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“ハンドメイドに大事なのは宣伝と対面販売” シルバーアクセサリー「銀久」インタビュー

【このインタビュー記事の注意事項】
昔やったインタビューがもったいないので
noteでサルベージしよう企画です。
2017年12月24日の記事なので、
当時と現在の状況が違うこともあります。
ご了承の上、お読みください。

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“自分の気になる作家さんやクリエイターさんに、どんな思いで制作活動をしているのか聞いてみたい”
そんな思いで立てたインタビュー企画、第1回はシルバーアクセサリーブランド「銀久-GINKYU-」さんにお話をうかがいました!

●アクセサリー販売は“試着”が大事

―銀久さんは現在インターネット販売よりもイベント出店をメインにされていますが、その理由を教えて下さい。

「単純に、ネットに比べてイベントの方が好調だからですね。イベントにも出してネットにも出して…と並行してやっていますが、イベントの方が反応がいいです。

うちはシルバーアクセサリーで特にリングがメインなので、やっぱり試着してもらうのが大事なんですね。
自分の指に着けたらどんな雰囲気になるのか、サイズ感はどうなのか、というのは実際に試着しないと分からないので。

ネット販売の売上は、実は全体の数%くらいしかないんですよ。
ただし、正月に出している福袋を除いてですが。福袋は年間売上でも大きな数字を占めています」


―福袋はやはり売れるのですか。ショッピングモールなども毎年やってますもんね。

「そうですね。ただ、かなりサービスしているので、利益にはあまりなっていません(笑)。でも、“今年は○分で売り切れた!”って毎年記録更新したりするのは嬉しいですね。

福袋は採算を考えずに広報のためにやっているので、売上よりも宣伝効果を重視しています。なので福袋を購入したお客さんには、TwitterやInstagramなどにどんどん写真をアップして欲しいです!

色々な宣伝はしてきましたが、うちは基本的に口コミでお客さんが増えていったと思うので。」

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●10年以上勤めた会社を退職して、シルバーアクセサリーの世界へ

―「銀久」を始めた最初のキッカケは何でしたか?

「私はもともと、某食品会社の営業職で営業やマーケティングの仕事をしていました。比較的大きな会社だったと思います。

そこで10年以上働いていましたが、給料はそれなりにいいけどやっぱり仕事はきついんですよね。
『役職が上る前に、自分の体がもたないんじゃないか?』と考え始めて…。

私は3ヶ月に1回かならず、ストレスで扁桃腺を腫らしてたんですよ。
医者には“慢性扁桃炎”だと診断されました。

薬を飲んで何とかやってきたんですけど、医者から『このままだと薬で肝臓がやられるよ』と言われて。体壊すか会社辞めるかどっちか選べって状況になった時に、会社辞める方を選びました。
それが『銀久』を開業する2年前です。

周囲にシルバーアクセサリーをやっている人が結構いたので、自分も趣味で始めてみたんです。仕事はきつかったけどその分使う暇もなく蓄えはあったので、材料や設備を簡単に買うことができたんですね。

仕事を辞めてしばらくは、失業保険をもらいつつ次の仕事をさがしながら生活してたんですが…1年くらい経って『そろそろ仕事しないとまずい! でも会社員はこりごりだ。さて、何やろう?』と考えて。

周りのシルバーアクセサリー職人さんが順調にやっているように見えたので、『じゃあ自分も、趣味でやってたことを仕事にしてみるか!』と思ったんです。

趣味の時点で設備は整っていましたが、さすがに工房はありませんでしたので…。退職金や会社員時代に購入した株などを全部売却して積立を全部取り崩し、それを資金に工房を購入して、仕事にする決意をしました」


―「銀久」さんは3周年を迎えられていましたよね。
ということは、シルバーを始めてから5年ですか!? もっと長くされているのかと思いました。

「そうですね、3年前の10月一日(いっぴ)から始めたので。
まだまだ、技術的には成長途中だと思いますよ。だからこそ会社員時代の経験を活かして、得意な販売・宣伝に力を入れています」

●イベント出店の悲喜こもごも

―イベント出店していて、大変だった・残念だったという経験はありますか?

「万引きですね。小さい商品なので、スッと取って行きやすいんでしょうね〜。こちらも気をつけて見てはいるのですが、一人で対応しているので、なかなか…。大きいイベントでは、もう一人売り子さんをお願いしたりしているんですけど。

あとは、そういうこともあるし気をつけないとって程度の話なのですが…
前に買った銀久のリングをブースに置いて、別の新しいリングを試着して、
そのまま自分のリングを置いてっちゃった方がいて。同じものなんで、見分けがつかないんですよね。

その時は何とか見つかりましたが、自分の指輪をブースに置かれると、後々面倒になることが分かったので…外して試着する時に自分のものはポケットに入れるなどしてもらえれば、トラブルがなくて良いかもしれません。」


―イベント出店していて、嬉しかった・楽しかったという経験はありますか?

「初めて出店した時に売れた時は、やっぱり嬉しかったですね。『大丈夫、やっていけるぞ!』って思いました。その後、偶然その“一番最初に買った方”と再会したのですが、その時も嬉しかったです。

ブースに置かれると困るとは言いましたが、前に買った銀久のリングをつけて来ていただけるのは嬉しいです。あとは、感想のお手紙などをいただいた時なども。

それから毎回のイベントごとに売上目標を立てているのですが、この目標が達成したり、前回出店時を上回ったりすると『やった!』と思います」

●お手頃価格のシルバーアクセリーである理由

―銀久さんはアクセサリーの価格がかなりお手頃に感じるのですが…

「あ、そうだと思います。シルバー業界の中ではかなり安い方だと思いますよ。さっきも言いましたが、私はマーケティングに携わっていたのと、大学の専攻もマーケティングだったので、“作ること”よりも“どうやって売るか・宣伝するか”をかなり重視しています。

なので銀久を始めた当初は、“利益よりも、まずは沢山の方に買ってもらうこと・知ってもらうことが大事”だと思っていたので、リング1本3000円で売ってました。

友人や同業者に『ドンキ(ホーテのシルバー)かよ!』って言われたこともあります(笑)。最近では技術力も上がり、製品のできも良くなってきて競争力もついてきたので、価格変更を行いましたが。

それでもシルバー業界全体で見ると安い方だと思います。何故それが出来るかというと、シルバーアクセサリーを作るにあたっての工程を、全て自分で行っているからなんですね。

一般的なシルバー職人さんは、全工程の中の大部分を業者さんに頼んでいる方が多いと思うんですよ。もちろんその方が、専業でされている方に任せられるので仕上がりは綺麗になりますし、作業時間もとられないですが…そのぶん業者さんの人件費・作業費(工賃)がかかるんですよね。

私はそれが無いのでお安く提供できる、ということなんです。
しかしそろそろ一人では限界が出てきたので、最近は工程の一部分だけ人に頼んだりしています」

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●商人気質の強さを活かしたハンドメイド活動

―制作をしていてこんな事が楽しい、ということはありますか?

「10年以上もマーケティングの世界にいたせいか、実は制作よりも宣伝・販売の方が楽しいんですよ。ふつうハンドメイド作家さんって、「作る方が楽しい」という方が多いと思うんですが(笑)。

『どんな模様や形が買ってもらえるだろうか?』とか『どんな風に宣伝したらいいだろうか?』とかを考えたり実践したりしている方が、制作時間よりもかなり長いと思います。

そうそう、私はハンドメイド作家って、3タイプに分かれると考えているんですよ。

1. 職人…自分の作品を見て欲しい・自分の作りたいものが作りたい人
2. 商人…どうやったら作品が売れるかを考えたい人
3. 自己満足…自分自身を売りたい・有名になりたい人

みんなこの3つの気質をそれぞれ20%とか30%とか持っていて、どれかの値が高い…という方が多いと思うのですが、私は商人的な気質の割合がグンと高い気がします。

自分の作りたいものというより、人が欲しいと思うものを作っていきたいので、職人ではないし…。銀久というブランドは売りたいけど、自分自身はあまり出したくないので、自己満足でもないし…。

イベントでは自分で売るしかないので仕方ないんですけど、Webでは顔とか極力出したくないんですよ。なので最初の頃は、女性だと思われてました(笑)」

―“宣伝・売り方が分からない”という事で悩んでいるハンドメイド作家さんは沢山いらっしゃると思いますが、銀久さんはそこが強いブランドなんですね。

「そうかも知れません。時々、他のハンドメイド作家さんを見て『素晴らしい作品なんだから、もっと宣伝すればいいのに…もったいない!』と思うこともあります。余計なお世話だと思うんですけど(笑)。

作品制作もそうですが、イベント出店に当たっても“事前告知・宣伝”はとても重要です。『とりあえず出店さえすれば、誰かが自分の作品を見つけて買ってくれる』というのはなかなか難しいことなので、とにかく告知と宣伝はした方がいいと思いますよ。

イベントで時々『どうやったらそんなに売れるようになりますか?』とご質問いただくことがあるんですよね。
私はとにかく告知と宣伝をすることと、作品をたくさん作ること参加し続けることが大事だと思っています。

単純に作品が沢山あれば、自分のブースにボリュームが出てお客さんの目を引きます! 作品がちょっとだけで、あとは什器でブースを華やかにしても、ちょっと効果は薄いと思います。什器を売るわけじゃないですので…。

豪華な什器がアイキャッチになっても、その後いざ売っている物へ目が行った時、什器に負けていると購入につながらないと思うんですよね。
個人的には作品が沢山並べられるよう、作品が見やすいよう、什器はシンプルであった方がいいと思っています」

●とりあえずやってみる&誰にでも真似できることをしない

―自分が作りたいものより人が欲しいと思うものを作っていきたいということですが、お客さんからのご要望にはどの程度まで応えますか? デザインとか、金額とか。

「うちの製品は“リクエストされたらとりあえず全部作ってみる”を目標にしています。もしそれでダメでも、売るのをやめればいいだけなので。逆に、売れたらラッキーくらいの感じで。

金額はお客さんの言う通りにすることはありませんね。
高すぎると言われても、安すぎると言われても、変更することはありません。必ず、自分が決めた金額にしますよ」


―制作よりも宣伝・販売の方が楽しく感じるということですが、ではなぜ“自分で作る”ことを選ばれたのでしょうか?

「自分で製造した方が、他との差別化がしやすいからです。
仕入れた商品を販売する場合だと、差別化できるところが“接客・金額”しかないんですよね。

でも自分で作った製品を販売するのであれば、自分のところで作っているので、“売るもの”で差別化ができる。お客さんのご要望にも応えやすいです。

また、同業者に真似されにくい・真似できないものを作ることができるのも製品販売のいいところです。おそらく、少しでもシルバーをやっている方なら“銀久と同じデザインのもの”は作ろうと思えば作れると思います。

ただし、コストや時間がかかりすぎて同じ金額で売ることはできない。
逆に同じ金額のシルバーアクセサリーを販売することはできても、このデザインを再現できない。

私は最初から銀久の作品には“参入障壁”を作ろうと考えていたので、簡単に真似ができないような工夫を必死で考えました。誰にでも真似できるものを作らない、というのはすごく大切なことだと思います」

●目標は低く見積もるとそれ以上に行けない、目指すは日本一

―銀久さんの目指すところ…最終目標などはありますか?

「法人化して上場企業になりたいですね! もっと資金があれば工房に人を雇って入れたいし、職人というよりはどちらかというと経営者になりたいです。やはり商人気質なので(笑)。

製造メーカーの日本一といえば、やはりトヨタでしょう。目指すはトヨタですよ」


―トヨタ。自動車のですか!?

「そうです、トヨタ自動車です。まあ、シルバーアクセサリーでトヨタになれるとは思っていませんが(笑)。

目標を低く見積もってしまうと、それ以上に行けなくなると思っているんです。なので、目標はかなり高くに設定するようにしています!

“目標は大きく!”が大切だと思っているので、誰かに笑われたって、これが私の目標です」

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●おわりに

今回、急に思いついて銀久さんに電話取材をお願いしたのですが、快く引き受けて下さったばかりか、本当にためになる話をたくさん聞かせて下さいました!

「こういう話を聞かれる事がないので、かなり調子に乗って喋ってますけど、オフレコにして欲しい部分がたくさんあります!」
ということで、載せていない話もかなりあり、わたしだけこんなすごい話を聞いていいのかな~と思っています。

予定していた取材時間を大幅に越えてお話をしてくださり、本当にありがとうございました。とっても面白かったです!

今回の記事や作品写真で「銀久」さんに興味を持たれた方は、ぜひオンラインショップやSNS、そして一番メインのイベント出店に足を運んでみて下さいね。

【銀久-GINKYU- data】

◎Twitter

◎Facebook

◎オンラインショップ

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★銀久さんのイベント出店情報はSNSなどでご確認ください。

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インタビュアーはライターとしてだけでなく、自身もクリエイターとして活動しています。様々な分野で活動する方を応援するために、今後も取材記事を書いていきたいと考えています。

「インタビュー記事」はあなたの宣伝になります。宣伝インタビュー記事が必要な方は、お気軽にご依頼・お問い合わせくださいませ。

(インタビュー記事1本につき5000円〜、似顔絵アイキャッチなどを入れる場合は+3000円となります。まずはお見積もりをご請求ください)

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