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【SNS投稿和訳】ウクライナ南部ロボチネ方面:今後の戦術展開(Emi Kastehelmi氏)

上記リンクは、フィンランドのOSINTアナリスト・軍事史家Emi Kastehelmi氏(@emilkastehelmi)によるX投稿(日本時間2023年8月28日04:23)で、ウクライナ南部ロボチネ方面の今後の戦況分析がその内容になります。以下は、この連続投稿の「1〜18」箇所を日本語に訳したものになります。なお、画像は原文からの転載になります。

日本語訳:

ロボチネ地区でウクライナ攻勢は進展しており、ロシア軍の第1主防衛線は破られつつある。

このスレッドでは、この主防衛線を詳細に検討し、そして次に何が起こるのかを検討するつもりだ。

このスレッドには、高画質衛星画像が含まれている。

ウクライナ軍は6月からロボチネ地区での進撃をずっと試みてきた。2カ月半に及ぶ戦闘の結果、ウクライナ軍はロボチネの大半を解放し、ノヴォプロコピウカを迂回機動しつつある。

以下の地図で、6月1日の南部戦線と8月27日現在の南部戦線の状況を見比べることができる。

強固に防御が施された障害地点の最初のものは、ロボチネのすぐ外側に位置している。ロシア軍はしっかりとした防御網を築いており、この防御網には火点・掩蔽壕が存在する。この地点から、ロシア軍は北からと東からの攻撃を迎え撃つことができる。

詳細は、画像を開いてズームアップすると分かる。

現時点で、ウクライナ軍がこれら重厚に要塞化された陣地を直接攻撃しようとしているようにはみえない。

その代わりに、ウクライナ軍はノヴォプロコピウカの集落全体を迂回して、その側面に向かっており、ロボチネ南方の陣地と主防衛線の間に自軍を展開させている。

ウクライナ軍の直近の進撃路はざっと見て2方向、存在する。

  1. ノヴォプロコピウカの主要道路を切り開き、ソロドカ・バルカ[Solodka Balka]のかなり強固な主防衛要塞陣地に向かって進み続ける。

  2. ヴェルボヴェ付近の主防衛線の突破を試み、オチェレトゥヴァテ[Ocheretuvate]に向かって進み続ける。

ソロドカ・バルカという村落の防衛網を検討してみよう。8月の初め、ロシア軍は春季に構築した陣地の強化改善を進めていた。ここで多くの建築資材を確認することができ、特に鋼材が目立つ。それは屋根の材料とした使われているものだ。

ロシア軍は100〜350mの連絡用塹壕を構築しており、それによって増援の投入、もしくは戦闘拠点からの後退が容易になる。この村落の住宅区域は緩衝地帯として機能し、この村落の端からすぐに新たな塹壕が始まる。

重厚な防御陣地がつくられた目的は、トクマクへ向かう可能性のあるあらゆる進撃を阻止するためだ。ここは重要な進入路であり、そのため、この村を守ることは極めて理にかなっている。だが、この地区に集中する間に、ロシア軍は何か重要なことを見落としてしまった可能性がある。

ヴェルボヴェ西方の主防衛線は、かなり悪い状態であるようだ。

8月に入った頃、ここの塹壕を仕上げる準備作業はまったく始まっていなかった。8月末、低画質衛星画像を見ても、塹壕が強化改善された兆候をほとんど確認できない。

この地区に掩蔽された火点はなく、居住用地下壕もほとんどない。ほかの地区では、その構築にかなり注力してきたにも関わらずだ。

一方、ロシア軍は樹木帯を要塞化する傾向がある。それにも関わらず、それを示すものは、衛星画像でごく僅かしか確認できない。

地形の高低差を色で示した地図によって、戦場に関するさらなる知見が幾つか得られる。ロシア軍は防御陣地の大半を、優位に立てる高地上に構築している。そして、低地から高地に向かう戦闘を完全に避ける方法はない。

以下の地図で強調した稜線は、次の戦術的中心点になる。

高低差は極端なものではない。また、樹木帯の存在が、ロシア軍の火力投射範囲を狭めている。この地区におけるウクライナ軍にとって、そのまま前進し続け、ソロドカ・バルカとヴェルボヴェの間で突破口を開き、側面迂回機動を開始するという動きが最善の試みとなる可能性が高いだろう。

この状況が達成できれば、その後の作戦にとって、さらによい前提がもたらされることになる。その後の作戦というのは、例えば、ヴェルボヴェとノヴォプロコピウカという村落自体を攻撃するというようなことだ。この突出部の幅を広げることは、戦線の持続的安定化にとって必要になる。

近々にウクライナ軍は、両側面のさらに激しい掃討を開始しなければならない。この攻勢はただただ南進し続けることではすまない。ウクライナ軍は、ある時点において、コパニもしくはヴェルボヴェにもっと目を向けなければならなくなる。

そして、ウクライナ軍は戦力配分と優先順位設定の難題に直面することになるかもしれない。

両側面への攻撃が成功しない場合、攻撃の切先の進撃ペースもまた鈍るだろうし、その結果、ロシア軍に縦深防御を整える時間を与えることになる。

実際、このようなことはすでに起こっている。ベルジャンシク/マリウポリ方面において、ロシア軍はさらなる新たな防衛線の構築を始めている。

このスレッドの要点は以下だ。

  • 防御陣地は、いわゆるスロヴィキン線と呼ばれる第1主防衛線が展開する地域すべてで強力なわけではない。

  • ロシア軍の準備状況はまちまちだ。

  • 短期的にみて、ウクライナ軍にとって好ましい展開はありうる。とくに局地的な成功という点で可能性がある。

ご一読くださり、ありがとうございます。このスレッドを書くには、時間がかかりました。なお、使用画像は2023年8月1〜2日のものです。ゆえにウクライナ軍の作戦保全を危険にさらすことはまったくありません。

ジェニー&アンティ・ウィフリ財団(@wihurinrahasto)が私たちに出資してくださったことにも感謝申しあげます。

また、ブラック・バード・グループ(@Black_BirdGroup)の私たちのチームは、情勢追跡を継続して行っています。

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