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その⑤日本映画と外国語映画 アンケートの結果発表!聞こえない、聞こえにくい人の「字幕」について聞いてみた。

このページをみていただき、ありがとうございます。
このアンケートは、字幕制作会社である私たちが、もっとたくさんの芸術作品を自由に字幕で楽しみたい方の本音を集めたいと思って企画したアンケートです。その①から④では、日本映画の字幕の状況について紹介しました。今回はいよいよ字幕の内容について考えていきます。

対象者:耳が聞こえない・聞こえにくいひと、字幕が必要なひと
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/3/19~2021/4/1(有効回答者数:141)
(その④以降(アンケート2)の有効回答者数:84)


さて、映画の字幕といえば、多くの方が思い浮かべるのは「外国語映画の字幕」ではないでしょうか。外国語映画は字幕がついているので、聞こえない・聞こえづらい人もいつでも楽しめる、、、のでしょうか?
アンケートの後半にこんな質問を入れてみました。

日本映画と外国語映画、映画館で鑑賞する機会が多いのはどちらですか?

日本映画と外国語映画、映画館で鑑賞する機会が多いのはどちらですか?の表

日本映画…28.9%
外国語映画…44.6%
同じくらい…24.1%

日本映画に字幕が増えたのもここ最近ということで、想像どおり、外国語映画のほうが多いようです。では、その字幕の内容に違いはあるのでしょうか。

外国語映画の字幕の内容について、これまで感じたことがあれば教えてください。

驚くべきことに「バリアフリー字幕がほしい」という意見がほとんどでした。

バリアフリー字幕に慣れてくると、話者名や効果音、感情や様子をもう少し知りたいとおもうようになった」(40代、ろう)
「英語を日本語に変えた字幕にだけなので、効果音や状況を表す音がわからない」(50代、中途失聴)
「バリアフリー字幕に慣れすぎて、洋画の台詞だけの字幕だと物足りなさを感じるのは事実。話者も分からず、観ている映像に音があるのか、ないのか不明なまま観る感じ。アクション等はなんとなく想像するが、抽象的な映画は想像するのが難しいことがある」(40代、中途失聴)

バリアフリー字幕が欲しいものの、「洋画は基本、字幕があるので邦画より洋画を見ることが多い」というのが現状です。

バリアフリー字幕と外国語映画の字幕は何が違うのでしょうか?
字幕の違いをまとめてみました。

話者の表記

バリアフリー字幕は声色を区別する目的で、話す人の名前(話者)を追加しますが、外国語映画の字幕には話者がありません。
そのため、口の動きが分からないシーンや、たくさんの登場人物が話す場面では、だれの話している台詞かを見失い、物語の展開に追いつかず取り残されることがあります。

「話者が分かりづらい」(40代、難聴)(30代、ろう)
誰が話しているのかわからない」(30代、ろう)
「外国映画は日本字幕が付くことが多いため、助かるがたまに誰の会話だったのか分からない時がある」(40代、難聴)
「外国語映画に限ったことではないが、誰が喋ったセリフなのか、分からないことがある」(50代、難聴)

効果音の表記

これもバリアフリー字幕だけの特徴です。
登場人物の行動のきっかけになる音(電話の音やドアの音、アラーム)などを聞き落とすことで、物語の流れがつかめなくなることがあります。

「ドアや電話など効果音の字幕が欲しい」(30代、ろう)
「効果音というか、健常者なら普通に聴こえる音(電話が鳴っている、ドアが閉まった、悲鳴が聞こえた、会話は聞き取れないが誰かが近くで話している、音楽がかかっている(曲名や、どういう音楽なのかや、エンディングで流れているのであれば歌詞も見たい)などの説明を可能な限り知りたい」(40代、中途失聴)
「ドアの開閉音、登場人物の足音など、音を起因とするストーリー展開がわかりづらい」(30代、ろう)

音楽・歌詞の表記

BGM等の音楽は外国語映画の場合は字幕になりません。そのため雰囲気の演出が正確につかみきれない場合があります。

「話者がわかりづらい、歌の歌詞も字幕にして欲しい」(30代、APD(聴覚情報処理障害))
「音楽というテロップの時に楽しそうな、悲しそうな、怖そうな、など、説明が欲しい」(50代、中途失聴)

内容の要約

翻訳版の字幕は、音声ではなく言語の意味を示すことが目的となり、文字数もなるべく減らすため、とても簡潔で、音を聞けばわかるような相づちや、簡単な挨拶などは要約されてしまいます。一方、バリアフリー字幕は話している内容をほぼ全文表記します。邦画の場合には、方言や声のニュアンス、声の大小などもできる限り表現します。

「(外国語映画は)せりふを端折り過ぎ、要約し過ぎと感じることがある」(40代、中途失聴)
「日本語訳なので、回りくどい字幕の時もあるので、結構わかりづらい…」(20代、難聴)
「ブラックジョーク的な言い回しでしょうか、字幕そのものよりは文脈がよくわからないことがあったりします。」(30代、難聴)

日本語に字幕がない

外国語映画に日本人の俳優が出てきた場合、翻訳を目的とした字幕だと、日本人の台詞は字幕になりません。すると、聞こえない・聞こえづらい方は日本人の台詞の内容だけが分からない状況になります。英語の歌には歌詞が付くのに、日本語の主題歌に歌詞の字幕がつかないこともあります。

「日本語に、日本語字幕が無い」(50代、聞きづらい)
「日本語が出てきたときに、字幕表示されない」(40代、中途失聴)
「翻訳対象が日本語になっているからなのか、日本語で会話なされているシーンでは字幕が空白になっているパターンが非常に多く、せっかく映画を楽しんでいるところを落胆させられる思いをしている。制作会社側には、字幕を求めている人にはどういう人がいるのかもう少し視野を広げて考えてほしい」(30代、ろう)


これまで、必ず字幕が付く外国語映画は、字幕のない日本映画と違って、聞こえない・聞こえづらい方も楽しめるとされてきました。でも難聴の友人は、何回も巻き戻して見てようやく話の流れが分かると言っていました。
映画の音が与える情報は、声色・人や場所の雰囲気・状況・感情など、多岐にわたっています。それらを補完するのがバリアフリー字幕なんです。

ですから私たちは声を大にして言っています。
外国語映画もバリアフリー字幕が必要なんです!


今週末、ジョニー・デップ主演で話題の映画『MINAMATA―ミナマタ―』は日本を舞台にした作品で日本語の場面も多いため、公開時からバリアフリー字幕が制作され、アプリUDCastに対応しています。10月1日からは全国50館でバリアフリー字幕版上映を予定しています。ぜひチェックしてみてください。

全国順次上映中のドキュメンタリー映画『緑の牢獄』でも、いつでもバリアフリー字幕版が楽しめるようにUDCastに対応しています。こちらは、対応映画館ではスマホやタブレットからもバリアフリー字幕を楽しむことができます。くわしくは作品の劇場情報をご覧ください。


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