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Micronの2022年1Q決算内容

はじめに

Micron Technology (Micron)は,今年第1四半期の業績発表を3月29日に行いました.
内容はウクライナへのロシア侵攻や中国の都市封鎖によるサプライチェーン問題を回避し前年同期から約4倍の営業利益25億4600万USDを達成したことを明らかにしました.純利益は、前年同期の6億300万USDから,今期は22億6300万USDに達しました.
DDR5への移行でこれからもメモリ業界をリードし,データセンター向けのNVMe SSDと組み合わせることでポートフォリオの拡充と移行を加速させていくようです.

Micronは中国でのCOVID-19感染拡大によるロックダウンやロシアによるウクライナ侵攻など、半導体サプライチェーンに影響を及ぼす事態を回避できているようです.

 昨年12月にCOVID-19感染拡大を受けて中国が西安市のロックダウンを実施したため、同市にあるMicronのバックエンド製造工場の生産にもその影響が及んだことが報告されました.現在はロックダウンの解除されており同工場は通常の生産レベルまで回復することができているようです.
また世界半導体サプライチェーンはロシアのウクライナ侵攻を受け、さらなるサプライチェーン危機のリスクを抱えています.ウクライナは希ガス(KrやXe)や重要な鉱物資源の供給国で現在主要な希ガス製造拠点は激戦区マウリポリとオデーサにあり,すべてが操業停止に追い込まれています(ロシアからの製鉄時に発生したガスを原料としているのも理由).Micronはそんな状況下でも十分な材料レベルを維持すべく材料供給源の分散化に取り組んできたといいます.記者会見でのコメントを見る限りでは,短期的な在庫は問題なさそうですが,数カ月後には原材料費のコスト上昇となって影響が及ぶことを示唆していました.

メモリとストレージ市場の爆発的な成長

AI, 5G, 電気自動車などなどこれからも次世代メモリやフラッシュメモリには旺盛な需要が見込まれています.今後10年間はさらなる技術革新と旺盛な需要に支えられて,成長が見込まれています.他の半導体に比べるとここ20年ぐらいで最も成長が著しい分野の一つがフラッシュストレージで,これからもその上昇トレンドは継続していくと見込まれています.
個人的には初期の頃からSSDをノートPCに載せ替えて使っていた経験があり,SSDの急速な普及のおかげで2008年当時は256 GBで7万円ぐらいだった2.5” SSDが今なら4TBや8TBの製品も購入可能になり普及価格帯である100USDで1TBの超高速ストレージが購入できる状況に驚いています.民生用はこれからも価格の低下で過当競争に陥るでしょうが,高信頼性,耐久性が要求されるサーバー分野の高付加価値SSDがこれからもMicroの売上や利益率の上昇に貢献していくでしょう.
また電気自動車には自動運転などを制御するコンピュータが用途別に複数搭載されており,それぞれに高速ストレージやメモリが必要なこともこれからの需要を牽引していくことも期待できます.

Lehi, Utah Fab (XPoint製造拠点)について

https://investors.micron.com/news-releases/news-release-details/micron-technology-inc-reports-results-second-quarter-fiscal-0
2021年第2四半期、Micronはポートフォリオ戦略を更新し,データセンター市場向けのメモリとストレージのイノベーションへの注力をさらに強化しました.これに伴い3D XPointを大規模に商業化するために必要な継続的な投資を正当化するには,市場の検証が不十分であると判断しました.そのため,3D XPoint技術の開発を中止し,Lehiにある3D XPoint製造専用施設の売却について買い手候補と協議を行いました.その結果,有形固定資産を売却目的保有に分類し,減価償却を停止しました.2021年6月30日,MicronはLehiの施設をテキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッド(以下TI)に売却する最終合意を発表し2021年10月22日に売却を完了させました.

2022年第1四半期,MicronはTI社からLehi施設の売却対価として8億9300万USDを受領し主に有形固定資産9億2100万USD,主に固定資産税・設備予備品・原材料の償還債権からなるその他の資産5500万USD,主にファイナンスリース債務からなる負債5800万USDを,純資産として処分しました.Lehi施設の売却の結果2022 年第 1 四半期に構造改革及び資産減損に含まれる 2300 万USDの損失を認識しました.

2021 年第 3 四半期に,TI 社との最終合意に関連して,売却予定の資産を売却費用見込み額まで評価減するため の費用 4億3500万USD(及び法人税等(引当金)の利益に含まれる税効果 1億400万USD)を構造改革・資産減損に計上しまし た.また,2021 年第 2 四半期には,3D XPoint の今後の開発中止の決定に関連して、3D XPoint 在庫の評価損として 4900万USDを売上原価に計上しました.

解説:IntelがMicronと共同で開発を行った3D Xpointと呼ばれる相変化メモリをベースにした高速不揮発性メモリでしたが,やはりNANDフラッシュに価格面で太刀打ちできず,投資打ち切りという判断になったようです.Intel はSSD部門をSKHynixに売却しましたし,相変化メモリのプロセスはTIが購入して何か他のチップ製造へ転用されるのかもしれません.


今後10年間の投資計画

今後10年間で世界中の製造開発拠点に1500億ドルを投資していくことを発表しました.
2025~2026年には,新たにDRAM向けにウエハー生産能力を増強することにより2030年までの需要に対応できるようになる見込みだとしています.そのころにはDDR6とかの規格になるのでしょうが,積極的な投資を行い競争力を維持していく考えのようです.

米国連邦政府が国内の半導体製造分野に向けて520億米ドルという多額の助成金を提供する法案が、2022年後半には議会を通過するとみられています.Micronは投資計画の一環として、その助成金を受けることになるようです.MicronのCEOであるMehrotra氏は、IntelのCEOであるPat Gelsinger氏と共に、米国議会が2022年3月23日に開催した、米国半導体業界の投資インセンティブに関する公聴会に参加していました.

おわりに

株式市場はFRBの利上げと金融資産の早期での縮小でいまいちこの好業績に反応しませんでしたが,Micronもまだまだ成長余地がありそうです.私は昨年購入して長期保有の予定でしたが,かなり期待通りの業績で逆にあまりにも株価が過小評価されているので,今が買い増しするチャンスと捉えています.
なお今日の株価の下落は米国における3月のCPI (インフレーションの年率換算)が8.4%と2月の記録的な数字から更に上昇したためだと思います.これによりFRBがインフレーション対策のためにあらゆる手段を使うという可能性は高くなってきたと思われます.一部のアナリストはこれがピークだろうと言っていましたが,まだ上昇する可能性は残っています.
最低でも次の利上げは0.5 bp来年にはFRBの政策金利は4%になっても不思議ではない状態になってきました.今回は急速な利上げとFRB保有資産の縮小が同時に行われるという荒療治が行われるためにリスク資産市場は大荒れになりそうです.

免責事項
ここに掲載された内容は投資アドバイスではありません.
掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください.


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