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LONE WOLF ~ 一匹狼


いまずっと頭脳警察のニューアルバムをレコーディングしているのだが、キーワードとして東京オオカミという言葉が強くカラーとして出てきている。
ローンウルフ・・・いままでどこともだれとも徒党を組まず、自分らの意思決定でその行動や計画を決めてきた。そしてその責任も自分たちで引き受けてきたつもりだ。このへんに関しては、無責任なことも多々あったことなのであまり強いことは言えないが、いいじゃないか、一匹狼。おかげでただロックが好きなので始めただけなのに、パンクなどという言葉も知らなかったのにいつのまにか歴史のなかで世界初のパンクバンドなどと呼ばれ、たしかにチンピラだったかもしれないが、そんな陳腐な存在じゃねえよと自分で憤っているのも本音だ。
そしてキーワードとして浮上してきているローンウルフ。
明治初期までいた東京オオカミ。社寺の表を飾る犬に見える石造もオオカミであることが多いと言われるオオカミ。たまさか身内を守ってくれ、身体、心に入り込み、いずれの形にせよ、信奉に値するオオカミが、人を襲う、地を荒らすものとしてではなく、いわゆる守護神としての扱いで、あえてカタカナで「オオカミ」と表記させもらっている意味もある。

しかしことここにいたって、いまマスコミによくローンウルフという言葉が頻繁に表れるようになってきた。無差別障害殺人、単独犯行、これらをすべてメディアはローンウルフと表記し、この手のものはこれからもさらに増えていってしまうのだろうと哀しいかな自分も予測できてしまうことがたまらなく辛い。
本来、オオカミは群れを成すものである。一匹狼とは群れから外れた、自身の行動と責任の中でひとりで生きていく強い存在、と解説されることの多い一匹オオカミだが、それをいたたまれない犯罪の担い手としてローンウルフと表記されてしまうのが悔しくてたまらない。

群れが移動するとき、先頭の数頭は老いた、そして病を抱える弱きものたちが歩き、その速度に合わせて、5,6頭の元気のいい若いオオカミが前方を守る親衛隊として続き、そのあとを、群れの中心を成すメス、そして子供たちが続き、少し距離をおきながら、しんがりを群れの長が勤め、目的地まで移動するオオカミたち。
それを凶行の犯罪者としてローンウルフと一緒に呼ばないでほしい。そして集団を成す群れであるなら、一匹オオカミや他の群れとの諍いもあるだろう。そこは弱肉強食の世界であるからどこにでもある光景だが、そんな集団生活を送るオオカミたちを祀る、いまやもうすでに人の心から忘れられてしまった東京の心の姿をあえて音楽の中の心象風景として蘇らせたいという気持ちでいっぱいなのである。

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