以下は、戦争研究所(ISW)の2023年9月22日付ウクライナ情勢評価報告から、その記述の一部を引用し、それに日本語訳をつけたものである。また、記事中で使用した戦況地図は、報告書原文に添付されているものを転載した。記事サムネイル画像は、ウクライナ軍戦略コミュニケーション局のクリミア攻撃を報告するテレグラム投稿から転載した。
日本語訳:
9月22日、ウクライナ軍はロシア占領下クリミアに対してドローン及び巡航ミサイルを用いた攻撃を実施し、セヴァストポリのロシア黒海艦隊(BSF)司令部に甚大な損害を与えた。ウクライナ軍戦略コミュニケーション局(StratCom)は、ウクライナ軍が9月22日にクリミアのセヴァストポリに位置するロシア黒海艦隊司令部に対する攻撃を実施し、成功させたと発表した。ロシア側情報筋は、ウクライナ軍がこの攻撃の実施のためにストームシャドー巡航ミサイルを使用したと主張した。また、SNS上で公開されている司令部が映っている動画によって、建造物への甚大な被害が確認できる。ロシア国防省はロシア軍防空網によってウクライナ軍ミサイル5発が撃墜されたと主張したが、ウクライナ軍の攻撃によってBSF司令部の建造物が損傷したことも認めた。ロシア側情報筋はウクライナ軍がミサイル攻撃に先立ってドローン攻撃を行ったと主張し、ロシア国防省は9月22日午前にクリミア西岸で2機のウクライナ軍ドローンをロシア軍防空網が撃墜したと主張した。
ウクライナ空軍司令官ミコラ・オレシチュク中将は、空襲動画を拡散する際に、ウクライナ軍パイロット全体への謝意を表明した。ウクライナ軍南部作戦管区報道官ナタリヤ・フメニュク海軍大佐のコメントによると、ウクライナ軍は今後、クリミアにあるロシア側軍事目標をもっと多く攻撃していくことになるとのことだ。ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニーロウ書記は、ウクライナ軍がセヴァストポリ攻撃を続けていくつもりだと述べたうえで、ロシア黒海艦隊はさらなるウクライナ軍の攻撃を避けるために、自らの艦船を自沈させるしかないとも述べた。
日本語訳:
9月22日のウクライナ軍によるセヴァストポリ攻撃に、ロシア情報空間は強い関心を示した。攻撃結果に関するウクライナ側情報の拡散をロシア当局がコントロールできなかった点について、ロシア軍事ブロガーの一人は不満をあらわにした。また、別の軍事ブロガーは、ロシア当局及びロシア軍が満足のいくかたちで報復できていないことを批判した。さらにほかの軍事ブロガーは、ウクライナと西側支援国がクリミアをウクライナ領土とみなしているため、このようなウクライナ軍の攻撃は今後も起こると主張した。また、複数のロシア軍事ブロガーが、西側支援国はウクライナ軍がBSF司令部を攻撃目標にする手助けをしていると主張した。
日本語訳:
9月22日、ウクライナ軍はバフムート南方で前進した。また、ザポリージャ州西部でも前進できたことが伝えられている。9月22日に流れた動画で、撮影地点の特定が可能なものによって、ウクライナ軍がクリシチーウカ(バフムート南西7km)の南東で前進したことが分かる。クレムリン寄り軍事ブロガーの一人は、ウクライナ軍がノヴォプロコピウカ[*注:ザポリージャ州西部ロボティネ南方]の北方でわずかに前進し、現在、この集落から800mほど離れた地点にいると主張したが、これは、この集落に向かうウクライナ軍反攻の最接近地点に関するISW評価と概ね一致する主張である。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はメリトポリ方面(ザポリージャ州西部方面)での攻勢作戦とバフムート方面での攻撃行動を続けており、全戦線でロシア軍を消耗させ、それらに損失を与えたとのことだ。