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秘密の学校あったらいいな

わたしの秘密の学校。
放課後はいつもその学校に行きます。
その学校は、お風呂屋さんの隣にあります。
スーパー銭湯なんかじゃなくて昔からある公衆浴場です。
家からその煙突が見えます。

家を出る時は、右にあったのにしばらくすると左にあったり振り返ると後ろにあったりするお化け煙突です。そのお風呂屋さんの隣が秘密の学校です。

家は小さなアパートの一室で妹や弟がいてうるさくて勉強ができません。だから秘密の学校に寄ってから帰ります。

秘密の学校から帰るとお母さんが「遅くまで遊んでいないで弟や妹と遊んであげなさい」といつも小言を言います。私は「学校でお勉強をしていたの」と答えます。

秘密の学校の事は秘密です。誰にも言いません。秘密の学校には、必要な物はなんでもあります。必要で無いものはないのです。

先生はいらないからいません。
黒板も机もいらないからありません。
運動場も鉄棒も体育館もいらないからありません。
クーラーも灯りもいらないからありません。
テレビも電話もいらないからありません。

雨風が防げる屋根と囲いがあるのです。座る場所も寝転ぶ場所もあります。
宿題もできます。予習も復習も図書館で借りた本も読めます。
私が自由にできる時間があるのです。
自由に想像できて楽しいのです。

日が暮れる前に秘密の学校から家に帰ります。

そんな秘密の学校あったらいいな。