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犬夜叉を写経する中学生



1998年生まれなので、中学校に入学するのが2011年だった。かの震災があり入学式が2週間程度遅れ、暇を持て余して入り浸ったのは近所のブックオフ。ブックオフがわたしを人生初オタク・ロードへ誘ったのである。
巻数が揃っている比較的古めの作品をメインにあらゆる漫画に手を出したが、高橋留美子作品、特に犬夜叉はアニメの再放送時期とも重なってめちゃくちゃにハマった。何かを狂うほど好きになった体験はあれが初めてで、好きになったはいいが狂気の発散方法がわからなかった。当時は自由に使えるお金もないし、SNSを開設する頭もなかった中学1年生の私が邁進していたオリジナルの"オタ活"をここに列記する。

・怪しい動画サイトで過去の放送話を1日1話ずつ見る
パソコンを使っていい時間が1日15分だったので、弟の持ち時間と合わせた貴重な30分を犬夜叉を履修することに費やしていた。当時はサブスク配信も知識もモラルもなかったので、B9動画とかいう怪しい動画サイトに転載動画のまとめサイトから飛んでいた。

・好きなシーンのある巻をお小遣いで買う
これはやったことがある人が多いのではないだろうか。犬夜叉は漫画が全56巻の作品なのでお小遣いで(たぶん月1000円)は全巻購入ができず、仕方なく好きなキャラクターや好きなシーンのある巻を優先して集めていた。お年玉は没収されていたため使えなかったが、没収されてよかったと思っている。

・アニメの設定画集を図書館で借りてきて絵を片っ端からトレースする
顔の六面図、衣装のディテールなどを習字の半紙を使ってとにかくトレースしまくったおかげで何も見なくてもキャラクターの絵が描けるようになった。

・図書館でサントラと主題歌集を借りて聴きまくる
Walkmanを買い与えられて間もない頃である。犬夜叉は劇伴が豪華で、サントラに加えてオーケストラアレンジのCDまで出ていた。主題歌はV6やDo As Infinity、浜崎あゆみ、相川七瀬など錚々たる顔ぶれだったが、全員avexだと気がつくまで12年かかった。 

・キャストの対談ラジオをWalkmanに落として持ち歩く
完結編放送のときに出たやつ。成田剣さんが愉快なおじさんでびっくりした記憶がある。

・主題歌の歌詞をノートに書き起こして持ち歩く
このあたりから様子がおかしくなってくる。
B5版の小さめのノートに鉛筆で、懇切丁寧に歌詞を書き写していた。OPもEDも全部書いたおかげで今でも歌詞がほとんど完璧に出てくる。

・劇伴を耳コピしてピアノで演奏する
 習っていたのはピアノではなくてバイオリンなのだが、なぜピアノを選んだのか謎。楽譜がなかったのでサントラを繰り返し聴いて、ちゃんと五線譜に書いた。この練習をきっかけにピアノが少し弾けるようになって他のアーティストの曲もいくつか弾いていたが、犬夜叉の曲だけは今でも弾ける。
 
・好きなシーンの音声データを持ち歩く
Youtubeに上がっていたシーンまとめ動画の中から音声を録音してWalkmanに落とし、通学時に聴いていた。ちなみにオリエンタルラジオの中田さんは綾波レイの音声データを通学時に聴いていたらしく、この話を知ったときに同じ狂い方をしている人がいて嬉しかった。

・完結編25-26話(最終話)のセリフを全て書き起こして持ち歩く
例の歌詞を書いたノートの後半が丸々全部それになっていた。完全に写経である。なんでここに行き着いたのか本当に謎すぎる。最終話には犬夜叉とかごめのキスシーンがあるのだが、ト書きになんて書いたのか気になる。実家の奥深くに置いてきたので、気力があるときに発掘したい。


記憶に残っているのは以上である。中学生とはいえ我ながらモラルがなさすぎてびっくりだ。不快に思われた方がいたら申し訳ない。
お金も知識もSNSもなかった中学生が行き着いたオタ活「写経」、みなさまもぜひ試してほしい。


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