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117 梅花祭

梅が徐々に満開に。
ふとした瞬間に鼻先をくすぐる香りににんまりしてしまう。

年を追うごとに梅が好きになる。
梅と言えば、私の中では梅花祭。
京都の北野天神で2月25日に行われるお祭りです。

15歳から23歳までの9年間で、
11回くらい京都に旅行に行きました。
集中的に同じ場所に行ったのは、京都だけ。

15歳の頃はよくわからず連れていかれましたが、
高2で日本史が好きになってからは、
毎年どのお寺を参詣しようかと
ウキウキしながら計画を立てるような若者でした。

みうらじゅんさんのような
サブカルの神のような人が
仏像について本などを出す前の時代ですから、
特に京都の市街地から外れたお寺なんかでは
ご住職に大変よくしてもらった記憶があります。

御朱印と拝観料で旅費のほとんどを占めるような旅で、
宿は安い素泊まり宿、
交通手段は深夜バス、
ご飯は毎食なか卯の貧乏旅行でした。

大学が冬休みに入り、
観光地としては閑散期の2月。

少しでも旅行客を獲得するための
各寺の冬の特別公開などを目掛けて、
毎年2月下旬に京都へ出掛けてました。
ちょうど梅花祭の時期だったので、
毎年北野さんには寄っていく、というのが通例。

梅花祭については一つ思い出すことがあります。

北野さんに向かう市バスに乗るためバス停に行き、
本当にこのバス停でいいいのか少し不安になったので、(京都は市バスのネットワークが凄い)
ちょうどバスを待っていたお爺さんに声を掛けました。
お爺さんとそのままお話をしながらバスに乗り、
お爺さんも北野さんに向かうところだと教えてくれました。

数分バスに乗り、
降りると
「急いでいるのか、時間はあるのか」
と聞かれました。
「全然急いでないですよ!」と
少し耳の悪いお爺さんに大きな声でお答えすると、
こっちへ、と連れていかれました。

北野さんのほど近くの和菓子屋さんで
「焼餅」という焼いたお饅頭のような名物を買ってくれたのです。
その場で2人で特に何を話すでもなく黙って食べました。

その後お店を出て、
お爺さんに丁寧にお礼を言って
それぞれ分かれて境内へ向かいました。

その時はもう話すことがなくなってしまって、
でも何か話したほうがいいのかな?とそわそわして、お店を出たところで分かれてしまいましたが、
本当は心の奥がさわさわと、
まるで知らない風が吹くような新鮮さで、
そのお爺さんに、大人にしてもらえたような、
そんな気分でした。


自分1人で旅の支度をし、
現地で見ず知らずの人とコミュニケーションをとるだけでなく、
相手からもそのように扱ってもらえたという
独り立ちを感じさせる瞬間でした。

まあ、そのお爺さんからしてみたら
子供のように見えて
おやつをあげたくなったのかもしれませんが。

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