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恋人から逃げ出した、境界性パーソナリティ障害のあなたに捧ぐ

わたしは10歳から34歳までの24年間、境界性パーソナリティ障害(境界性人格障害)という精神障害でした。
(英名:Borderline personality disorder/略称BPD、ボーダー、境界例)

現在はかつての自分と同じような症状で苦しむ当事者のために、イラストレーターやライターなどをしながら、カウンセリング業務を行っています。

当事者さんのために始めた活動のはずでしたが、「その周囲にいる方々」からのご相談が増えてきました。
当事者さんの母親、夫、恋人、元恋人など。

そのカウンセリングの中で、気づいたことがあります。
境界性パーソナリティ障害である恋人(または、その疑いがある恋人)から逃げられた人の話を聞いていると、「うーん、わたしもあなたから逃げ出したくなるなぁ…」って、相談者さんじゃなく当事者さんの気持ちに共感してしまう、ということです。

わたしは寛解したとはいえ、根は「境界性パーソナリティ障害」側の人間なので、逃げ出す理由がバリバリわかるんですよね…。
逃げられた側の方はせっかく相談してくださったのに申し訳ないことですが、しかし正直な気持ちです。

だからこの「恋人から逃げ出した、境界性パーソナリティ障害のあなたに捧ぐ」記事を書くことにしました。

「逃げられてしまった元恋人の方」は読んでも気分を害するだけだと思うので、読まないでください。

わたしはちゃんと警告をしましたからね。
なのでそれでも読んでしまった
「逃げられた側の方」は自己責任でお願いします。

気持ちを伝えたけど、聞き入れてもらえなかったから逃げ出したよね

まず「逃げられた人側」からの訴えでダントツに多いのが
「どうして態度が急変したのかわからない」
(どうして急に連絡を取らなくなったのかわからない、どうして急に別れるって言われたのかわからない、等)です。

しかしじっくりお話を聞いていると、逃げ出した当事者さんたちはめちゃくちゃサインを出しているんですよね。
この記事を読んでいるあなたも、最初のうちはちゃんと恋人に、気持ちを言葉にして伝えていたと思います。

でも、聞き入れてもらえないんですよね。
あなたは頭の悪い人じゃないので、「どうにかして相手にわかってもらえるように」必死で説明しましたよね。

それなのにわかってもらえなかった。本当に苦しかったと思います。
「話しても無駄なんだ」と思ったあなたの絶望がとてもよくわかります。

話しても無駄、と思った相手と、距離を置くのは当然です。
あなたがだんだん言葉が少なくなったり、怒っても反論せず黙ってしまったり、最終的に無視をするようになるのは、仕方のないことです。

だって、言ってもわかってもらえないのだから。
自分の心を守るために逃げ出したあなたは、間違っていません。

上から目線だと感じて嫌だったから、逃げ出したよね

あなたが病院で境界性パーソナリティ障害の診断を受けていようがいまいが、相手にとっては「普通じゃない人」「頭のおかしい人」だと思われてしまいます。

そして彼(彼女)らは無意識に、「頭のおかしい恋人に付き合ってあげている自分」を作り出します。

それは仕方のないことです。
自分のことを「普通の人」だと思っている人は、無意識でそうなります。

そういう人に限って、境界性パーソナリティ障害とは違う「異常さ」や「面倒臭さ」があるんですけどね。

そもそも「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う(byジョジョの奇妙な冒険)」と同じで、メンヘラに惹かれたりメンヘラに執着したりする人は大体メンヘラです。

あなたも、その人と接していて気づいたのではないでしょうか。
「そっちだっておかしいんじゃない?」と。

そもそも境界性パーソナリティ障害の特徴として、「プライドが高くなってしまう」「変なプライドが出てしまう」というのがあります。
なので、相手に「上から目線だな…」と感じてしまいやすいのですが、あなたが逃げ出した恋人は、本当に上から目線だったのでしょう。

それはどうしてか。
あなたが「逃げ出したくなるほど嫌だ」と思ったからです。

わたし自身にも経験があることですが、病気のせいで「こいつ…上から目線だな…」と感じた相手からは、境界性パーソナリティ障害の人は逃げたりしないのです。

いくら精神障害で正常な判断ができなくなったって、境界性パーソナリティ障害の人は基本「頭が良い人」がほとんどです。
しっかり話し合えば、「上から目線だと感じたのは、自分の思い込みだったのか」と理解できます。

それができなかったのであれば、相手は本当に「上から目線」だったのでしょう。

あなたは相手の「してやってる」感が嫌で、「そういうのはやめて欲しい」と勇気を出して言ったこともあるはずです。
でも相手はまったく自覚がないので、直してくれなかったですよね。
そりゃあ逃げ出して当然です。

そういうタイプの人は、そもそも「してあげる」ことが「平等・優しさ」だと思うタイプの人なので、絶対に話が通じません。

あなたは「してあげる」こそが「差別」だ、と考えるタイプの人ではないでしょうか?
本当の「平等」って、そういうことじゃないよね、と。

ちなみにわたし自身はそういう価値観の人です。
「してやってる」「してあげてる」は平等でも優しさでもなんでもない。
差別です。

しかしそういう価値観だと、日本ではなかなか生きづらいですよねえ。
多くの人が、「してやってる」「してあげてる」が差別だなんて気づかずに、“優しさ”だと思って自然とやってしまっていますから。

自分は悪くないと思ってるのが伝わってきたから、逃げ出したよね

逃げられた恋人側のお話を聞いていると、「自分は悪くない」「異常なのはあっち」というオーラが、カウンセラーのわたしにもムンムン伝わってきます。元BPDのわたしとしては、聞いていて非常につらいものがあります。

きっとあなたも、ずっとその「お前が悪いオーラ」を浴び続けていたのでしょうね。どのくらい耐えていましたか? 数ヶ月? 1年? もっと?

境界性パーソナリティ障害の人って自尊心が異常に低いので、
「この人を逃したら、もう自分を愛してくれる人はいない」と思ってしまうじゃないですか。

あなたには魅力や才能がいっぱいあるはずなのに。
病気のせいで、自分をないがしろにする人ばっかり好きになって、付き合ってしまうんですよね。
あなたのそのサイクルを切るお手伝いができたらいいのになあと思います。

「この人以外いない」と思って、「お前が悪い」オーラをずっとガマンして浴び続けていましたよね。
「私が悪かったです」「ごめんなさい」と沢山泣きながら謝った人も、いるんじゃないでしょうか。

「本当に自分が悪いのかもしれない」
「だって相手の言う通り、自分には異常なところがあるし」

もちろん、病気の症状として「異常なところ」はあります、残念ながら。
でもね、その相手のせいで「異常なところ」が増えているってこともあるんですよ。

何か問題が起きた時、「自分だけが悪い」なんてことは絶対にありません。

わたしは前々から考えているんですけど、世界って本当に五分五分になっていて、「どちらかがより悪い」なんてことは基本的にありません。
5:5であなたも悪いし相手も悪いはずなんです。

だからどうか、自分だけを責めないでください。
あなたも悪かったし、相手も同じくらい悪かったのです。

その人と一緒にいるとおかしくなっていく自分がわかるから、逃げ出したよね

ひとつ前にも書きましたが、「その相手のせいで『異常なところ』が増えている」ことはあります。

ときどき「逃げられた側」に“自己愛性パーソナリティ障害”の傾向が見える時もありますしね。わたしは精神科医ではないので病気の診断はできませんが、障害の特徴は学んでいるので、「うーむ、それっぽい」と思うことはあります。

本人はもちろん無自覚です。
(自己愛性パーソナリティ障害は自覚が起きにくい精神障害ですしね)

わたしは以前から「境界性パーソナリティ障害の人は、自己愛性パーソナリティ障害の(傾向がある)人と相性が悪いのに、なぜか惹かれてしまう」と考えておりまして。

自己愛性パーソナリティ障害の人と一緒にいると、境界性パーソナリティ障害の人は確実に症状が悪化します。
精神障害の診断が出るほどひどくないけど、自己愛性パーソナリティ障害のグレーゾーンに足を踏み入れている人も、いっぱいいますしねえ。

まあ、相手もパーソナリティ障害だったかはさておき(そんなことは、もう相手と離れたあなたには関係のないことです)、あなたは「症状がひどくなっていく自分」に気づいたはずです。意識的にでも、無意識的にでも。

だから逃げ出したんです。その判断は間違っていません、大丈夫です。

でもこのままでは、また似たような人を好きになって付き合ってしまう可能性が高いです。「恋愛をするとおかしくなってしまう」と悩む境界性パーソナリティ障害の人がたくさんいますが、恋があなたをおかしくしているわけではありません。

「自分の症状をひどくする人」を無意識に選んでいるから、あなたはおかしくなってしまうのです。

わたしも長い間、ずっとそうでした。
恋愛をするたびに、仕事が手につかなくなったり、プライベートがボロボロになったり、お金に困ったり、死にたくなったり、本当に苦しかったです。
ずっとジェットコースターみたいな人生でした。

でも今は、パートナーと一緒に住み、比較的穏やかに過ごせています。
(時々ウワーンとなることもあるけれど、最盛期の頃に比べたらめちゃくちゃすぐおさまります…)

だからあなたもきっと、そうなれるはずなんです。
自分が作っている、自分で選んでいる、無意識のサイクルに気づけたら。

この記事に出会ったあなたですから、本当は「もう変われる」力があるはずですよ。
変われる力がない人は、この記事にたどり着けません。絶対に。

わたしは、当事者の人ともっと話がしたい

自分を頼ってくれた人はできる限り手助けがしたいので、当事者の周囲の方がカウンセリング申し込みをするのをやめて欲しいわけではありません。
(※2020年3月現在、当事者さん本人と連絡が取れなくなった方のご相談はお断りする方向になりましたが。カウンセリングしてもお役に立てないので)

ただ正直言うと、わたしはもっと、当事者本人さんとお話がしたいです。

周囲の人がどんなにがんばっても、本人さんが「治したい」「もうこの人生を変えたい」と思わないと、絶対に治らないし変われないので。

あとそもそもわたしは「かつてのわたしと似ている人たち」の手助けがしたくて、カウンセラーの道を選んだのです。
最初の動機を大事にしたいし、それをどんどん叶えていきたい。

この記事の下書きを書き始めてから、わたしのテレパシーが通じたのか(笑)今は少しずつ当事者本人さんからメッセージを頂くことが増えてきました。

でもまだまだ、「どうしたら本人さんに届くだろう」「どうしたら相談したいと思ってもらえるだろう」と必死で考え中です。

ただ、わたし自身もそうだったけど、境界性パーソナリティ障害で悩んでる最中の人ってだいたいにお金がないんですよね…。
(まともに働けなくなっちゃうから…)

とはいえわたしにも生活があるので、無料で何でもかんでも聞くことはできません。
「自己犠牲」をやり過ぎることも境界性パーソナリティ障害の症状のひとつなので、わたしはもうぶり返さないために、「自己犠牲はしない」と決めたのです。

自己犠牲せず、でもできるだけ当事者本人さんの助けになるように、色々と取り組んでいます。
もし興味がわきましたら、ブログやサイトなども見てやってくださいね。

最後に宣伝でした! それではごきげんよう、さようなら。

境界性パーソナリティ障害に関するお役立ち記事はこちら

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こころの悩み系・境界性パーソナリティ障害に関する記事も多数書いています。

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