見出し画像

NFTの純度について ―フルオンチェーンとパブリックチェーンどちらが良いか?―

今回は、NFTの”純度”について説明します。
ひとくちにNFTと言っても、実は色々な種類があるのです。

NFTの純度

※図1(作:@yusukeito0909

実はNFTには、ビールで例えると、「ビール」「発泡酒」「第三のビール」のような種類の違いが存在します。
私は、図のようにすべてをひっくるめて”広義のNFT”と捉えていますが、純度は中心にいくほど濃くなり、ブロックチェーン思想が色濃く反映されていると考えます。

NFTの純度を測るときには、上の図のように、次の2つの要素にざっくり分解すると理解しやすくなります。

  1. チェーンの種類

  2. メタ情報・画像・動画の置き場所

さらに、もっと細かく言えば、

  1. 外部スクリプトの利用

なども含まれるかもしれません。

ブロックチェーン思想から考えるNFTは、「永続性」や「確からしさ」を重視します。

分散型サーバー IPFS で永続性を高める

どこか1社(や少数の会社)が運用するチェーンやサーバーにNFTの構成要素を置いた場合、どのような不都合が起こり得るでしょうか?
将来その会社が倒産してしまうと、チェーンやサーバー自体がストップしてしまうため、「永続性」の観点からは不安要素です。
そこで、より「永続性」を高める手段として、IPFSをはじめとする分散型サーバーが選択されるのです。

IPFSとは?
IPFS(InterPlanetary File System)
Protocol Labsにより開発が進めれられているP2Pネットワーク上で動作するハイパーメディアプロトコルとその実装。
耐障害性、負荷分散、耐検閲性、耐改ざん性が高いことが特徴。
現在のインターネットで主要なプロトコルであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を補完または置換するプロトコルとして位置付けられ、コンテンツ指向型1のプロトコルであるところに大きな特徴があります。

>参考記事IPFS入門

ただし、IPFSだからといって絶対確実に安心というわけではありません。
分散型サーバーというコンセプトには従ってはいるものの、必ず未来永劫に存在するサーバーというわけではないことには注意が必要です。
より「永続性」が高まるであろうという、ひとつのベターな選択をしているに過ぎません。

プライベートチェーンについて

また、誰もが自由に参加できるわけではない「プライベートチェーン」や「コンソーシアムチェーン」は、参加者に制限の無い完全オープンなパブリックチェーンと比較すると、NFTの純度は低くなるでしょう。
世界中のすべての人々が「確からしさ」を確認することができないからです。

コンソーシアムチェーンとは?
パブリックチェーンとプライベートチェーンの中間の概念。
プライベートチェーンの一種で、あらかじめ選出された信頼性の高い複数の管理主体のみで取引情報の合意形成を行う。
すべての参加者が合意形成に加わる場合に比べて計算量が少なくなるため、取引の高速化が図れる利点がある。

パブリックチェーンについて

一方、オープンで誰でも参加できるパブリックチェーンは、より民主的な運用ができ、それが「確からしさ」を高めます。
とはいえ、パブリックチェーンにはデメリットもあって、端的に言うとスピードが犠牲になります。
世界中さまざまな価値観がぶつかりあうことになるため、歩みが遅くなりがちなのです。
このスピードダウンが、ビジネスサイドから見ると、もどかしさを感じている企業も多いのです。

全てをブロックチェーンに刻むことは不可能

NFTを構成する要素は、

  1. メタ情報を管理するJSONファイル

  2. 画像・動画などのデータ

この2つです。
こられを、イーサリアムのようなパブリックブロックチェーン(非中央集権型)に”すべて”刻むことができれば、どうでしょうか?
データを改ざんできない特性により「永続性」と「確からしさ」が担保され、「普遍&不変の物理法則」を働かせることができます。
これを、フルオンチェーンといいます。

ところが、
まだ発展途上のイーサリアムでは、一度に刻むことができるデータ量は最大48KB程度と、とてつもなく小さなサイズなのです。
よって、画像・動画などをオンチェーンにするのは現状では難しい。

では、現状どうしているのでしょうか?
実は、画像・動画の本体は”外部のサーバー”に置き、「参照先URL」の文字列をブロックチェーン化する、という方法を採っています。
これが現実解となっています。

OpenSeaでのNFT作品をイメージして下さい。
今説明した通り、NFTの画像や動画は、実はブロックチェーンには刻まれていません。
OpenSeaなどのプラットフォーム側で、「参照先URL」の文字列を読み込んで、画像・動画ファイルとして人の目で見て”作品”と分かるように表示しているのです。
実は、裏ではそういう一手間を加えているのです。
NFTそのものには、画像や動画データが存在していないのです。
何となく、イメージを掴んで頂けたでしょうか。

フルオンチェーンのデメリット

画像・動画を「どのサーバーに置いておくか?」により、NFTの純度が変わってきます。
仮に、参照先URLに指定したサーバーが何らかの事情で停止してしまうと、どうなるでしょうか。
NFTの重要な構成要素である画像・動画が人の目で見られなくなるため、「永続性」や「確からしさ」を失うことになります。
そこに残るのは「参照先URL文字列」だけになります。

・なんだか味気ない。
・イメージしていたNFTと違う。

そう思うかも知れませんが、では全てブロックチェーンに刻むフルオンチェーンにするべきかというと、事はそう単純ではないのです。

「永続性」を重視すると、どこか1社が運営するサーバーではなく、IPFSに代表される「分散型」が好まれます。
ただし、IPFSに画像や動画データを置いた場合、そのファイルを削除することが不可能になります。
そのため、権利がたくさん付いているような画像や動画は、法的観点など含め考慮することが増えます。

「メタ情報」を管理するファイルの置き場所についても、同様です。
例えば、中央集権型サーバーにメタ情報を置いておけば、万が一、作品タイトルや紹介文や利用規約にミスがあった場合でも、あとから書き換えが可能です。
逆に「永続性」を高めようとして、分散型サーバーにデータを置いてガチッとロックすると、その書き換えは不可能になるのです。

NFTの理想型を模索する旅は続く

それでも、「永続性」や「確からしさ」を追求することがブロックチェーン的ということで、NFTの代名詞「CryptoPunks」はフルオンチェーン化を果たしました。
イーサリアム上のNFTを出力するプログラムでドット絵を表現する手法で、絵のすべての構成要素(=DNA的)をブロックチェーン化したのです。
誰の手によっても、データを改変することはできません。

イーサリアムでフルオンチェーンNFTを実現するのは、理想的なNFTの形ではあります。
しかしそれは富豪的であり、制約の多さやGAS代を考慮すると、必ずしも全ての点で理想的とはいえないかもしれません。
ですから、フルオンチェーンのNFTは、今後も一部のNFT作品にのみ使われていくだろうことが予想されます。
NFTの作り方は色々な組み合わせがあり、それはNFTごとのコンセプトによって最適解が違うでしょう。

NFTは、黎明期ということもあり、全条件を満たす「唯一の正解」はない状況です。
各種折り合いをつけながら、あらゆるアプローチで社会実装を目指していくということで、個人から企業まで”山の登り方”を模索している段階だと思います。
だからこそ、こんなにもエキサイティングな人たちが集まっているのでしょう。

追伸

冒頭の「NFT純度の図は」@yusukeito0909 さんにブラッシュアップしていただきました。
大変うれしいです!!
以下にフリー素材として置いておきましたので、みなさまでご自由にご活用ください。 https://docs.google.com/presentation/d/18T9xfQ8FVvxvMmj2niWYKcs89IsOBogSmJgLOvc5pOo/edit#slide=id.p1)


※この記事は、パジの発信をもとにかねりんが編集して記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)

ここから先は

0字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?