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サービス改善の“道しるべ”をユーザーと一緒に探す

株式会社COMPASS デザイナーのパジェロです。

前回の記事では、社内CMSの開発チームに配属されたときに最初に取り組んだことについて書きました。
前回は、CMS開発メンバーと、そのCMSのユーザーである社内のコンテンツ制作チームとでワークショップを行い、CMSに対するニーズの解像度を高めて共感の土台を作ったところまでのお話でした。

今回はその土台をもとに、開発チームが課題解決に向けて実際に動き出すためにどんなステップを踏んだのか、ということについて書いてみたいと思います。

コンテンツを作ることに対する課題抽出・優先度付けワークショップ

再びユーザーに協力を仰ぎ、ユーザー × 開発者 でワークショップを開催しました。今回のワークショップのタイトルは直球で「コンテンツを作ることに対する課題抽出・優先度付けワークショップ」としました。

目的はCMSを継続的に改善していくための大きなテーマを抽出することです。ただし今回はあえて「CMS(対象のプロダクト)に限定せず “コンテンツ制作業務全般” において抱えている課題を洗い出す」というステップからスタートすることにしました。なぜなら、ユーザーを取り巻く環境全体から広く課題を洗い出し、その中からCMSで解決すること/しないことを選り分ける作業を丁寧に行うことで、CMSがユーザーにとってどこまでの役割を担うのか?を広い視野で捉えられると思ったからです。最後に、抽出された「CMSで解決する課題」の優先度を決めることをゴールとしました。

ワークショップの具体的な内容は以下です。

1. 課題の洗い出し

  1. ニーズの解像度を高める会(前回記事参照)の内容を参考しながら、“コンテンツ制作業務全般” において抱えている課題を洗い出しました。

    • CMSのことに限定せず、業務フローが可視化されたマップを眺めながら、業務全体からなるべく広く挙げてもらいました。

  2. 課題をひとつずつカードにしました。カードには「困っていること」と「困っている人」を書いてもらいました。

    • 「〇〇という機能が欲しい」「△△のようになって欲しい」という解決策を書きたくなるのですが、そこはグッと堪えて課題にフォーカス

    • 本来なら大小網羅的にいきたいところでしたが、今回は時間が限られていたのでなるべく影響範囲が広かったりクリティカルな課題を優先して挙げてもらいました。(ユーザーが社内の仲間で文脈が共有できていることを利用してズルした)

カードに「困っていること」と「困っている人」を書く
カードに「困っていること」と「困っている人」を書く

2. 課題の共有

個人ワークは5〜10分で切って何度か共有することで粒度感を揃えます。

3. 課題の分類

業務フローのマップに当てはめながら、「CMSチームで解決策を検討すること」と「CMSチーム以外で検討すること」に分類しました。

ここでは、各課題のマッピングと分類について全員でじっくり相談することが重要でした。明確に分類範囲を定義することは「課題」の状態では難しいのであまり意味がありません。それよりも、プロダクトを改善することが出発点になりがちな我々開発メンバーの意識が、ユーザーの業務全般が良くなるにはどうしたらいいか?という方向に向いたことがこのステップの大きな成果でした。

業務フローに課題カードを貼り付けながら分類
業務フローに課題カードを貼り付けながら分類

4. 優先度づけ

ここまでで「CMSチームで解決策を検討する課題」が洗い出せたので、各課題に優先度をつけました。
今回は、重要度と影響範囲の軸をそれぞれ高中低の3レベルに分け、2軸の掛け合わせで判断することにしました(優先度決定マトリクス・下図)。

優先度決定マトリクス

5. 優先度が高い課題の分析

以上の工程により、課題の分類優先度が決まり、どの課題から取り掛かるかべきかわかっている状態になりました。
これで優先度の高いものから順に解決策の検討を進めていくことができるので、今回の目的は果たしたわけですが、せっかくなので優先度が「最高」になった課題の共通点を分析してみることにしました。それが、ユーザーがCMSに求めていること、今のCMSに足りないことの中で一番重要なことだと言えるはずです。
その結果、「安全性」と「簡便性」というキーワードを抽出することができました。

わかったこと

今回のワークショップを通して得た学びは2点。

  1. 優先度付きの課題リストを手に入れた

    • 単なる要望リストとは違う、ユーザーが本質的に困っていることを一覧化することができました。

    • 優先度も決まっているので、上から順番に取り組んでいくことでユーザーの役に立つ可能性がとても高いです。

  2. 「安全性」と「簡便性」というキーワードを抽出した

    • 取り組む課題の優先度が明確になると同時に、改善のテーマになるキーワードを共通認識にできました。

    • 改善のことを考えるともちろん他にも色々な観点があるわけです。ですが、色々ある中でもこの2つの観点が一番大事なんだ、ということが、開発メンバーが理解できただけでなく、ユーザー自身もこのワークショップを通して気づくことができました。

    • これからどんどん発生してくる新しい課題に対しても、どれを優先すればいいか判断することができますし、解決策を検討するときにも何を重視すれば方向性を定めることができます。迷ったときの道しるべを手に入れた感覚です。これはとても心強いと思いました。

おわり

前回に引き続き、一連の取り組みには『脳のしくみとユーザー体験 認知科学者が教えるデザインの成功法則』を参考にさせていただきました。


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