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プロのコミュ障、とうとう美容院へ行く

私は美容院が苦手だ。「今日はお休みですか?」「お仕事なにされてるんですか?」どこにも逃げられない空間で、テンプレ化された会話を一方的に始められる。

そして自分の顔面を、目の前の大きな鏡で見せつけられ続ける。ケープで服を隠され、髪を濡らされた状態で、むくんだ顔だけがボンとそこに映し出されてる様子を、2時間もひたすら突きつけられるのだ。

対して、その画角に一緒に映るのは、お洒落な服に、バチバチに決まったヘアスタイル、ハサミやダッカールなど仕事道具を腰からぶら下げ、カッコよく仕事をこなす美容師。 

そんな相手に鏡越しに話しかけられたって、間抜けな顔むくれコミュ障女が、楽しくおしゃべりなんてできるはずもない。(たまにいるけれど。あんな間抜けな格好をさせられても、ちっともオーラが消えない美女とかイケメンが。)

とはいえ、完成するまではケープを脱ぐわけにも、椅子から飛び出して帰るわけにも行かない。なんとか自分の顔を目に入れないように雑誌に視線を落としつつ、ひたすら薄ら笑いを続けながら、会話に答えるしかないのだ。なんて拷問だ!

しかし、全く会話もなくひたすら雑誌を読むだけの時間になると、それはそれで「え?…他のお客さんは楽しそうにしゃべってるのに、私のブースだけ無言…?」と思ってしまい、私だけダメな客のような気がしてきて「ハズレ客を引いたと思われてるかもしれない。ごめんなさいね。私なんかの担当をさせてしまって」とか考えてしまう。

もちろん、その逆で、意図せず会話が盛り上がったら盛り上がったでヘトヘトに疲れてしまうし、一度そんな風に話してしまうと、今後もその状態を続けないといけなくなるので、二度とその店にも行けなくなってしまう。

どうしたって向いていないのだ、美容院が。ということで、ずっと美容院は避けていた。しばらく自分で切っていた。

これだけディスっておきながら、実は私、8年間美容師だったのだ。もちろん「今日はお休みですか?」トークも、当時はお客様にしていた。

つまり、自分で切る知識は、ある。しかし、知識があっても自分の頭を後ろから見ることも、髪を求める角度で正確に引き出すこともできない。

そのため、ある程度自分でもカットの都合のきく、肩下10〜20センチくらいのロングヘアでずっと過ごしていたのだ。

それでも、たまに奇妙なことが起きる。前髪をカットしようと思っていたのに、いつのまにか別のところも気になりだし、ちょっとここだけ…もうちょっと…もうちょっと…! とやっているうちに、ロングヘアーが肩につくかつかないかくらいのボブになっているのだ!

なんでだ!? ちょっと前髪を切ろうとしただけなのに!! ちょっとついでにレイヤー入れて動きを出そうとしただけなのに!! こんないつの間にか全頭がギザギザのノコギリ屋根工場みたいになっているのだ。中でなにを製造しているんだ! こんなんじゃとてもじゃないけど、外を歩けない!!

無題 - 2021年3月22日 13.20 2

ということで…泣く泣く、5年ぶりに美容院へ行くことにしたのだった…。

ああ〜、憂鬱。

大人のくせに、こんな頭になってしまった理由を話すのも恥ずかしいし、新しい美容院で、新しい美容師さんと、苦手なコミュニケーションをとりつつ、鏡にむくみ顔を晒す2時間が、怖くてしかたないよう〜。

そう。私が1400文字かけて伝えたかったことは、一つ。

「美容院行きたくないよう」


おしまい。


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