on the prospects of Russian successes near Avdiivka and on current Ukrainian capabilities. Geolocated footage published on October 13 indicates that Russian forces marginally advanced north of the waste heap north of Avdiivka. Additional geolocated footage published on October 14 indicates that Russian forces also advanced south of Avdiivka. Some Russian sources claimed on October 13 and 14 that Ukrainian defensive fortifications pose a significant challenge to Russian advances around Avdiivka. Some Russian sources indicated that Russian problems with medical support are also impeding Russian advances in the Avdiivka area. One Russian source claimed on October 12 that there is a shortage of surgeons in occupied Horlivka and Donetsk City near Avdiivka and called on Russian doctors to travel to the front to help treat wounded Russian soldiers. Ukrainian Tavriisk Group of Forces Spokesperson Colonel Oleksandr Shtupun similarly stated on October 14 that the majority of Russian casualties in the Avdiivka direction are due to low-quality medical treatment and local hospitals reaching capacity.
Other Russian milbloggers continued to praise Russian offensive efforts on October 13 and 14 and reiterated the Kremlin’s desired narrative that the Ukrainian counteroffensive is over. One Russian milblogger warned that Russian officials and sources have likely dismissed the Ukrainian counteroffensive too quickly and noted that it is too early to determine if the Russian attacks near Avdiivka will develop into an organized offensive operation.
日本語訳：
アウジーウカ付近でのロシア軍の成功に関する見込みと、現在のウクライナ軍の能力に関して、ロシア情報空間における意見は分かれたままである。ロシア軍がアウジーウカ北方の廃棄場の北でわずかに前進したことが、10月13日公開の動画で、撮影地点の特定できるものに示されている。同じく撮影地点が分かる10月14日投稿の別の動画に、ロシア軍がアウジーウカ南方でも前進したことが示されている。10月13日と14日に複数のロシア側情報筋は、ウクライナ軍強化防御陣地の存在が、アウジーウカ周辺でのロシア軍進撃へのかなり大きな障害になっていると主張した。ロシア側情報筋のなかには、医療支援に関してロシア軍が抱えている問題が、アウジーウカ地区におけるロシア軍進撃の阻害要因になっていると主張する者もいた。ロシア側情報筋の一つは、ロシア占領下の都市でアウジーウカ付近にあるホルリウカとドネツィク市において外科医が不足していると、10月12日に主張したうえで、ロシア負傷兵の治療を助けるために前線へと向かうようロシア人医師たちに呼びかけた。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐も同趣旨の発言を10月14日に表明している。シュトゥプン大佐によると、アウジーウカ方面のロシア軍死傷者の大半は、低レベルの医療措置と現地病院の収容人数が限界に達したことに起因するものであるとのことだ。
一方でそのほかのロシア軍事ブロガーは、10月13日と14日もロシア軍の攻勢の取り組みを称賛し続け、ウクライナ軍反攻は終わったというクレムリンが望む言説を繰り返した。あるロシア軍事ブロガーは、ロシア当局者とロシア側情報発信者は、時期尚早にウクライナ軍反攻を軽視している可能性が高いという警告を発した。この軍事ブロガーは、アウジーウカ周辺でのロシア軍攻撃が組織的な攻勢作戦へと発展していくかどうかを判断するには、まだ早過ぎるとも述べている。
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