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素敵なカムバック Camera Obscura

キーボーディストCarey Landerの早すぎる死により長らく活動休止状態が続いていたスコットランドのインディーポップ・バンドCamera Obscuraが、11年ぶりの新作『Look to the East, Look to the West』を携えて帰ってきました。通算6作目のアルバムでMerge Recordsから。プロデューサーは3、4作目も担当したJari Haapalainen。

進化の途上で余儀なくされた長すぎる活動休止だったので、もう才能は枯渇してしまったのではないだろうか、いまの時代でも聴くに堪えうる音楽なのだろうかなど、期待よりも不安の方が大きかったのですが、そんなことは最初の3曲を聴いた時点で全くの杞憂に終わりました。

前2作で顕著だったストリングスやブラスのアレンジは影を潜め、代わってピアノ、シンセサイザー、ハモンドオルガン、ドラムマシーンがより強調されています。それが逆にこのバンドの持つ本来の魅力を浮き彫りにするという効果を生んだと思います。そしてTracyanne Campbellのヴォーカルは抑制が効きながらもこれまで以上に冴えわたっています。愛、喪失、そして心を探求しているかのよう。ソングライティング面も洗練され格段の進歩を遂げました。その彼女、今月18日には50歳になるようです。

少し懐かしい感じのするドリーミーな曲「Liberty Print」、カントリータッチの穏やかなポップソング「We're Going to Make It in a Man's World」、リードシングルでペダルスティールが効いたカントリーロック調の「Big Love」、スペイシーなギターサウンドとピアノが絡む「Only a Dream」、ヴォーカルに説得力のあるピアノバラード「Sleepwalking」、新境地ともいえるエレクトロポップ「Baby Huey (Hard Times)」、メロディセンスの良さが光る「Denon」、逝去したCareyに捧げたという「Sugar Almond」など珠玉の全11曲。個々の曲が細部まで練られている(名手Jari Haapalainenの手腕)ので、一度通して聴いてもまたリピートすること必至です。

男性メンバーに変わりはなく、ツアーで参加していたDonna Maciociaが正式に加入しています。
・Tracyanne Campbell(ヴォーカル&ギター)
・Gavin Dunbar(ベース)
・Kenny McKeeve(ギター&ヴォーカル)
・Lee Thomson(ドラム&パーカッション)
・Donna Maciocia(キーボード&ヴォーカル)

『Look to the East, Look to the West』

ジャケットに写っている女性はFiona Morrisonという人で、2001年のデビューアルバム『Biggest Bluest Hi-Fi』と同じ人なのだそうです。バンドの原点に戻るという意味が込められているようです。

追記)
今回の『Look to the East, Look to the West』、チャートとは無関係なのかと思い込んでましたが、5月10日付の全英アルバムチャートに36位初登場していました。これだけのブランクがあったのにファンは忘れていなかったということです。
前作『Desire Lines』(2013)が最高位39位なので、早くもそれを上回ったことになります。前々作『My Maudlin Career』(2009)は32位とバンド史上最高位、次週以降それを上回るのか注目されます。
個人的には今回の新作が最も完成度の高い作品だと思いながらリピ聴きしています。

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