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世にも怪奇な物語

世の映画好きほど映画を観ているわけでもないが、いままで観たなかで一番怖い映画ってなんだっただろと考えるともうあれしかない。
息子の竜太は子供のころ観させてあげた「謎の物体X」がいまだにトラウマになっているといわれたりもするが、フェデリコ・フェリー二監督の「世にも怪奇な物語」もうこれに尽きるのだ。
三話のオムニバス形式となっているフェリーニ監督の作品なのだが、第一話「黒馬の哭く館」につづき第二話「影を殺した男」。ジェーン・フォンダ、ピーター・フォンダの出演する第一話、アラン・ドロンとブリジット・バルドーの第二話は自分にとってはどうでもよく、問題はテレンス・スタンプ主演の第3話 「悪魔の首飾り」なのだ。

かつての人気の面影も消えたダミットが映画出演の依頼を受け、イギリスからイタリアへ来たのだが、重度のアルコール中毒でもあり、空港を歩いているとエスカレーターから風船がポ~ンポ~ンと落ちてきて、見上げると金髪の美しい少女が広めのルージュで笑みを浮かべている。もうこれだけで自分は見ていられないのだ。なんで美少女というのはあんなに怖いのだろう。流れるように空港から外中へとカメラは目がまわるように観客の頭を混乱させるかのように自由に画面を踊り続ける。そしてそれはパーティーのシーンとなり、出演者としてダミットが紹介され、賞品としてフェラーリ250スパイダーのワンオフバージョンが贈られるのだが、そのフェラーリを観たいがためになんど映画館へ足を運んだことか。しかしそのフェラーリを見るためには、あの少女の微笑を観なければならないという関門が待ち受けているのだ。それも何回も、そして気がふれたかのようにイタリアの狭い路地を、あのフェラーリを振り回すダミット。オープントップなので屋根はなく、フロントグラス越しに髪の毛がゆらぐくらいなのだが、なおさらその狭い路地と気のふれたようなカメラと、フェラーリのドリフトでもう観ているほうが酔わないのがおかしいくらいのフェリーニ映画なのである。
そして工事中のハイウェイの突き当りに来てしまい、ダミットはそのまままたアクセルを思い切り床に踏みつける、そしてまったく想像通り、少女の風船が工事中のハイウェイを転がっていくのだ。
とにかく少女が何をするわけでもないのに、自分はこの映画がいちばん怖くてたまらない、世にも怪奇な物語ではなく、世にも怖い映画の第一位なのである・・・


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