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“共感の土台”づくりから始めるサービスデザイン

株式会社COMPASS デザイナーのパジェロです。
今回は、社内CMSの開発チームに配属されたときに最初に取り組んだことについて書いてみます。

弊社は、提供サービスである「Qubena」に搭載する教材コンテンツも自社開発しています。「コンテンツ制作チーム」が開発した「問題」や「解説」を管理しシステムと適切に連携させるために社内向けのCMSがあり、専用の開発チームが組織されているのですが、僕はそこに「情報設計」担当として配属されました。
期待されていたのはUXデザイナーとしてCMSの画面の情報設計や機能の仕様検討をすることでしたが、配属されて真っ先にやったのはそれらよりももうちょっと前の段階の、ユーザーであるコンテンツ制作チームと開発チームの間に“共感の土台”をつくることでした。

配属された時点の状況

  • 僕がチームに配属された時点ですでにCMSは運用中で、1年くらいバリバリ現場で使われていた。

  • リリースした時点で、社内ではとてもイノベーティブなものとして受け入れられていて、コンテンツ制作チーム(=ユーザー。以下「ユーザー」と呼びます)のニーズは一定満たしていた。

    • その前はスプレッドシートやスクリプトでやりくりしていたので、GUIで直感的に作業できるCMSの登場は革新的だった。

  • 要望リストがどっさりバックログに積まれてる状態だった。

    • どんな課題を解決したいのか不明瞭な要望も混じっていた。←★

    • 各要望の優先度がちょっとぼんやりした状態だった。←★

考えたこと

↑で★を付けたあたりに課題があるように感じました。この状況で、求められるままに各要望に対して仕様を詰めていったとして、本当にユーザーのニーズが満たされるのかちょっと疑問だなと思いました。そこで、ユーザーと開発チームの間で課題感を共有できる環境づくりから始めてみることにしました。

取り組んだこと

「ニーズの解像度を高める会」と題して、ユーザーと開発チーム合同でワークショップを開催しました。

ニーズの解像度を高める会

目的

ユーザーが抱えている潜在的なニーズをあぶり出す

参加者

「ユーザー」と「開発者」

  • 「ユーザー自身」に抱えている想いを掘り下げてもらって本質的なニーズに辿り着くのが一番の目的でした。

  • 「開発者」はユーザーのニーズをもっと知りたいのでみんなで参加。代表者とかじゃなくてほとんど全員で参加しました。

内容

以下の「3つの質問」に対する回答をユーザーに考えてもらい、参加者全員に共有して議論、という流れを繰り返しました。

回答は6つのカテゴリ(意思決定・言語・視野/関心・感情・記憶・空間認識)に分類しながら考えてもらうようにしました。

<3つの質問>

  • Q1. 「教材制作」という業務環境において、あなたが今困っていること、欲しいものや、こうなったら魅力的だと思うことは何ですか?

  • Q2. あなたの業務を改善し、長期的に大きな価値をもたらすものは何ですか?Q1で挙げたものから引用、または掘り下げてみてください。

  • Q3. 教材制作業務におけるあなたの一番の目標や願いは何ですか?Q2で挙げたものから掘り下げてみてください。

<タイムテーブル>

  • Q1を考える - 1回目(3分)

  • 考えたQ1の回答を共有し合う - 1回目(5分)

  • Q1を考える - 2回目(3分)

  • 考えたQ1の回答を共有し合う - 2回目(5分)

  • Q2を考える(5分)

  • Q2共有・議論(7分)

  • Q3議論(7分)

ワークショップの様子

COMPASSは基本的にフルリモートなので、ワークショップはMeetとMiroを使って行いました。

わかったこと、得られた成果

  • ユーザー自身も気づいていなかった「一番の目標や願い」を言語化することができた(気がする)。

  • Q1-3まで繰り返し登場する困りごと(=潜在的に重要な課題)の存在に気づけた。

  • 表層的な質問から深いところへ、ユーザーと開発者であーだこーだ言いながら潜っていく過程が面白かった。

  • 一連の過程を経て「ユーザー」と「開発者」の間に、非言語的な面を含めた“共感の土台”を醸成することができた(ような気がする)。

特に最後の項目がとても意義深かったと感じています。言語化されないニュアンスの部分で、ユーザーが普段感じていることに対して共感する準備ができた、というかなんというか。あくまで「気がする」程度ではありますけど。
あとは社内向けプロダクトということでユーザーが社内の仲間でとても協力的だったり文脈を共有できていたことが今回のワークショップ開催の難易度をとても下げてくれました。

まとめ

僕自身はデザイナーですが、今回はいつもの業務範囲よりもうちょっと上流のプロダクトマネジメントっぽいアプローチに挑戦してみました。

「ニーズの解像度を高める会」で記事タイトルの通り“共感の土台”は作れたのですが、この時点ではまさに“土台”でありスタート地点に過ぎません。実際に具体的な課題解決のアクションにつなげるにはここからもう何ステップが必要でした。そのあたりのことについても別の機会に詳しく書いてみようと思います。

今回の取り組みには『脳のしくみとユーザー体験 認知科学者が教えるデザインの成功法則』を大いに参考にさせていただきました。


COMPASSではデザイナーに限らず色々な職種で積極的に採用活動を行っています。興味がある方はお気軽にご連絡ください。

COMPASSの公式noteもよかったらご覧ください。


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