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「哲学の先生と人生の話をしよう」を読んだ

「哲学の先生と人生の話をしよう」國分功一郎

読書期間
2024年6月中旬〜7月上旬。

手にとったきっかけ
「100分de名著」エチカの回を見て以来、國分功一郎ブームが到来してしまった。おそらく、ものすごく遅いのであろう。だが、本との出会いは人それぞれ。タイミングが今だったのだろう。ひとまず、図書館で借りられる著作は借りている。「新潮文庫の100冊」になっている「暇と退屈の倫理学」はステンドグラスしおり欲しさも相まって、すでに購入している。

●お悩み相談。なのにミステリー、そして哲学
人生相談の大半は恋愛および人間関係。相談者の中心層は20〜30代であるが、10代から50代まで幅広い悩みが取り上げられ、しかも少なからず重々しい内容が含まれている。それらに対し、先生は筆を慎重に進める。あとがきにも書いてあるが「これに対する返答を間違えれば、自分はこの相談者の人生に間違った影響を与えてしまうかもしれない」という緊張感が伝わる。手に汗握る展開。何より「書いてあること」への返信だけではないのである。

書いてない、この部分に何か隠されている事実はないですか?という問いかけがなされる。まるで、探偵が未解決事件の手がかりを探すように。私の好きな相談は「抑え難い復讐心があります」である。相談者の語りがすべてであるなら、少しも悪いところはない。にもかかわらず、「私にも落ち度は様々にある」と書いているのはなぜ?その落ち度とは何?相手の情報が大変不足しているが、何かを無意識に隠蔽していませんか?など。ミステリーだ。そして、先生も「この事件」と書いている…

この手法自体が、哲学の手法であることも、あとがきで明らかにされる。「哲学者の文章を読むときには、哲学者が言ったことだけを読んでいるのではダメである。文章の全体を一つのまとまりとして眺め、そこを貫く法則を看破し、哲学者が書いていないことにまで到達しなければならない」。「人は本当のことを言わないのであり、それを探り当てなければならない」、。

その上で、伝え方は、相談者にも、読者にも伝わらなければならない、と練られた文体はズバズバと答えられているにもかかわらず、優しさに満ちている。

哲学は難しい。けれど面白いなぁ
4月から7月にかけて、政治哲学の勉強をしていたこともあり、哲学することへの興味が深まっている。学生時代にはあまり感じられなかったので、その面白さ、奥深さを感じられる程度に成熟したのかもしれない。国分先生の本は、おいおい、読んでいきたいものである。

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