道成寺
清姫と安珍
昔々、紀州の国には、安珍という誠実で勤勉な僧侶がいました。彼は道成寺で厳しい修行に励んでいました。ある日、熊野詣の帰り道、富田川の上流にある村で清姫という美しい娘に出会います。
清姫は裕福な真砂一族の長の娘でしたが、心優しく、困っている人を助けることを生きがいとしていました。そんな清姫は、旅の途中で倒れていた安珍を見つけ、介抱します。安珍の優しさや知性に惹かれた清姫は、たちまち恋に落ちます。
しかし、安珍は修行に専念したい一心で清姫の気持ちを拒絶してしまいます。純粋な清姫は、安珍の真意を理解することができず、深く傷ついてしまいます。
それでも、清姫は安珍への想いを諦められません。安珍は清姫から逃れるように温川から龍神に行き日高川から道成寺に帰りました。清姫は安珍を追いかけ、道成寺までやって来ます。しかし、道成寺は男性のみが入れる寺院であり、清姫は中に入ることができません。
清姫は諦めずに、道成寺の周りをうろつき、安珍に会う機会を伺います。ある日、ついに安珍と再会した清姫は、改めて自分の気持ちを伝えます。しかし、安珍は修行を優先するあまり、清姫を突き放してしまうのです。そして聞こえない、喋れない、見えないふりをするのです。
見えない、聞こえない、喋れないのであれば、わたしと一緒に焼き死にましょうと焼身自殺を行おうとする清姫。火をつける清姫。それに気づいて声を上げて逃げまどう安珍。
「おのれ、嘘をついたなぁ」
安珍を抱き抱えた清姫は火に飛び込むのでした。
二人は死後も何度も生まれ変わり、巡り会います。
しかし、その度に同じ過ちを繰り返し、同じ悲劇を辿ります。安珍は清姫に真実の愛を伝えようとしますが、清姫は安珍の嘘を許すことができません。
幾度もの生まれ変わりを経て、ようやく安珍は清姫の心を理解し、真実の愛とは何かを悟ります。
真実の愛とは、相手を思いやり、偽りのない心で接することだと。そして、安珍は清姫に真実の愛を誓い、二度と嘘をつかないことを約束します。
清姫もまた、安珍の誠実さに心を打たれ、真実の愛を受け入れます。二人は互いの愛を確かめ合い、永遠に共に生きることを誓います。
物語の教訓と現代的な解釈
この物語は、男女間の恋愛だけでなく、人間関係全般に当てはめることができます。
真実の愛とは、相手を思いやり、偽りのない心で接することである。嘘をついたり、相手を欺いたりすることは、いずれ関係を破綻させてしまいます。
私たちは、何度も同じ過ちを繰り返しながら、自分自身について学び、成長していくものです。真実の自分自身を見つけるためには、深い反省と真摯な努力が必要となります。諦めずに努力を続けることで、私たちは必ず真実の自分自身を見つけることができるでしょう。