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パレスチナ人映画監督・名匠エリア・スレイマンを観る

こんにちは。駐日パレスチナ総代表部です。

昨日、首都圏を含む一部地域では、緊急事態宣言の延長が発表されました。4回目の緊急事態宣言の最中ということですが、一年半以上続くコロナ禍の中で、お家で映画を観る機会が増えた方も多いのではないでしょうか。定額サービスが普及し、自宅で簡単に世界中の作品を見れるようになったのは嬉しいことですね。

ということで、今回は映画をテーマにして、パレスチナの誇る奇才エリア・スレイマン監督と彼の作品について、少しご紹介したいと思います。

スレイマン監督は1960年ナザレ生まれ。1981年にニューヨークへと移住し『論争の終わりのための序章(Introduction to the End of an Argument)』と『殺人というオマージュ(Homage by Assassination)』の短編2作品を共作して、数々の賞を受賞しました。
その後エルサレムに移り、パレスチナのビルゼイト大学に映画メディア学部を設立し、同大学で教鞭をとりながらも、映画監督としての活動をますます活発化させていきます。1996年には、社会風刺を交えながら日常生活を描いた『消えゆくものたちの年代記(Chronicle of a Disappearance)』でヴェネチア映画祭で最優秀新人監督賞を受賞し、続く『Divine Intervention』(2002年)もカンヌ国際映画祭で審査員賞・国際映画批評家連盟賞を受賞し、彼の代表作となっています。社会の問題に鋭く切り込みつつ、ユニークな映像で観る人を笑わせる彼の作品は、時に「現代のチャップリン」と表されるほど、世界中で高く評価され、愛されているのです。ちなみに、いずれの作品でもスレイマン氏は監督・脚本として作品を作るのみならず、俳優として自らの脚本の主演を務めています。

そんなスレイマン監督の最新作は2019年に公開された『天国にちがいない(It Must be Heaven)』。カンヌ国際映画祭では特別賞と国際映画批評家連盟賞をダブル受賞しました。

これまでの作品と同様、本作品でもスレイマン監督自ら主演(本人役)を務めています。
あらすじは以下の通り。

監督であるエリア・スレイマン(以下ES)は、新作映画の企画を売り込むため、そして新たなる故郷を探すため、ナザレからパリ、ニューヨークへと旅をする。
パリでは美しい景観に見惚れる一方、街を走る戦車、炊き出しに並ぶ大勢の人、救護されるホームレスを、ニューヨークでは映画学校の講演会で対談相手の教師から「あなたは真の流浪人ですか?」と唐突に質問をされ呆気に取られながら、街で銃を持つ市民、上空を旋回するヘリコプター、セントラルパークで警官に追われ逃げ回る裸の天使を目の当たりにする。さらに、肝心の映画企画は友人ガエル・ガルシア・ベルナルの協力を得るも「パレスチナ色が弱い」とプロデューサーからあっけなく断られてしまう。
パリからニューヨーク、いかに遠くへ行こうとも、平和と秩序があるとされる街にいようとも、何かがいつも彼に故郷を思い起こさせる。新たなる故郷での新生活への期待は間違いの喜劇となる。
アイデンティティ、国籍、所属に巡るコミカルな叙事詩(サーガ)。
まるで、どこに行っても同じ――。この世界はパレスチナの縮図なのか?
そこでESはある根本的な疑問を投げかける。「我々の“故郷”と呼べる場所とはいったい何なのか―?」(公式サイトhttps://tengoku-chigainai.comより引用)

一見してわかるような濃密なストーリーがあるわけではありませんが、決して退屈させるようなことはなく、美しくユーモラスでシュールな映像は観る人をスレイマン監督の世界へと引き込んでいきます。コミカルでありながら時折普遍的な社会風刺を挟む本作品は、まさに現代の喜劇と言えるのではないでしょうか。

是非スレイマン監督の作品を「おうち時間」のお供に…と言いたいところですが、残念ながら2021年9月現在では、定額サービス等での配信はなされていないようです。『天国にちがいない』については、Amazon PrimeやU-Nextなど一部配信サービスにてレンタルが可能(有料)なようですので、興味を持たれた方は是非そちらでご覧ください!

ご拝読ありがとうございました。


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