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【15】かわいそうは作り物

先日、とあるブランドの工場を見学させて頂いた。バングラデシュでの工場見学は2回目だったので、自分なりに比較をしながら参加できたことが面白く、ものづくりの現場に興味がわいてきている身としては、学び深い時間となった。

日常会話レベルのベンガル語ができるようになったので、実際に工場で働いている方々に直接質問をぶつけてみた。(わかりやすいようにこちらを工場Aと呼ぶ)

「この工場で働くモチベーションは何ですか」

工程が異なる場所で何人かに聞いてみたのだが、回答は
「一緒に働いている仲間がいい」
「働いている環境がいい」
ということだった。

実は、同じ質問を別の工場見学(こちらを工場Bと呼ぶ)の際にも同じようにして従業員の方にしていた。そこでの回答も、
「一緒に働いている人がいい」
「働く環境が素晴らしい」
といったことだった。

工場AとBでは似たような回答を得た。が、なぜ「素晴らしいのか」を問うとその理由は異なっていて興味深かった。

工場Aでは、効率性よりも職人一人一人のスキルアップに重きを置いていて、もしこの工場がつぶれてしまったとしても、一流の職人として活躍できるようにと、どの工程も出来るようにトレーニングを重ねている。グループ制を取ることで、グループ全体で一つの商品をつくり上げるシステムになっていて、新人メンバーにはベテランのリーダーが就く。つまり、「共に頑張る仲間がいるから、一緒に働いている仲間がいい」「一流の職人スキルを身につけられるから、働いている環境がいい」ということだ。

一方で工場Bでは、福利厚生がとても充実している。工場長が常に現場を巡回し、一人一人に声をかけ続けていて、大規模な工場でこれだけ組織のトップと働いている方々の距離が近いのはとても珍しいと思った。工場の中には病院や保育所、無料でお腹いっぱい食べられる食堂までも付いている。「組織の上下関係がなく、一緒に働いている仲間がいい」「福利厚生が充実していて安心して働けるから、環境がいい」ということだろう。

アプローチの異なる方法で工場に関わる全ての人が働くことに愛を持てるような関係・環境を築き上げている点が興味深かった。

バングラデシュは縫製産業が盛んなこともあり、たくさんの工場がある。しかし、メディアで取り上げられるのは残念なことに、労働環境が整っていない工場ばかりだ。劣悪な環境の工場も一定数あるのは事実。しかし、これらばかりが前に出てしまって、バングラデシュのものづくり産業がかわいそうなものとして認識されるのは悲しい。誇れる工夫と誇れる技術がこの地にはあります。「かわいそう」と捉えられるかどうかは切り取られ方次第だと思う。

バングラデシュで頑張る職人の方々の商品が、日本やその他の国々のたくさんの人々の元に届きますように。


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