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連作『嘘のハムカツ』

2023年11月~12月 に開催された「たにゆめ杯4」に投稿した連作です。
早月くらさんより票をいただき、大変励みになります(ありがとうございました!)
本作は、西瓜に投稿した『はざま』5首を推敲し10首の連作にしました。
このような短歌の発表の場を用意された主宰の他人が見た夢の話様に感謝申し上げます。


連作『嘘のハムカツ』


連作『嘘のハムカツ』


水槽と鳥かごだけのペット屋の跡地の跡地にのこる陽だまり

百人の六年生のきらめきを集めたような土のかたまり

境目のない春だった商店のおもかげのまま民家の引き戸

もう記憶の中にしかない道にいて声は声じゃなく再生をする

あいさつをしない人にもやわらかいスラーのようにうなずく会釈

ぼくだけに聞こえたのかもしれなくてすいませーんに二度振り向いた

踏み入れば奥行きのある道具屋のやたらと急須が並んだ三和土

いてもいなくても良かったと思う日のチャイルドキャリアは冷たく光る

駅までの道を聞かれたことにして駅までの信号を数える

夕暮れに混じった嘘のハムカツと記憶の母のうしろを歩く

鈴木ベルキ

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