勝手にチョコレート報告会

 大学2年生の頃はキャンパスと駅までの移動は大学バスだった。授業に合わせて最寄りの駅に行き、知っている人も知らない人もしゃべったことはあるぐらいの人も一緒に乗って大学へ行く。帰りももちろんバスで、家に帰る人、バイトへ行く人それぞれの事情を抱えながらも行きよりは会話が多い賑やかな車内だ。僕はそんなことはあまり関係なくいつも本を読んでいた。
 それでも時間が遅くなると、人は減ってくる。大学のバス乗り場は電灯が少なく、夜の時間は近隣の家の明かりや構内の街灯がすこし点くくらいでほぼ真っ暗だった。暗くなって人がまばらになったバスを待つ時間が好きだった。そんなとき女の子からチョコをもらった。
 ダースは板チョコとちがって一つひとつの粒になっている。しかもフィルムに包まれているのではなく剥き出しの粒チョコ。指から手のひらに乗ったチョコは少し冷たくてちょっと恥ずかしくてすぐに口に入れた。バレンタインの思い出ではないけど、冬になるとちょっと冷えたチョコレートを思い出す。


バスを待つあいだに冷えた指先でつまんでくれたダースひとつぶ/鈴木ベルキ

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音羽凜さんと吉村のぞみさんのネプリ「チョコレート報告会」を読んで、チョコレートの思い出を書き出してみました🍫

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