パレスチナ人ヒップホップグループ「DAM」ーパレスチナヒップホップの先駆者
こんにちは。駐日パレスチナ代表部です。
突然ですが、皆さんはアラブ圏の音楽と聞いて何を想像しますか?
多くの方は写真のような伝統楽器、もしくはそれらを用いた音楽などをイメージされるのではないでしょうか。
確かにアラブ圏では、現在でも伝統楽器を用いた音楽が盛んですし、楽器屋さんに行けばウードやナーイ、ダラブッカなどの伝統楽器がずらりと並んでいます。
しかしこの記事で取り上げるのは、それらのアラブ音楽と呼ばれている伝統音楽ではありません。今回は伝統的なアラブ音楽とは対照的とも言える「ヒップホップ」、特にパレスチナのヒップホップのパイオニア的存在であるパレスチナ人ヒップホップグループ「DAM」について紹介したいと思います。
ヒップホップがパレスチナにおいて浸透し始めたのは1990年代末期頃のことで、テルアビブなどのクラブで若者を中心にヒップホップが人気を集めるようになっていました。そしてそんなクラブシーンで活動していた若者3人によるヒップホップグループが、のちにパレスチナのヒップホップ界を牽引する存在となる「DAM」でした。
DAMは1999年にターメル・ナファールを中心に、その弟スヘイル・ナファール、そしてマフムード・ジュリーリーによって結成されました。アメリカのヒップホップのレジェンド、Tupacに共感し、影響を受けた彼らは、自らの幼少期の貧困を糧に音楽活動を始めます。
ちなみにDAMというグループ名は、アラビア語の「دام(永続する、持続する)」という単語に由来するそうです。
最初期はテルアビブのクラブで、英語やヘブライ語によるパフォーマンスを行なっていた彼らですが、2000年頃には同時期に活動していたアルジェリアのヒップホップグループMBSに影響を受けて、アラビア語でのラップに挑戦していきます。
ターメルのアラビア語によるソロ曲「من التاء للألف(from T to A)」がアラブ圏の音楽チャートで一位を獲得すると、DAMの名は急速に広まり、同時にパレスチナのヒップホップ界も興隆していきます。 その後2001年には「مين ارهابي؟(Who is terrorist?)」によってさらなるヒットを記録し、彼らはアラブの代表的なヒップホップグループとしての地位を確立していきます。
アラブ音楽とヒップホップミュージックを融合させたDAMのヒップホップは、唯一無二の音楽として国内外で高く評価されており、DAMとターメル・ナファールがパレスチナのヒップホップグループに与えた影響は計り知れません。彼らの音楽性・楽曲におけるテーマは、後発のパレスチナ人ヒップホップアーティストのスタンダードとなっています。
DAMは現在に至るまでヒット曲を生み出し続けており、2015年には女性シンガーのマイサ・ダウを新たにメンバーに加えてシングル曲「Who you are」をリリースしました。
(MV冒頭で流れているのは上記で紹介した彼らのヒット曲「مين ارهابي؟(Who is terrorist?)」のリミックスです。)
彼らの最新アルバムは2019年にリリースされた「BEN HAANA WA MAANA」ですが、その中のシングルカット曲である「EMTA NJWZAK YAMMA(ايمتى نجوزك يما)」は親や社会からの結婚に対するプレッシャーを皮肉をこめて歌った楽曲であり、国や地域を超えて共感を集めています。同曲のMVの再生回数は、YouTubeで400万回を記録しています。
一度聞くと癖になるメロディですよね。
まだまだ紹介させていただきたい曲は尽きないのですが、今回の記事はここまでとさせていただきます。
現在パレスチナにはヒップホップカルチャーがますます浸透しており、DAMのみならずたくさんのヒップホップアーティストが活動しています。本記事では紹介することはできませんでしたが、YouTube等でもお聴きいただけると思いますので、興味を持たれた方は是非一度聴いてみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございました!
DAM公式サイト
DAM YouTubeアカウント
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