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「ROCK飯」PANTAと歩く所沢グルメ街道 第2回 所沢総合食品地方卸売市場 定食屋の海鮮丼と握り寿司、そしてエリック・バードン&ジ・アニマルズ

「所沢で最高級の江戸前寿司が食べられる名店があるらしいぞ」
PANTAがいたずらっぽい子供のような笑顔を浮かべている。
子供たちの走り回る声がなんとも心地よい土曜日の午後。PANTAは今日の昼食の店をすでに決めていた。
「今日は所沢市場で海鮮丼を食べよう」とPANTAは言った

埼玉で海鮮を??
誰もが知っている通り埼玉には海がない。港がない。なのに海鮮?
埼玉の名産といえば深谷ねぎ、川越芋、イチゴのあまりんでは?
もしくは「うまい!うますぎる!」で有名な十万石饅頭。
いや、全部知りませんよと言われかねないけれど、埼玉で海鮮とは聞いたことがない。
「あの、埼玉って海鮮物おいしいんですか?」
「Tマネ、甘いな。所沢総合食品地方卸売市場の中に知る人ぞ知る名店があるらしいぞ」
「なんていうお店ですか?」
「定食屋だ」
「いや、PANTAさん、お店の名前です。検索します」
「だから定食屋だよ」
???と検索すると確かにある。所沢総合食品地方卸売市場の定食屋。営業時間は月曜から土曜日の10時から14時まで。日曜祝日はお休み。
「とにかく所沢市場にいけばいいんですね」と亀さんがハンドルを握る。所沢市民にはこの市場は有名らしい。
つまりあれだ。築地場外市場みたいなものが所沢にあって、そこに飲食店があるわけだ。と、検索すると定食屋だけでなくラーメン屋、カレー屋と出てくる出てくる。
さしづめ所沢B級グルメの宝庫という感じ。所沢インター近くなので少し混んでいる車列を抜けるとガランとした市場の入口。しかし駐車場はいっぱいだ。そして、でっかい「定食屋」の看板。うわ、まんまである。
すでに定食屋の前には入り待ちの行列が!しかし、飾り気ゼロの店頭、これは期待大である。しも入口近くのガラスケースにはずらりと並んだ刺し盛りが!
この量でこの価格!?と驚いている間にどんどん客が刺し盛りを取っていく。この刺し盛りに定食セットというのがあるらしい。システムがわからずきょろきょろしていいると、亀さんがさっとマグロの刺し盛りを取る。

刺身定食のこの迫力

「ここは所沢市民には有名な店なんですよ」とふっと笑みを。
そうか、亀さんはシステムを知っていたか!
店内に入ると満席。老若男女、親子にカップルでいっぱいである。
PANTAがすかさず
「海鮮丼だな」という。
メニューを見ると海鮮丼、ねぎとろ丼、鮪漬丼、特上寿司、特上刺身、とろぶつ、鮪西京焼きなどずらり。これは迷う。
きょろきょろ周りを見渡すと海鮮丼らしきものの中央にでかい甘えびが!
実は今ひとつ甘えびが苦手な俺。
「すいません。海鮮丼と定食のセット、それに特上寿司を」
「おっ!Tマネは握りかぁ」とPANTAは興味深々。
待つ間、昭和感満載の魔法瓶からお茶をこれまた昭和感のプラのマグカップに注ぐ。なんだか山奥の温泉宿の待合室の感じ。

これが海鮮丼。この豪華さ!

と来ました。まずは海鮮丼と定食セット。うわ、すごい量の海鮮丼のアタマ。
鮪、イカ、ウニに白魚、赤貝と光物にサーモンと玉子焼き、真ん中に甘えびがどーん!
9品の特盛。これで1000円。これはコスパ最高でしょう。
と、驚く間もなく特上寿司が届く。超肉厚の切り身にこれまたシャリがでかい。
見くびった!こりゃ人気が出るはずである。この握り寿司の量もはんぱない、
「う、旨いぞ!Tマネ、亀ちゃん!」
海鮮丼を一口食べたPANTAが声を上げる。

特上寿司、なんと10カン!ウニまで!

どれ、それじゃいつも最後に食べる中トロからいってみるか。と、口に入れるとびっくり!
海がない埼玉と侮ったり!これは東京の一流店に負けずとも劣らずの最高のネタ!しかも倍はあろうかという肉厚!ちょっとシャリがでかいのがたまにきずだが旨い!
感極まる俺の顔を見てPANTAがにやり。
「どうだ。海のない埼玉に海の幸ありだ!」
うまいことを言うなぁ。この寿司なら週末、これを食べるために高速を飛ばして所沢インターまで来るのも悪くない。
と、お茶を一飲み、一息ついたPANTAが口を開く。   

海鮮丼にご満悦のPANTA

「Tマネはアニマルズの『朝日のない街』って曲は知ってる?」「確か1965年の全英2位、全米13位のアニマルズの名曲ですよね」「そう。原題はさ、『We Gotta Get Out of This Place』、全然朝日のない街じゃないんだけど」「ですね。『朝日のあたる家』がヒットしたんで無理矢理つけたんですかね?」「どうだろうなぁ。歌詞がさ、”私のパパはベッドで死んでいる。彼の人生は、、働きづくめで髪は灰色になり、そう仕事の奴隷のような人生だった。仕事仕事仕事。オレたちはここから出なきゃいけない”って感じで当時の甘っちょろいラブラブソングばかりのポップソングの中に、放り込まれた強烈な労働者階級からの叫びの歌だったんだ」「そんな歌がヒットソングに入るって凄いですね」「そうそれがアメリカなんだよ。でさ、エリック・バードンと話した時にさ」と、思わずお茶を吹き出した。「えっ、エリック・バードンと話したんですか?」「うん。新宿のディスコの楽屋でさ」スケールがでかいんだかなんだかわからない話である。エリック・バードンと新宿のディスコで話すっって。「で、マリファナの功罪とか、なんかたいしたことのない話をしてたんだけど、そこへギターのアンディー・ソマーズが入ってきたんだよ。やあ、と声をかけたらさ、すっと顔を背けられてしかとなんだよ。なんだよこいつ、ずいぶん失礼な奴だなぁと思ったんだ」当時のPANTAをしかとって…怖っ。「そしたらさ、エリック・バードンが勘弁してやってくれと。なんでも、日本の当時の興行関係者がマル暴関係でえらい揉めたらしい。その雰囲気があまりに酷くて、すっかりメンタルをやられちゃったんだって。同情するよなぁ」とてつもなく昭和な話である。とここで、特上寿司最後の1かんを食べ終える。いやぁ満足。しばらく海鮮物はお腹いっぱいな感じだ。「それでさ、10年後に今度はポリスのギタリストとしてアンディー・ソマーズが再来日をするんだ。スティングと対談取材が組まれて頭脳警察とフランク・ザッパのこととか話したんだけどね。で、アンディの話をスティングに振ると”彼は今度は大丈夫だろうな?ってすごいナーバスになってたよ”って言うんだよ。可哀想にすっかりトラウマになっちゃったんだなぁ」PANTAは海鮮丼を食べ終えお茶をすすっている。「さてTマネ、コメダに行ってコーヒーを飲もう。あんバタトーストもいいかな」え〜っ、おやつは無理ですよと言いかけてグッと言葉を飲む。いいじゃないか食欲が出たのは元気な証拠。それにしても、アニマルズのエリック・バードンとアンディ・ソマーズの裏話からスティングまで、国際色が豊かすぎて、そのレジェンドぶりに目が白黒する所沢市場の定食屋のひと時だった。

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