本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月3日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
(記事サムネイル画像の引用元 → https://www.moscowtimes.ru/2023/12/01/putin-potreboval-otpravit-varmiyu-esche-170-tisyach-rossiyan-a115027)
2023.12.01付ロシア大統領令でロシア軍兵力は増えるのか?
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの12月1日付大統領令は、現在のロシア軍戦力範囲を公式に認めたものであって、ロシア軍兵力を急遽、増加させる命令ではない可能性が高い。12月1日にプーチンが署名した大統領令は、ロシア軍の公式戦力範囲を203万9千人から220万9千人に増やし、戦闘要員に限ると全体で115万から132万に増やすという内容になっている。プーチンが前回署名した2022年8月25日付大統領令と今回の2023年12月1日付大統領令の差である17万人のロシア軍戦闘要員の増加は、2022年8月25日から2023年12月1日の間に実質的に増加した戦闘要員17万人分を公式に認めたものであって、現状の戦闘要員数をさらに17万人分、すぐに増加させるよう命じたものではない可能性が高い。ロシア安全保障会議副議長ドミトリー・メドヴェージェフは11月9日に、ロシア軍が2023年1月1日以降に41万人の契約兵、志願兵、徴集兵を集めることに成功していると主張し、その後の12月1日には、ロシア軍が2023年1月1日以降、45万2千を超える人数の兵員を集めることに成功していると主張した。2022年9月にロシア政府は、部分動員に関するプーチンの大統領令のもとで、ロシア軍が30万の兵員を動員する予定であると発表した。NATO事務総長イェンス・ストルテンベルグの11月29日の発言によると、2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻以降、ウクライナにおけるロシア軍の人的損失(死亡者と負傷者)の数は、30万人を超えているとのことだ。現在も続く非公然動員の取り組み(志願者の募兵や外国籍労働者の強制的な入隊等)、部分動員、軍務を終えたロシア兵の人数、ウクライナにおけるロシア軍死傷者数を勘案すると、2022年8月25日から2023年12月1日までの期間に増加した戦闘要員の正味の人数は17万人程度になると考えられる。そのため、プーチンの2023年12月1日付大統領令は、220万9千人の軍要員数を新たな公式戦力範囲として設定したもので、ロシア軍全体の規模を新たに相当な規模で増加させることを命じたものではない可能性が高い。