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途上国における医薬品の在庫管理:温度・湿度管理を中心に

はじめに

みなさん、こんにちは。今回の記事では、途上国における医薬品の在庫管理に関して、特に温度と湿度に焦点をあててご紹介します。高温や多湿が医薬品へどのような影響を与えるのか、また、その対処法とは何かを解説していきます。なお、記事は国境なき医師団の在庫管理マニュアルを参考に作成しました。

途上国の気候と医薬品保管

途上国の多くは熱帯または亜熱帯気候に属します。こうした環境で医薬品を管理するには本来はエアコンが必要です。ですが、リソースが不足している途上国ではエアコンを設置できず、結果として医薬品の品質に大きな影響を与えている可能性があります。
例えば、室温が25℃を超えると、医薬品はその効果が低下したり、毒性が増す場合があります。例えば、テトラサイクリン系の抗菌剤は高温の環境下で劣化しやすく、腎臓への毒性が増すと報告されています(1)。
また湿度にも十分注意が必要です。湿度が高いと医薬品は劣化しやすく、効果が著しく減弱する事があります。

温度管理はどのように行う?

では、リソースが限られている途上国で、温度管理はどのように行えばよいでしょうか?
もちろん、エアコンの設置がベストですが、難しい場合、以下のような対策が考えられます。

  • ファンの設置
    ファンは室温を約2℃下げると言われています。

  • かやぶき屋根にする
    こちらも室温を下げます

  • 保管部屋の壁に直射日光が当たらないようにする
    壁を二重にしたり、屋外に木を植える等で、保管部屋への直射日光を減らし室温を下げます

また国境なき医師団のマニュアルでは医薬品は25℃未満で保管となっていますが、日本だと一般的に30℃未満での保管となっています。
現地で実現可能な室温を設定して、対策をしていくのが良いかもしれません。

湿度管理はどのように行う?

では次に湿度管理です。湿度管理もとても重要で、特に雨季の時期にはしっかりと行なう必要があります。目安として湿度は65%以下に保つことが推奨されています。こちらもエアコンを設置出来ればよいのですが、それ以外の対策は以下のようになっています。

  • ファンの設置

  • 頻繁な換気

  • 乾燥剤の使用

  • パレットやスノコを下に敷きその上に保管

  • 壁から60cm以上離して保管

空気の流れを良くするのが基本となるようです。

現実は…

一方で、残念ながら途上国では予算の関係で、これらの対策が難しい事も多いでしょう。高温多湿の環境で保管された医薬品は本来使用すべきではありませんが、かと言って全て廃棄する事もできないですよね。結果として途上国では現場の判断で、こうした医薬品を使用します。もちろん最終手段ですので、その際は医薬品の変形、変色、異臭の有無を確認する必要があります。異変があれば廃棄しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?途上国での在庫管理はなかなか大変ですよね。まずはエアコンを設置してもらえるように全力でプレゼンするのが良い気がします。プレゼンの中でテトラサイクリン系抗生剤のお話なんかもすれば、より理解を得やすいかもしれないですね。

以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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参考文献:

  1. Degradation pathways and main degradation products of tetracycline antibiotics: research progress


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