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#28 ファーストラヴ|島本 理生

個人的には、環菜のしたことや裁判に進んでいく過程よりも、由紀と迦葉の過去や、由紀と我聞の関係性がとても興味深かった
由紀と迦葉は、一時期深い関係性にあった
それは迦葉が言うように、恋愛よりもずっと特別で大切にしていたこと
この二人に関しては、恋愛にならないほうがよかったのかもしれないが、ただ大学生という若かった時期にあったので、恋愛より優位なものがあるということは知らず、そして傷つけあって、恋愛に至らなかったことが心の深くに刻まれている
一方で、我聞とはすぐに恋愛の関係に進むことになるが、我聞は一途でまっすぐに、由紀を傷つけることもなく温かく包み込む
恋愛よりももっと特別な関係で結ばれること、そしてまっすぐな愛と信頼で結ばれること
恐らく迦葉とは、信頼というよりも、似た環境で育ったからかすぐにお互いを理解し合うことができた
どちらがいいということではないが、当時の私としては、我聞のようなまっすぐに愛をくれて、信頼を与えてくれるような関係性がうらやましく思えた

迦葉の強引さとか強気な感じ
環菜に関しては、何をしたか、どんな気持ちでモデルをしていたか、幼い頃のことや、男性との関係性など、自分のことについても語れない状況だったが、最後の裁判のシーンでは、しっかり自分の口で自分のことを話せるようになっていたのが印象的
環菜が、いわゆる「いい子ちゃん病」の子であることが、少し重く
こういう女性って大人になってもそのままだし、私自身もそういう点はあるのではないかと思って、それが余計に気分を重くした

島本理生さんらしい、重くて、沈む気持ちになるような、でも最後には少し光が見えて温かくなるような作品だった


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